沖縄県におけるデジタル社会の実現を図る取り組み「ResorTech Okinawa」の主要な施策であり、沖縄県最大のIT・DX商談会。2020年2月のプレ開催以降、毎年11月に開催されている。ResorTechとは「リゾート」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語で、ResorTech EXPOでは、ビジネスマッチングを通した連携・共創の創出や、沖縄県のDXを推進などが⽬的。展示商談会のほかにセミナー・シンポジウム・アワード・学生ツアーなど多様なイベントを同時開催。オンラインセミナーも実施している。
圧巻なのは、やはり会場中央にある巨大デジタルサイネージ。ResorTech EXPOのコンセプトが詰まったオープニング動画や会場横のサイネージも合わせた鮮やかなアニメーションのおかげか、会場は常に明るく彩り豊かな印象でした。11月9日の午前9時から地元のダンスチームによる華やかなオープニングアクトとともにリゾテックエキスポ2023がスタートしました。
リゾテックエキスポ2023は「観光地沖縄が起点となる国際ビジネス創出」、「全産業のDX推進と稼ぐ力の向上」、「地方創生・地域課題の解決」を展示コンセプトに掲げています。オープニングセレモニーでは、主催のResorTech EXPO in Okinawa 実行委員会の稲垣純一実行委員長が展示会にかける想いを語りました。
「第五回目となる今回のリゾテックエキスポ2023のテーマは『沖縄発、Reboot Japan!』です。産官学連携の組織を超えた連携を創造する『場』とするため、海外との関係復活・スタートアップ支援・学生ツアーの開催などを実施いたしました。このような新たな取り組みを最新のデジタル設備を備えた沖縄アリーナで行えるのは有難く思っております。沖縄の代表的なわらべ歌である『てぃんさぐぬ花』はホウセンカという意味です。ホウセンカの種は、時がくるとぱっと弾けて遠くに飛ぶ。今回の展示会も、これまで以上に多分野の皆さまのお役に立つことを願います」
玉城沖縄県知事(代読:照屋副知事)の挨拶、桑江沖縄市長、財団法人済州創造経済革新センター センター長 李氏による祝辞とテープカットなどでオープニングセレモニーは終了しました。
オープニングセレモニーに続いて、メインステージではリゾテックエキスポ2023に展示される技術・製品・サービスなどを対象に「ResorTech EXPO Award選考委員会」が学術的・技術的観点、市場性、将来性などの視点からイノベーション性が高く優れていると評価できるものを審査・選考して表彰する「ResorTech EXPO Award(以下、リゾテックエキスポアワード)」の表彰式が催されました。展示部門総合グランプリ、展示部門グランプリ、そして今回から新設された海外部門グランプリを受賞した企業を紹介します。
総合グランプリを受賞したのは、旅行・OTA(Online Travel Agent)・レンタカー事業などを手掛ける沖縄ツーリスト株式会社(略称OTS/沖縄県)です。受賞したのは同社が運用する全国初となる協働アフィリエイト広告「Digital DMO PLATFORM」です。同プラットフォームは宿泊施設・観光関連事業者が自社で提供するサービス・商品とOTSの旅行商品を組み合わせたダイナミックパッケージです。従来の旅行では、飛行機やホテル、レンタカー、アクティビティなどを別々に予約する必要がありましたが、同サービスを導入することでまとめてパッケージ化できるため、優れたユーザー体験を提供可能です。また、各々の施設やサービスの公式サイトにDigital DMO PLATFORMの検索ボックスまたはリンクURLを設置するだけで導入できます。地元の観光サービス関連事業者が主導した基盤を構築したほか、観光ビジネスの発展・ユーザーの安心につながるとして総合グランプリを授与されました。
総合グランプリを受賞させていただき、とても喜ばしい限りです。Digital DMO PLATFORMは既存のホームページやSNSなどのメディアを「収益化」できるほか、弊社の旅行商品に独自コンテンツを組み合わせることでパッケージツアーの付加価値向上も図れます。総合グランプリを受賞した勢いをお借りして、沖縄県内地域主導の観光振興として地域企業の「今までにない収益源の確立」というアプローチで貢献していきます。
