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利己的な人は長い目で見ると損をする!? 認知的焦点化理論など、運に関する3つの研究を紹介!

         

あなたは自分のことを”運がいい”と思いますか?

運には頼らないという人でも、ふと宝くじを買ってみたり、なんとなく縁起を担いだりすることもあるでしょう。そんな「運」について、研究を試みる人物も国内外ではさまざまにみられます。

この記事では、認知的焦点化理論、到達度、「才能とどちらが成功において重要なのか」など、運にまつわる理論や研究をピックアップしてご紹介します!

“運の良さ”を、人間関係と時間軸で説明する「認知的焦点化理論」

認知的焦点化理論を展開するのは、第2次安倍内閣の内閣官房参与も務めていた京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏。TVなどでその姿を見たことがあるという方も少なくないでしょう。

理論の要点をひとことでいうと、“ある人が認知する「人間関係」と「時間軸」の面積がその人が得をするか損をするか(≒運が良いか悪いか)を左右する”という心理学上の研究です。

藤井氏いわく、運が良いのは認知する人間関係の範囲が広く、また、時間軸も社会の将来像にまで広がっている人。ついつい、利己的にふるまい利益を独り占めする人が結局は得をするのではないかと思ってしまいますが、人間社会に存在する互恵不能原理、暴露原理、集団淘汰原理の3つにより、損得勘定で利己的に行動する人は結局は損をしてしまうと藤井氏は解説しています。

人間が利己的にふるまうことについての研究といえば、スパイク行動(自分が損をしてでも相手に得をさせないように仕向ける“いじわる”な行動戦略)について、下記記事にて取り上げました。

“日本人は特にいじわる”とデータが証明?行動経済学が明かす「スパイト行動」

スパイト行動が狙っているのは、自分にとっても相手にとっても損な結果(lose-lose)です。一時的には目の前の相手に負けなかったことで溜飲が下がることもあるかもしれませんが、認知的焦点化理論に従って、周囲や将来に目を向ければ、やはりときには相手に利益をゆずり、最終的には両者の得(win-win)を目指すのが理想となるでしょう。

ついつい「スパイク行動」を取りそうになった際には、認知的焦点化理論を思い出してみるのが効果的かもしれません。

ウェアラブルセンサが明らかにした、「到達度」と運の関係性

続いて紹介したいのは、“人間の幸福”についてウェアラブルセンサやビッグデータを用いて研究する日立製作所の矢野和夫氏が自著『データの見えざる手~ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社、2014)に記す「到達度」という指標を用いた運の理論です。

「到達度」とは、“人とのつながりを介して出会える人の可能性”を数値で表したもの。たとえば、あなたに5人知り合いがいて、それぞれ3人ずつ別の間接的な知り合いが存在するとすれば、到達度は5かける3で15となります(それぞれの知り合いはお互いを知らないと仮定します)。

矢野氏のチームはマサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、ある問い合わせ対応チームの社員約30名にウェアラブルセンサを装着してもらい、その対応がうまくいくかどうか(複雑な見積要求に平均的にどれだけ短時間で回答できるか)と到達度の関連について、ある知見を得ました。

それは、“到達度が高い人ほど問い合わせ対応の仕事がうまくいく”というもの。

ここで注目したいのが単純な知り合いの多さではなく、“「知り合い」や「知り合いの知り合い」のネットワークも含めた到達度の高さ”が仕事の成功につながっていたということです。

あなたの周りにも、なぜか人に助けてもらって難しい仕事をこなしているように見える(=
運のよい)人はいないでしょうか?

そのような人々は、実は「到達度」において高いスコアを記録しているのかもしれません。だとすれば、あなたが自分の運を高める方法はひとつ。

“到達度の高いその人との関係性を構築して、自らの到達度も引き上げること”でしょう。

矢野氏の研究については以下の記事でもご紹介しています。

【書評】『予測不能の時代: データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ』 幸福を数値化してわかったこととは?

イグノーベル経済学賞2022受賞! 「才能 VS 運」をシミュレーションした研究

最後に取り上げたいのは、「人々を笑わせ考えさせた研究」に与えられるイグ・ノーベル賞で、2022年の経済学部門を受賞した『TALENT VERSUS LUCK: THE ROLE OF RANDOMNESS IN SUCCESS AND FAILURE(才能 VS 運:成功不成功におけるランダム性の役割)』です。

2021年時点でトップ10%が富の約76%を所有し、下位50%にはわずか2%程度しか与えられないこの世界。「いくら才能に個人間の違いがあっても、1,000倍、10,000倍の差がつくだろうか?」と論文の序文では疑問が呈されています。


引用元:WORLD INEQUALITY REPORT 2022

そこで試みられたのが、それぞれに異なる才能値を持つ、1,000人の仮想的な個人が暮らすシミュレーションモデルを構築し、(仮想的な時間軸における)6カ月ごとにランダムに幸運/不幸な出来事を発生させ、それに応じて資本/成功を与えるシミュレーションを40年間繰り返す実験です。才能値が正規分布に従って割り振られている状態からシミュレーションは開始され、この場合の才能値は、資本/成功が倍増あるいは半減する確率とひもづけられていました。

つまり、開始地点では下の図のような状態になっていました。

引用元:Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda, for explaining, mathematically, why success most often goes not to the most talented people, but instead to the luckiest.(“Talent vs. Luck: The Role of Randomness in Success and Failure,” Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda, Advances in Complex Systems, vol. 21, nos. 3 and 4, 2018)

そして、40年後の仮想世界の資本/成功の分布を表すのが下記のグラフです。


引用元:Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda, for explaining, mathematically, why success most often goes not to the most talented people, but instead to the luckiest.(“Talent vs. Luck: The Role of Randomness in Success and Failure,” Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda, Advances in Complex Systems, vol. 21, nos. 3 and 4, 2018)

ご覧の通り、資本/成功の分布は、現実の映し鏡のようにひどく偏ったものになってしまいました……。才能値は、正規分布に従って割り振られていたのにもかかわらず。

そして、最も成功した個人は、0.61と平均0.6よりもわずかに大きな才能値しか持たない、最も多くの幸運に出会った1人だったのです。全体をみても、才能値よりも運のほうが資本/成功と相関していることははっきりしています。

運が成功の大部分を左右する残酷なシステムをデータで明らかにしたこの研究は、SNS上で多くの共感を呼びました。才能の定義など詳細については議論の余地がありそうですが、この身もふたもない結論は確かに真実らしく感じられますね。

終わりに

実験や理論、といった言葉とは対極的な位置にあると考えられがちな「運」についての3つの研究・理論をご紹介しました。

運を左右できるかどうかは、その定義や「運がいい」のスコープをどこに置くかによっても異なります。一握りの富を得るには生まれつきの運がなければ不可能だとしても、今日の仕事をスムーズに進めるための運は、認知的焦点化理論や到達度を軸に高められそうです。

“人事を尽くして天命を待つ”の姿勢で運と向き合っていきましょう!

【参考資料】
・藤井聡『解明! 運がない人はなぜ運がないのか』┃President Online
・WORLD INEQUALITY REPORT 2022
・矢野和男『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』草思社、2014
・Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda, for explaining, mathematically, why success most often goes not to the most talented people, but instead to the luckiest.(“Talent vs. Luck: The Role of Randomness in Success and Failure,” Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda, Advances in Complex Systems, vol. 21, nos. 3 and 4, 2018)

宮田文机

 

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