パイオニアたちが語る、これから必要とされる「セールスイネーブルメント」とは? | ページ 4 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
会員ページへmember

About us データのじかんとは?

パイオニアたちが語る、これから必要とされる「セールスイネーブルメント」とは?

         

中途採用の人材に対する研修は?

Sales Enablement Conference2019#02

最後は、登壇者3人+清水氏によるトークセッションです。ここでは、会場からの質問に答える形で、4人がクロストークをしていきます。ここではQ&A形式でお送りします。

Q メンバーのセールス研修について、第二新卒、トップセールス、引き抜きなどレベル感がバラバラだと思いますが、それぞれどのような研修を行いますか?

今井氏 結論から言えば、全員に一定の研修を受けてもらいます。セレブリックスは営業代行の会社ですが、9割が営業未経験。営業の経験よりはポテンシャル採用を大前提としているので、営業未経験の方々にもセレブリックスの持っている顧客開拓メソッドを短期間で習得してもらい、トップセールスのエッセンスを身に付けてもらうということをやっています。気をつけているのは、同じ教育、同じ講師というところをぶらさないところです。

山川氏 メドレーでは、入社時の研修として会社や事業部理解の場がありますが、セールスに関してはドキュメントを読み込んだり、商談同行やベルフェイスの動画視聴が中心です。食べログでは1ヶ月間のプログラムが組まれていて、セールス未経験と幹部候補が横並びで受けるとこはありましたね。

久我氏 中途採用の方はトレーニングとかセミナーがあるのでそれに参加してもらって、製品の情報やプレゼン内容などを研修してもらいます。新卒に関しては専用のカリキュラムに加え、インサイドセールスを全員経験いただきます。

清水氏 ベルフェイスとまったく一緒ですね。インサイドセールスは全員やるというのが基本です。もちろんエンジニアなどは別ですけど。

Sales Enablement Conference2019#02

Q インサイドセールスを全員通過するということですが。ジュニアメンバーの成長期間としての側面が強いのでしょうか?

清水氏 ベルフェイスではもちろんジュニアメンバーの育成という面はありますが、セールスフォースをしっかり触れる素養を養ったり、インサイトセールス支援のために知ってもらうという要素が強くあります。

久我氏 インサイドセールスを経由するとセールスフォースなどのSFAやCRMツールも当然ですが、セールスが使うべきその他のITツールや最新のセールスリテラシーの基礎が結構学べますよね。私は営業を10年以上やっていましたが、訪問の時の移動時間って無駄だと感じていました。移動時間は少ない方がいい。お客様との打ち合わせに2時間確保すると、2時間丸々話しなければならないという気になりますが、テレビ会議だったら要件が終わったらすぐ終われるので、とても効率的です。そして当然移動時間は減る、そういうことが自然に身につくので、インサイドセールスを経由させることは重要と感じています。

日報は上司と部下のコミュニケーションツール

Sales Enablement Conference2019#02

Q セールスのデータを集計するためのインプットに何か工夫をしていますか?

今井氏 セレブリックスは、日報にはすごくこだわっています。なぜかというと、セレブリックスは営業代行会社ということで、クライアントに代わって営業を行っています。つまり、日報は成果物なのです。なので、単純な成果の記録というだけではなく、気づきということにすごくこだわっています。たとえば、できなかったことにどういうトライをして、どういう結果が得られたかというところであったり、実験活動の内容などは明確に記載します。また、最終的に月間のアウトプットと紐付く形で、今担当している業界の傾向としてはどういうところがネックになっているかとか、どういう理由で受注になっているかということを、数字などの定性情報として表示されるようにしています。

久我氏 私が営業責任者をやっていた頃は日報や予算報告は一切は廃止しました。SFAに入力すると自動で日報や週報を生成する仕組みを構築しました。またダッシュボードを見れば、1週間の営業成果として受注を何件獲得して、何件訪問したか、商談は何件進捗したのか、全部わかるんです。営業は活動履歴はあるけど新規案件登録がなく受注もなく既存商談も進捗していないということだと、活動内容がおかしいと直ぐに分かります。データで捕捉して、データで会話して、データから行動に移していきます。

Sales Enablement Conference2019#02

清水氏 ベルフェイスでやっている日報は、感情のためにやっています。マネージャーが部下に対して自分の想いを伝えるって難しいんです。うちの日報は最後に今日の一言のようなスペースがあって、僕が率先してふざけるわけですよ。すると、僕がどういう人であるかとか、チームの雰囲気がほぐれたりします。

今井氏 日報でどうアウトプットするのかも大事なのですが、アウトプットしてもらった内容にフィードバックするということがすごく重要だと思っていて。見ていないとメンバーから思われた瞬間、形骸化するというか、何なら悪口に変わります。そうなるとイネーブルメントなんか不可能になります。やらされているということになってしまうので。日報は、本人が記録を残して上司がアドバイスをするという、お互いの意思疎通のツール、媒介をしてくれるものにしていかないと無意味になるので、そこに気をつけたほうがいいと思います。

営業力はどうしたら上がるのか?

