アプライド・マテリアルズの最高技術責任者、オムカラム・ナラマスはこう説明する。
「今日のスマホと同じものを1980年代につくろうとすれば、コストは1億1100万ドル、
高さは14メートル、そして200キロワットの電力を消費したはずです。
ここからも材料科学の進歩の威力がわかるでしょう」
ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー(土方 奈美 訳)『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』
スマートフォンが広く普及し始めて10年以上が経とうとしています。
スマートフォンひとつあれば、遠くに住む全然知らない人とSNSで気軽に意見を交換することができたり、気になる映画を動画配信サイトですぐに見ることができたり、お腹が空いたらフードデリバリーサービスを簡単に依頼できたり、と実にさまざまな欲望を満たすことができます。その一つ一つは小さな変化かもしれませんが、俯瞰してみると、私たちの生活や消費のありようは、スマートフォンが普及する以前とは大きく変化しています。
そして、技術は今もこれまで以上のスピードで発展を続けています。従って5年後、10年後のわたしたちの生活や社会は少しずつ、けれども確実にこれまでとは違うものになっていくでしょう。
これからの私たちの社会を変えていくサービスや技術はどのようなものなのでしょうか?
今回は、10年後、2030年の未来に対して最先端の予測を試みる書籍『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』をご紹介します。
今作はテスラのCEOであるイーロン・マスクの盟友で22のスタートアップを立ち上げたシリアルアントレプレナーであるピーター・ディアマンディスと、同じく起業家で、ピューリツァー賞候補にもなったジャーナリストのスティーブン・コトラーが手がけた書籍です。
小売、広告、エンタメ、交通、教育、医療、長寿、金融、不動産、環境など幅広い分野を題材に起業家たちの間で注目されている最新技術を取り上げて2030年の未来が論じられています。
紹介される具体的な製品やサービスの中には空を飛ぶ車や人体の部品交換、VRの世界での土地購入などまさにSFさながらの物ばかり。
とはいえ今の生活と比較した時に「そんな生活実現できるのだろうか」という疑問が頭をよぎります。
フィクションのようなサービスを短期間で実現させる背景には加速度的に変化する技術があります。
変わらないのは「変化が続く」という事実だけであり、変化は加速する一方だ。 ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー(土方 奈美 訳) 『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』
短い期間で大幅な進化を遂げる技術。その背景には3つの大きな増幅要因があるといいます1つ目がコンピューティング能力の指数関数的な成長、2つ目は加速度的に変化する技術の融合(コンバージェンス)です。さらにこれらの副産物となる副次的効果が3つ目の増幅要因として挙げられます。
これらの要素が複合的に作用し、技術が加速度的に進化していく(エクスポネンシャル・テクノロジー)と本書では語られています。
そしてこのような技術の進化には以下の6つのステージがある、と言われています。
ステージ1 |
デジタル化 |
コンピューターは、時間の経過とともにコストはそのままに性能が指数関数的が上がります。これは「ムーアの法則」と呼ばれる法則です。従ってある技術がデジタル化されれば、指数関数的に性能は上がっていきます。さらに、量子コンピューティングのコストが下がり性能が上がれば、ムーアの法則の強化版とも言える「ローズの法則」にのっとり、さらに早く性能はあがっていくと考えられています。 |
ステージ2 |
潜行 |
エクスポネンシャル・テクノロジーはその指数関数的な成長に伴って、初期は緩やかな変化しか起こりません。従って、新たな技術の登場に一時的に大きな注目が集まっても、その変化に緩やかさによって世間の興味関心がそれてしまう場合があります。この過程を潜行と呼びます。 |
ステージ3 |
破壊 |
技術が十分に成長し、その後も加速度的な成長を継続することが期待された結果、既存の製品、サービス、市場、産業よりも優位になり、既存のものを破壊していく過程。 |
ステージ4 |
非収益化 |
以前と同じコストでも性能が格段に上がり、同じ製品、サービスを維持するためのコストが必要とされるコストが縮小・消滅します。 |
ステージ5 |
非物質化 |
製品がクラウドや端末で操作可能なものになり、実体が必要と無くなる過程。 |
ステージ6 |
大衆化 |
ある技術の性能が高まることでそれをつかった製品、サービスが安価で一般的なものになり、多くの人に使われるようになること。 |
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