職場におけるデータ活用の大切さが説かれるようになって久しいですが、はたして営業現場でもデータはうまく活用されているのでしょうか?
営業活動におけるデータ活用の実状に迫るため、2018年7月5日から7月7日まで東京ビッグサイトで開催された第5回営業支援EXPOを取材しました。このイベントでは、主にSFAやCRMなどをはじめとした営業活動の強化・効率化を図るソリューションやサービスが一堂に会し、経営企画部、営業部門、マーケティング部門、情報システム部門などさまざまな課題を抱える企業担当者が来場し、活発な商談が繰り広げられていました。
世界No.1 CRMとして営業、サービス、マーケティングなど幅広い分野において、ビジネスに必要なクラウドサービスを提供するSalesforce。展示では話題のAIやB2Bマーケティング、そしてインサイドセールスなど、様々なテーマでデモを行なっていました。
CRMのためのAI、“Sales Cloud Einstein”はデータをリアルタイムで受信しつつ過去のリードデータを学習、商談の確度をスコアで表示し営業活動の優先順位を付けていくことが可能に。さらにSalesforceアプリケーションを使用して優秀な営業担当者のスキルやメソッドを集約、各プロセスにおける適切なアクションを表示するデモを披露。
習得したスキルに応じてステップアップをしながら次のキャリアを目指せるため、属人的だった人材育成が均一化して強い営業組織の構築につなげるなど、インサイドセールス向上の貢献に力を入れていました。
いまや国内シェア8割を占める名刺管理サービスのSansanは、名刺を「価値ある資産」に変えるとしてアプリケーションのデモを実施。
名刺に記載された相手のプロフィールや連絡先を電話帳代わりに管理するだけではなく、ビジネスチャンスを広げるための活用シーンを提案。たとえばSansanに名刺を登録すると全社で共有され、さらに名刺の企業に連動した最新ニュースや人事異動情報、社内の人脈を自動的に配信するサービスなども提供しています。
また企業ごとの詳細情報をチェックすると名刺交換の数が多い同僚をランキングで表示し、接点が多い人物を簡単に発見できるほか、その人がどのような人脈を持ちどの業界に強みがあるかまでを把握できます。こうして、人力とAIを使って名刺をほぼ100%の精度でデータ化できる強みを活かしサービスの幅を広げていました。
さらにSansanが運用する名刺管理アプリ「Eight」のブースでは、企業向けプレミアムサービスの導入事例を紹介。100年以上続く老舗の建設業から従業員数10名ほどのベンチャー企業まで、会社の規模に合あわせて柔軟なサービスを提供できる強みが見られました。
営業支援・顧客管理のSFA・CRMだけではなくマーケティング・オートメーションなど、高度な分析機能を持つソリューションを提供する日本オラクル。
ブースでは「営業は次の時代へ」をテーマに掲げつつ、営業はいま転換期にあると提唱、およそ10〜20分刻の高頻度でカンファレンスを開催し、多くの人が足を止めてプレゼンに聞き入っていました。
あるカンファレンスでは最新の営業支援ツールであり高いカスタマーエクスペリエンスに応えるOracle Engagement Cloudを紹介。営業と顧客対応をシームレスに繋げる例を、営業担当者とサービス担当者の1日を追いながら紹介。
営業が抱える案件の勝率をAIが自動で判定、さらに勝率を高めるアクションを根拠とともに提示し効率的な営業活動へとつなげます。さらにトレーニング動画などのインサイドセールス機能や、「顧客360°ビュー」という顧客に紐づいたあらゆる情報の閲覧機能も。また通常コールセンターのオペレーターが回答するためにアクセスする「ナレッジベース」も閲覧でき、サービス担当者からのフィードバックやリードも部門を超えてリアルタイムで連携。こうして、あらゆるコンタクトから顧客の情報をカバーし、かつ社内でも同一のプラットホームを使用・連携しながら一貫したソリューションを提供できるといいます。
このようにIT系の営業支援が存在感を増す一方で、幅広いソリューションを提供するのではなくニッチな分野に絞った、シンプルなサービスも散見されました。例えばベルフェイス株式会社が提供する、アプリケーションのダウンロードや登録手続きをせず、IDの共有のみで手軽にビデオチャットやライブ配信等を可能にするサービス「bellface(ベルフェイス)」。また株式会社ベネフィット・ワンは、営業成績や評価によってアイテムと交換できるポイントを社員に付与するサービス「インセンティブ・ポイント」を紹介。
また、株式会社アイドマ・ホールディングスは蓄積されたテレアポのメソッドや在宅ワーカーの活用を通して、中小・ベンチャー企業に向け効率的な営業活動のアウトソーシングを実現。AIや自動化技術を用いた幅広いサポートが注目を集める一方で、人の手を介した細かなサービスの提供にも、まだまだニーズがあるようです。
ウイングアーク1st株式会社の展示ブースでアンケート調査を行なったところ、自社の営業課題として「営業活動のデータ化」をあげた会社が最も多く、データ化の前に立ちはだかる心理的ハードルの高さが垣間見れました。
また、SFA/CRMを導入していますか?という質問に「はい」と答えた会社は全体の27.5%に留まり、SFA/CRMがまだまだ伸びしろのあるツールであると同時に、思ったほど導入が進んでいない、ということが浮き彫りになりました。
SFA・CRMは売上向上に直接寄与できる重要なツールですが、一方で自社でのノウハウや技術者不足により導入が進んでいない面も多くあるようです。いかにSFA・CRMを導入し定着させるか、そして定着/運用するための技術者をいかに確保するかは、引き続き注目すべき課題となりそうです。
(伊藤七ゑ)
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