沖縄型DXの「ResorTech」の具現化として受賞されたのが、テクノロジーを駆使したソーシャルビジネスを展開するサンクスラボ株式会社の「里海珊瑚プロジェクト」です。同プロジェクトでは、環境省が唱えるサンゴ保全の4大重要課題「サンゴ保全・観測」、「地域連携」、「ツーリズム」、「海洋汚染対策」にデジタル活用と障がい者の活躍による新しい仕組みの構築によってアプローチしています。特にサンゴ保全・観測については、水槽×IoTで水槽環境をデータ化したうえ、UIをシンプルかつ分かりやすくデザインすることで障がい者を含む多くの人が簡単に操作できる業務ツールを開発。サンゴの保全活動を地域の障がい者の特性を活かした場にすることで障がい者雇用の充足、推進にもつなげられるといいます。DXを活用することによる環境、福祉といった多方面の貢献が評価され、グランプリを授与されました。
この度はグランプリを受賞いただき誠に感謝しております。障がい者や病院から出られないような方が「働ける場」を設けること。早急な対応が求められるサンゴ保全により多くの人や企業が取り組める環境をつくること。そしてそれらをCSRやSDGsの観点で企業が取り組み、積極的にPRして活用してもらうこと。これらを実現するために、DXを活用して創出したのが「里海珊瑚プロジェクト」です。サンゴが日本のどこよりも身近にある沖縄でなければ生み出せなかったプロジェクトを今回のグランプリを機に、より多くの人に知ってもらいたいです。
株式会社 KAFLIX CLOUD(沖縄県那覇市)は、韓国でレンタカー予約サービス事業を展開している「KAFLIX(カフリックス)」の子会社です。基盤モビリティ技術事業を展開しており、2022年のResorTech EXPOでは「レンタカー市場のGDS(Global Distribution System)の役割を果たすERPシステムと省人化及び無人化が可能である非対面キオスク端末」が総合グランプリを受賞。今回は2年連続2回目の受賞となります。今回、受賞したAI基盤のカースキャニング(車両外部の損傷検出及び通知)サービスは、レンタカー基盤DXソリューションサービスの1つです。貸出時と返却時に撮影したイメージデータをAIが「車両認識」、「部品認識」、「損傷認識」の3つのモデル学習にて分析し、返却時の車両損傷の分析結果を抽出。従来の目視によるチェックと比べて、返却時のトラブル要素を排除できるほか、業務効率化や完全自動化による24時間無人レンタカー事業も展開しやすくなるといった効果が期待できるといいます。前年、総合グランプリを受賞した非対面キオスク端末と連携することでより大きな効果が期待できることと、日本で最もレンタカー事業が盛んな沖縄県での需要も踏まえグランプリが授与されました。
前年に続いて二度目の受賞をいただき、誠に感謝しております。カースキャニングは前年、受賞した非対面キオスク端末では自動化や効率化が行き届かなった「返却時」にフォーカスしたDXソリューションで、これをもってレンタカー事業の完全自動化に大きな一歩を踏み出したと革新しています。沖縄県はレンタカー率が6割を超える大きな市場。今後も地域とより密着して技術開発、サービスの普及に努めていきます。
リゾテックエキスポ2023の展示コンセプトに則り、沖縄アリーナ1階の展示エリアは観光Techゾーン、自治体・地方創生ゾーン、全産業DXゾーンの3つに区分され、該当するサービス・製品を提供する企業が出展されていました。9日(木)の来場者は4,819名。10日(金)は5,095名と常に会場は活気が溢れていました。その中心にあった2つの企業にインタビューしました。
企業集団LINKED CITY(東京都)は、人材DX・観光DX・農泊DX・都市DXを掛け合わせることで地方の産業DXの実現を図っています。その具体的な動きの一つが、リゾテックエキスポ2023の開催初日と同日、正式にスタートした「LINKED CITY OKINAWA」です。同プロジェクトでは沖縄県の4つのサテライトオフィス・コワーキングオフィスと連携し、LINKED CITYで生み出したソリューションを地域に根ざすための取り組みをスタートします。その組織体を示すように、展示会にはLINKED CITYに参画する大手マーケティング企業から翻訳事業者、沖縄県の在地企業など様々な立場の人たちが集まっていました。「ソリューションを地域の人たちの手によって根付かせて、スケールさせることで初めて、私たちが目指す『持続可能で幸せなまちづくり』の実現につながると考えています。そのためには地域の企業、人材の積極的で密なコミュニケーションが欠かせません。そのような意味では、今回の出展で早くも私たちの活動や今後の連携に興味を持ってくれる企業に出会えたのは、非常に心強いと感じています」
