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若手男性は「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」が強いのは本当?

内閣府男女参画局では毎年、性別による「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」に関する調査を実施している。このデータについて男性20代に関して、予想以上に性別による無意識の思い込みが浸透していることに、方々で驚きの声が上がっている。

現在、どのような職場や社会においても、男性・女性が協力して働くことが当たり前の社会になっている。それだけに性別による無意識の思い込みは、看過できない問題だ。なぜ、若者世代に性別による無意識の思い込みが広がっているのか。各種データを用いて、その理由を探ってみた。

         

若者の意識調査で驚きの結果が!内閣府の調査内容

まずは、各所で話題になっている「令和4年度性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査」を紹介したい。ちなみにアンコンシャス・バイアスの意味は以下の通りだ。

■アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)

日本語では無意識の偏ったモノの見方、無意識の思い込み、無意識の偏見という意味。アンコンシャス・バイアスの事例は多様であり、「血液型で相手の性格を想像する」ことなどがあげられる。

このアンケート調査での対象者は、全国男女20~60代の10906人(男性5452人、女性5348人、その他70人)とし、調査設計は全国47都道府県を性別、年代(20代~60代)で分け、均等に回収するサンプリングとした。質問項目は計41項目である。実施時期は2022年8月だった。

特に興味深い項目は職場に関する項目だ。

「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」の問いに対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の総計は、男性20代が計20.5%、男性40代が計16.2%、男性60%が12.2%だった。

同様に「男性は出産休暇/育児休業を取るべきでない」という問いに対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の総計は、男性20代が計18.2%、男性40代が計16.4%、男性60代は11.6%になる。

「仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い」「営業職は男性の仕事だ」においても、同様の傾向が見られる。つまり、20代男性は、他世代よりも性別による無意識の思い込みが強い、ということだ。

一方、女性は「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」の問いに対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の総計は女性20代が13.4%、女性40代が11.5%、女性60代が9.6%だ。女性は、男性のような明白な傾向は、見られなかった。

また、「男性は出産休暇/育児休業を取るべきでない」「仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い」の項目では、男性20代と女性20代との間で、「そう思う/どちらかといえばそう思う」の差が生じたことも、注目すべきポイントだ。

リーダー志向度とアンコンシャス・バイアスとの関係は

次に紹介するデータは、国際NGOプラン・インターナショナルが行ったアンケート調査「日本における女性のリーダーシップ2021」だここでは、15歳~24歳の男女の生徒 ・ 学生ら計 1000 人(男性500人、女性500人)を対象にした2020年実施のインターネット調査を見ていきたい。

まず、「将来リーダーとして責任ある仕事をしたいかどうか」という問いに対し、「したい」と答えた男性は18.0%、女性は9.4%。「どちらかとういうとしたい」は男性28.0%、女性29.0%だった。「したい」の男女差が約9%あることから、男女で差がついた質問と言える。

※出典:プラン・インターナショナル「日本における女性のリーダーシップ2021(プラン・インターナショナル)」

「リーダーになる自信があるかどうか」という問いに対しては、「ある」が男性10.6%、女性3.8%。「ない」は男性27.6%、女性34.8%と差がついた。

※出典:プラン・インターナショナル「日本における女性のリーダーシップ2021(プラン・インターナショナル)」

「女性より男性のほうがリーダーに向いているかどうか」では、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が男性計34.4%、女性計20.6%だった。

さらに、「女性より男性のほうがリーダーに向いているかどうか」の問いに対し、「そう思う」と回答した男性の約60%が将来リーダーを「したい」「どちらかとういうとしたい」と答えた。

また、「女性より男性のほうがリーダーに向いているかどうか」の問いに対し「どちらかといえばそう思う」と回答した男性の約50%が、将来リーダーを「したい」「どちらかとういうとしたい」と答えたのだ。

※出典:プラン・インターナショナル「日本における女性のリーダーシップ2021(プラン・インターナショナル)」

つまり、リーダーを希望する男性の度合いと性別による無意識の思い込みの度合いとの間に相関関係がある。

一方、女性では男性のような相関関係は見られなかった、としている。

男性若者の出世欲は高い?

少し見方を変えて、男性の若手社会人にリーダー欲、出世欲は高いのだろうか。確かにグーグルでニュース検索すると「出世したくない」が多数を占めるなど、出世欲の低さを強調する記事が目立つ。

一方、そのような見方に疑問を呈するデータも存在する。それが2022年に株式会社アスマークが実施した自主調査「世代による仕事意識の違い」だ。これは全国に在住する正社員男性・女性1200人(男性600人、女性600人)を対象とした。年代は22歳~56歳を対象とし、各世代が均等になるように配分した。

対象とした正社員の職種はIT・情報通信が多く、メーカーは少なめだ。また、営業は多め、経理・財務・人事・総務は少なめである。

「出世したい」「出世したいとは思わない」を質問したところ、男性22歳~27歳のうち「出世したい」に近い計は52.0%、「出世したいとは思わない」に近い計は27.0%だった。男性28歳~41歳は「出世したい」に近い計が31.5%、男性42~56歳は「出世したい」に近い計が27.7%だった。一方、女性22歳~27歳に関して「出世したい」に近い計は27.0%にすぎない。
次に「経営に携わりたい」「経営に携わりたいとは思わない」を質問したところ、男性22歳~27歳では「出世したい」に近い計が42.0%にものぼり、男性28歳~41歳の23.5%を圧倒する。

この調査では正社員に限定し、業界・職種も偏りがありつつも、男性若手社員は出世欲が高いと結論づけられる。

3つの調査から考えられること

3つの調査を紹介したが、いずれも調査を実施した会社・団体や、調査の対象者は異なる。そのため、クリアな結論は出せないが、おぼろげながら、他世代と比較すると「なぜ若手男性は性別による無意識の思い込みが強いのか?」という問いに対して、以下の仮説が立てられるのではないだろうか。

つまり、性別による無意識の思い込みが強い傾向を持つリーダー志向・出世欲が高い人物が、他世代と比較すると男性20代に多いという説だ。

もっとフランクに言うならば、現在の若者男性はいわゆる「意識高い系」が多いため 、自然と「性別による無意識の思い込みが強い」とも考えられるだろう。この仮説に対して反論もあるだろうが、思い当たる節がある方も多いのではないだろうか。

言うまでもなく、令和の世の中は女性・男性が協同して働くことが当たり前となり、女性が旗振り役になることも珍しくない。このような世の中において、未来を担う若者が「性別による無意識の思い込みが強い」のは決して好ましい傾向ではない。それでは解決策はあるのだろうか。

「日本における女性のリーダーシップ2021」を発表したプラン・インターナショナルによると、ジェンダー平等教育を受けた学生は、受けていない学生よりもリーダー志向が、強いことが指摘されている。しかも、女性に顕著だという。それでも、「どちらかというとリーダーになりたくない」と回答した女性の7割超は、ジェンダー平等教育を受けた経験を持つ。

また、「日本における女性のリーダーシップ2021」では、15歳以上の学生を対象にしている。プラン・インターナショナルによると、ジェンダー規範は15歳未満で芽生える可能性が高い、としている。

このように考えるなら、周辺環境に身をまかせるのではなく、小学生などの早い段階で意識的にジェンダー平等教育の実施、女性の自信を高める教育の実施が、重要といえる。ようは、教育が肝ということである。

著者:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。
 

(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)

 

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