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杜氏がいない日本酒造り:人ではなくデータによる未来の酒造り『獺祭』の秘密

         

10月1日は日本酒の日でした。

皆様はどのようなお酒がお好みでしょうか?ビール?焼酎?ウィスキー?それとも日本酒?

山口県旭酒造がつくる『獺祭』が美味しいお酒なのは今では多くの方がご存じかと思います。

しかし、世界に知られる美味しいお酒をこれまでとは全く違う発想と技術で作っていることを知っている人は、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

今回は『獺祭』が取り組んできた秘密を少しだけ紹介したいと思います。

日本酒の消費は年々減少!

『獺祭』が目指しているのは、「酔うため売るためではなく、味わうための酒」です。

日本酒は、土地ごとにさまざまな銘柄があります。コメから作られる酒として、日本の文化や日常生活にも深く根付いています。しかし、日本酒の需要は年々減少していて平成15年には3万1,000キロリットルあった消費数量が、平成25年にはその3分の2の約2万キロリットルを割り込むところまで減少しています。

151016_酒類の消費数量の推移

図:酒類の消費数量推移 国税庁

日本酒の消費が減っているのは、日本酒以外の酒を好んで飲むトレンドがあることと酒の消費量が減少しているからです。さらに、日本酒は小さな酒蔵で作っているため経営が厳しく、人手不足や後継者問題など厳しい経営環境から廃業せざるを得ないケースが増えています。

杜氏がいない!


旭酒造では、酒造りに杜氏(とうじ)を置かず社長と社員だけで醸造をおこなっています。

杜氏は酒造りの総責任者ですが、そのノウハウは熟練した優秀な杜氏だけが持っています。そのため、お客様のニーズや経営判断でお酒の生産量を柔軟に変更することができませんでした。また、杜氏が変わると味も変わるため後継者の問題もありました。そこで、旭酒造では、酒造りの全ての工程を最新鋭のセンサーでデータ化して、酒造りのマニュアルを作って個人ではなく組織で酒造りをする取り組みに成功しました。

これによって、“四季醸造”という年間を通じていつでも酒造りができる仕組みが出来ました。通常の酒造りでは、冬から春にかけて仕込みを行い、夏の間に寝かせて味を整えるという年1回だけの酒造りでしたが、これを変えることに成功したのです。つまり、獺祭はセンサーとコンピュータを使った最新のテクノロジーに支えられた食品製造技術が活用されています。

味わう酒にこだわる!


これまでの日本酒は、“大半は安い酒を作って、少しだけ良い酒を作る”というやり方が一般的でした。しかし、これでは年々消費が減るなかで経営状態が良くなるわけがありません。

そこで、旭酒造では安い普通酒や紙パック酒を廃止して、「無理せず、高品質な吟醸酒をそれなりの価格でお客様に提供する」という方針転換を行いました。日本酒好きの方は存知だと思いますが、『獺祭』には“獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分”という商品があります。これは、精米歩合23%(77%は捨てる)という極限まで原材料の酒米山田錦を磨いて作ったお酒です。1升(1.8リットル)で1万円以上もするお酒ですが、味は確かで日本人のみならず、和食通の外国人が絶賛していてプレミアムとなっています。現在では、このさらに上のレベルの商品があって、遠心分離器で絞ったものや、720ミリリットルで3万円以上の値がつく“獺祭 磨き その先へ”(確実に入手困難です)といった商品が登場しています。

旭酒造では、世界の和食ブームを追い風として『獺祭』を世界ブランドとして販売し、いずれは製造する半分以上を海外へ出荷する目標を掲げています。旭酒造のホームページのトップは、日本語、英語、フランス語、中国語を選択できるようになっています!

旭酒造の桜井社長は、こうした取り組みを行うなかで数々の失敗や苦労をしてこられた方です。最近は、テレビや雑誌などでも取り上げられているので目にされた方も多いと思います。保守的な世界で、守るべきものと捨てるべきモノを試行錯誤することが生き残るためには必要なのだと気付かされるストーリーです。

さて、今宵は日本酒など一杯如何でしょうか。

 

[著]Wingarc1st Official The BLOG編集部
本記事はウイングアーク1st株式会社の運営するThe BLOGに掲載された記事を許可を得て掲載しています。

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