BtoBプラットフォーム事業を手掛ける株式会社インフォマート(東京都)は、全産業DXエリアにて、インボイス制度に対応した建設業向けのクラウド請求書サービスなどを展示していました。特に注目を集めていたのは、建設業の代表的なバックオフィス業務である発注、見積もり、依頼、報告書、請求などの書類作成、管理を一気通貫してデジタル化できる同社の新サービスです。「建設業界の大きな課題である『2024年問題』が目前に迫り、人手不足対策として業務のデジタル化の必要性が高まっていることは、全国はもちろん沖縄県でも肌で感じています。沖縄県の大手建設会社にも導入していただいており、今回の展示会を通してその関連企業にも私たちのサービスの魅力を知っていただくことで利用者を増やしていきたいです」
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活気溢れる展示会場の2階部分のコンコースに設けられたワーケーションフェアのエリアは、テレワークブースが近くにあることも理由か少しゆったりとした雰囲気でした。ブースに立つ出展者の方々のビジネスから少し距離を置いた空気感は、まさしく「ワーク(Work)=仕事」と「バケーション(Vacation)=休暇」ならでは、ではないでしょうか。
沖縄アリーナのコンコースではワーケーションフェアが実施され、うるま市浜比嘉島のワーケーション拠点施設「HAMACHU」のほか、国頭村、宜野座村などの関係団体らが出展。それぞれの取り組みをPRしていました。HAMACHUは閉校となった浜中学校を改装し、2022年7月にオープンしたワーケーション拠点施設です。一般社団法人プロモーションうるまが運営しており、株式会社LIFULLが提供している多拠点生活プラットフォーム「LAC(Living Anywhere Commons)」とも提携。全国から活用者を募っています。「ただの場を提供するだけでなく、施設を利用してくれる方々同士や浜比嘉という地域ともつながりを持ち、新たなモノを創造する『つながり』や『環境』をつくるのが私たちの役割だと思っています。実際、地元の行事など施設のホワイトボードに地域の方のお困りごとを書いてもらい、利用者が『それなら手伝えますよ』といった接点は既にいくつも生まれています。このような小さなつながりを積み重ねて、自然発生的なコミュニティをつくりあげていきたいですね」
国頭村の移住体験・コワーキング複合施設「CAMP HENTONA LOUNGE」の企画運営に携わっているQLCO(クロコ)を運営するQuantum Leaps Complex Office 代表 久保 勇人氏も、展示会にて企業向けに「ワーケーション型共創創出プログラム」の参画を呼びかけました。同プログラムは令和5年度沖縄県しまっちんぐ推進事業の一環で、企業と国頭村の「良縁」を結び関係人口を増やすことが大きな目的となっています。2022年には大手通信会社や航空会社などから計9人が参加し、やんばるの体験プログラム、地域課題解決アイデアソン、交流会といった体験をワ―ケーション中に感じてもらったといいます。「国頭村ならではの体験を通じ、地域の方々と縁を深めてもらいたい。その場の体験も大切ですが、事業活動のフィードバックミーティングなどを実施するほか、フォローアップや気軽なコミュニケーションを図ることで『継続的な共創関係の構築』を目指したいです」
ResorTech EXPO Awardの海外部門の新設や学生ツアーの実施、さらに沖縄アリーナでの初開催など、第五回目のリゾテックエキスポは「初モノ」だらけです。そのなかでも特に盛況だったのが今年から本格的に始まった「逆商談ブース」です。従来の展示会とは反対に企業や団体といった課題を抱えた顧客をIT企業が訪問して提案するというスタイルになっています。16企業・団体が参加し、提案企業は24社。総商談数は62商談となりました。内容は非公表ですが、早々に受付がいっぱいになるなど非常に好評ということです。
