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今月は「税金」をテーマにお送りしていますが、この記事では「デジタル税」に迫ります。
デジタル税は、今まさに進行中の問題であり、ぜひとも押さえておきたいところです。この機会に学んでおきましょう。
デジタル税とは、AppleやGoogleなどIT分野の巨大企業を主な対象とする税のこと。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの4社のこと)をターゲットとしていると言われています。
導入が検討されているのはEU(欧州連合)。デジタル税は、デジタルサービス税(DST)とデジタル法人税(SDP)の2段階からなり、2019年末までに採択し、2020年1月からの施行を目指しています。DSTは、EU域内での売上高に一律3%を課税するというものであるのに対し、SDPは恒久的施設(PE)の定義見直しに関わるものです。
従来の国際的な法人課税ルールでは、国内に支店や工場などPEを持たない企業には法人税を課税できないのが原則となっています。一方、GAFAをはじめとする巨大IT企業はPEを持たずに収益を得ていることが多いのです。デジタル税によって、その国に物理的な拠点を持たずに収益を得る企業に対し、発生した利益への課税ができるようになります。
DSTの対象となるのは、「年間世界収益が7億5000万ユーロ(約975億円)以上かつEU内の年間収益が5000万ユーロ(約65億円)以上」の企業。120~150社が対象となるようです。ITスタートアップは対象とならず、あくまでも大企業に標準を合わせていることがわかります。
EU域内での導入が検討されていますが、合意が早期にまとまらなければ、英国単独で同税を導入することになると表明しています。一方のドイツでは、デジタル税を導入することによる国内自動車メーカーへの悪影響(貿易相手国からの報復措置など)を懸念し、導入に対して慎重姿勢を崩していません。EU加盟国で足並みが揃っていないことが明らかになりました。
導入の背景には、「デジタル単一市場(DSM)」の実現があるといいます。これはEU加盟国間で法律、制度、通信環境などを統一し、公正な競争ルールによってデジタル経済を成長させていこうというものです。実現すれば年間4150億ユーロ(約54兆円)もの利益と数十万の雇用を生み出すといいます。
現行の税制は付加価値税(VAT)の税率や税制が加盟国によって異なっており、それが域内の中小企業の事業拡大を阻害しているという意見もあります。域内の税制を整理するデジタル税の導入は、デジタル単一市場の実現に不可欠なのです。
ちなみに日本では、PEの定義の見直しについて2018年4月1日から改正法人税法が施行。倉庫などの場所もPEに該当するようになりました。しかしながら、日本と外国の間で締結された租税条約の規定のほうが国内法よりも優先するため、これが直ちに外国企業に適用されない場合があるといいます。
特に、米国との間には「日米租税条約」があり、GAFAのような企業にすぐに適用されるわけではありません。ただでさえ強硬姿勢を崩していない米国が軟化するとは思えず、それらIT企業が日本で得た事業所得に対して課税できないという問題は、今後も続くのではないかと思われます。
国境を越えて行われるビジネスが活発化していく中、デジタル税が今後、どんな方向へシフトしていくのか、GAFAはともすれば日本国民の生活にも影響を与えかねない事業規模なだけに気になるところです。データのじかんでも引き続き、注目していきたいと思います。
【参考記事】 ※1 欧州委、「デジタル税」売上高3%提案 IT大手に_日本経済新聞 ※2 欧州委員会、デジタル税の導入を提案|EY税理士法人 ※4 デジタル税 _ はやり言葉辞典 ※5 英、早期の国際合意なければ単独でデジタル課税導入も=財務相 _ ワールド _ ニュース速報 _ ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト ※6 EUデジタル税、独は慎重姿勢 仏は導入目指しサンセット条項提案 _ ロイター ※7 EU MAG デジタル単一市場の構築―次代を切り開くEUの成長戦略 ※8「デジタル課税」が巨大ネット企業を襲う日 _ 岐路に立つ日本の財政 _ 東洋経済オンライン
(安齋慎平)
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