この調査により、睡眠の質が良好なドライバーの方が、睡眠の質に満足していないドライバーよりも売り上げが高いという興味深い事実も明らかとなった。
乗務時間が不規則な運輸業界で働くドライバーは、適切な休憩を取れないケースも多く、運転中に倦怠感を感じるケースは少なくないという。睡眠の途中で目覚めてしまうドライバー(倦怠感がある)と、良好な睡眠を取れているドライバー(倦怠感がない)を比較すると、倦怠感がないドライバーの事故件数が1.41件なのに対し、倦怠感があるドライバーの事故件数は3.10件となっており、倦怠感のあるドライバーの方が、2年間での事故件数が1.69件高いことが明らかとなった。
これは、倦怠感により事故率が2.2倍に増加したことを示している。
また、「乗務員の健康増進」(WG02)のワーキンググループは、腰痛を防止するためのベルトの着用が安全運転にどのような影響をもたらすかを検証した。その結果、腰痛を改善する健康ベルトを着用したドライバーは、Gセンサーを装着したドライブレコーダーの記録から、運転中のヒヤリハット事例が半減したケースが報告されている。
タクシー乗務員アンケートの結果で、「睡眠の満足度が高い」と回答したグループは、「睡眠の満足度が低い」グループに比べて売上額が22%高いという結果が得られたため、今後満足度の低い乗務員に睡眠の質を高めるためのサプリメントを服用してもらうことで、睡眠状況の変化が安全運転と売上額へもたらす影響を調査する継続的な実証実験を予定しているという。
今回、TDBCで行われた実証実験の報告は、まだ中間報告、ということもあり、今後のさらなる進展が期待されるが、これまで収集できていなかった類のデータが集まり始めたことは1つの大きな進歩であると言えるだろう。と同時に、データが紙のみでしか存在しない、データの形式が統一されておらずうまく活用ができない、など、データの収集に関する問題も浮き彫りになってきた。
これらのハードルをクリアし、データを有効活用できる環境を整えることが、今後の課題だと言えるだろう。だが、企業の垣根を超えたところで、業界が結託し、より多くの参加者が問題を共有することで、よりよい現実社会を作り出すという「オープンイノベーション2.0」の理念に沿ったTDBCの試みは大いに評価されるべきだろう。
TDBCの今後の取り組みに、データのじかんは引き続き注目していく予定だ。
(テキスト:大屋敏文・写真:佐藤雄治)
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