具体的には、特に提案を受ける側(中小企業・自治体・産業団体等)の満足度が高く、9割が「大変に満足した」もしくは「満足した」と回答していました。また、「課題を解決できるソリューションの提案を受けられる」、「日頃なかなか商談できない企業と商談できる」、「さまざまな情報交換ができる」と参加メリットを感じています。さらに次回も「参加したい」と7割が回答しており、提案する側であるリゾテックエキスポ2023出展者の満足度が特筆して高く、アンケート結果でも回答者がみな「大変に満足した」もしくは「満足した」と答えていました。逆商談を企画・運営した担当者は「『次回も参加したい』と回答している企業や団体の多さは非常に自信になりました。提案する側・受ける側の双方にとって有意義な商談であったと受け止めています。来年の開催に向けてより具体的なマッチングを目指したいと思います」
リゾテックエキスポ2023では周辺施設で様々なイベントが同時進行で開催されていました。その一つが沖縄型オープンイノベーション創出促進事業の一環として実施される「Okinawa Startup Festa 2023」です。
メイン会場は沖縄スタートアップ支援拠点「Lagoon KOZA(沖縄市)」で開催。コンテンツとして提供された各種トークセッションでは、総勢20人以上のIT企業、大学、行政、などから、有識者、行政職員、コミュニティマネジャー、起業家が登壇するなど濃密なトークが展開されました。会場は大勢の立見オーディエンスが出るなど熱気に包まれた空間となりました。
TIS株式会社とPIX Moving社の提携による自動運転EV、RoboBusの試乗体験が行われ、都市空間を移動するこのコンセプトは実際に体験してみるとその革新性に驚かされます。乗車中、その静かさと安定した走行はまさに未来の移動手段といった感じです。タブレット操作での直感的な運転も魅力的で、上部の空間はレストランやカフェなど、思いのままにカスタマイズが可能。都市の移動をもっと自由で快適なものに変える可能性を感じさせる体験でした。
初めて沖縄アリーナで開催したResorTech EXPO2023は、国内外の参加者はもちろん、うるま市や沖縄市といったこれまでにない来場者も取り込んだこともあり、過去最多の来場者数を記録しました。会場中央の巨大なデジタルサイネージによる演出や出展企業のCMも迫力があり、訴求力が非常に高かったと感じました。また、実証実験中の自動運転バスの試乗などの最新テクノロジーに触れ合う機会、屋外で風を感じながら飲食を楽しめるキッチンカーの出店、ワーケーション、テレワークを体験できる施設、学生ツアー、計83名が参加した9種のワークショップなど、多角的な「リゾート×テクノロジー」を存分に体験できました。今回、つながった縁がどのようなモノを創造するのか。また、来年はどのような進化したサービス、製品が登場するのか。今から楽しみで堪りません。最後にResorTech EXPO2023のResorTech EXPO in Okinawa実行委員会の振り返りの一言をいただきました。
今年は「沖縄発、Reboot Japan!」というテーマで、沖縄から日本を、世界をリブート(再始動)する想いで開催しました。改めて「国際IT見本市」として再始動し、台湾・韓国・ベトナムから合計15社・団体に参加いただきました。特に会場内を歩く学生の姿が多く、昨年3校のところ11校に増加し、県内高校・大学の学生に、出展企業と積極的に交流したり、ワークショップやキャリアフェアなどさまざまな取り組みに参加いただきました。
今回を含めて5回実施してきた「リゾテックエキスポ」ですが、県内外から多大なるお力添えをいただき、これまで実施し続けることができました。新型コロナウィルスの影響を受けながらも、オンライン開催と並行してリアル開催を続けることができ、沖縄の産業にデジタル・トランスフォーメーションの風を少しずつ導くことができました。
会場を移しての実施ということもあり、県内の注目度も高く、改めてリゾテックエキスポを知っていただく機会になりました。初めての会場での実施ということで、準備段階から次々と多くの課題に追われましたが、振り返ると沖縄アリーナという最新のデジタルサイネージを備えた施設を大いに活用し、よりバージョンアップしたデジタルの世界を体感いただけるイベントになりました。来年はさらに新しい世界をお見せできることでしょう。
(取材:データのじかん編集部)
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