Sales Enablement Conference2019#02

会場からの質問コーナーの後は、清水氏を中心としたクロストークに。清水氏から「営業力はどうしたら上がるのか」という議題が上がりました。

山川氏 僕は成功体験を見せてあげることに尽きるかなと思っています。いわゆる営業教育のときに、マネージャーが新人と同行するとき、マネージャーが一番すべきことは受注するところを見せることだと思います。逆にメンバーに任せて終わって、その後に喫茶店でフィードバックするというのは、やってはいけないなと思いますね。

清水氏 僕も同じ意見です。自負が大変大事だと思っていて。以前、ベルフェイスの新卒新人に展示会に出てもらったことあるのですが、その前後でアポ率が変わったんですよね。展示会で100件とかお客さんの前でプレゼンテーションをしていたので、自分の話が伝わっているというイメージができるようになるんです。スキルは1mmも変わっていないのかもしれませんが、そういう自負によってアポ率や営業力は変わるという経験がありました。

今井氏 その人に応じて営業力を上げるポイントは違うと思うのですが、代表的なものをふたつ挙げさせていただくとすれば、まずは前提を変えられるスキルや能力が必要だと思います。買わないことが前提なので、その前提を変えるために逆算してプロセスを設計できる力と、お客さんの事業や理想を描く想像力が必要だと思います。もうひとつは、お客さんの事業や未来を想像するためのビジネス力の強化です。やはりお客さんとしては儲かると判断できるものに投資するので、その業界の最新動向などを分析して、その商材が必要な理由を見つけるということが大事だと思います。

そして最後は、「営業の仕組みや組織作りにおいて重要なポイント」というテーマに。これは全員が同じ意見でした。

Sales Enablement Conference2019#02

今井氏 いろいろありますが、ひとつだけに絞るなら、それを推進する担当をちゃんと置くこと。責任の所在を明確にしなければ優先度が下がると思います。

Sales Enablement Conference2019#02

山川氏 かぶりましたね(笑)。やはり専任者は重要だと思います。僕がその立場でやらせていただいているのですが、まあまあ人数のいる会社のなかで、今はCLINICS事業部以外の事業部にもイネーブルメントの動きが出てきています。今後はセールスイネーブルメントからビジネスイネーブルメントの領域にちょっと取り組んでいきたいなと思っています。

Sales Enablement Conference2019#02

久我氏 一緒ですね。イネーブルメントをやるのであれば、イネーブルメントに継続投資する、つまり組織化して一定数の人員や費用を投下し、かつ継続的なPDCAを回していく必要があると考えます。

Sales Enablement Conference2019#02

清水氏 僕は、すべて売り上げから考えるというのがひとつ。売り上げか利益を上げるための施策なので、データがあればいいわけではないのですよね。すべては売り上げに紐付いているかどうか。もうひとつは、すべてカスタマーサクセスに着地するというのが大事だと思っています。先ほどと同じですが、いくらデータを集めても、カスタマーサクセスに意味がないものなら、そのデータは必要ないと思います。

久我氏 営業組織の役割は、事業戦略や経営戦略、組織戦略によって変わります。自分たちの組織の役割は何なのか、事業のバリューチェーンのなかで自分がどこにいるのか、現在の経営戦略において、営業という存在が重要であるということを経営が理解し、それをメンバーに伝えていく必要があります。例えばカスタマーサクセスという役割が組織化されている企業では、営業の役目はいかにその後のLTVを拡大するか、といったKPIを設定されている組織があります。世界的な大手IT企業では、営業には販売成績だけでなく、その後の顧客の利用率を一定数評価にいれています。
つまり企業がメッセージとして「売る」だけでなく、「顧客の成功」を営業に課しているということになります。
無理やり売りつけてOKということはなくなり、自社の製品価値や提供価値がフィットする顧客にしっかりとした提案をしなければ、この目標は達成することができません。こういった経営的な意図や戦略を考えずに全体の組織設計をしていると、全部崩れていきます。そして日々事業環境やそれに伴う戦略は変化するので、組織において完成形などありません。組織状態を把握し、常にチューニングし続けていくしかないと思います。

2時間にわたるトークセッションは以上で閉幕。セールスイネーブルメントの話でしたが、単純に営業力を強化する、組織の売り上げや利益を伸ばすという話ではなく、人材育成や企業組織のあり方といったことにも通ずる話が多く、たいへん参考になりました。

セールスイネーブルメントは、企業にとってこれから重要となる取り組みです。自社の営業部門を改善する際の参考にしてください。

(取材・TEXT:三浦一紀 )

 

 
データで人を殴ってはダメ

1 2 3 4

データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

関連記事Related article

書評記事Book-review

データのじかん公式InstagramInstagram

データのじかん公式Instagram

30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

おすすめ記事Recommended articles

データのじかん会員なら、
全てのコンテンツが
見放題・ダウンロードし放題
データのじかん会員でできること
  • 会員限定資料がすべてダウンロードできる
  • セミナー開催を優先告知
  • 厳選情報をメルマガで確認
会員登録する
データのじかん会員について詳しく知りたい方
close close