マスクド・アナライズ氏に聞く
「プロレスに学ぶ、会社を変える突破力」

プロレスラーを彷彿とさせるマスク姿で、現場目線による鋭い語り口で情報を発信するマスクド・アナライズ氏。同氏は、『データ分析の大学』(エムディエヌコーポレーション)などデータ分析関連の著書を複数持ち、SNS での情報発信やメディアへの寄稿もしている、AIベンチャー出身のエバンジェリストだ。業界内で注目を集めるこのマスクマンは「データを使いこなせない人は、10年後に生き残れない。だが、スキルは磨くことができる。プロレスに学べることが多い」と指摘する。その神髄を聞いた。

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元気があればデータ分析もできる。関心を持ってもらうことが大切

――マスクド・アナライズさんと言えば、お名前の通り、謎のマスクマンでありながら、アナライズ(解析)などを通じて組織におけるデータ分析を支援するエバンジェリストでもあります。さらにプロレスとデータ分析がクロスするような新しい視点での情報発信もされています。その立ち位置やコンセプトはどのようなところから生まれたのでしょうか。

マスクド・アナライズ(以下、マスクド):私はもともと、AIやデータ分析を手がけるベンチャー企業に勤務していました。当時からお客様先で「社長がいきなり『AIで何かやれ』と指示を出して困っている」といった、笑えない話があちこちで起こっていました。この状況をDXなどのバズワード化しつつあった言葉が助長しており、本来の意味におけるAI活用やデータ分析を「伝えなくては」と思いました。

ただ、社名や名前を出すとやりにくいため、覆面レスラーの正体不明というキャラクター性をヒントにして、マスクをかぶったのです。子どものころから好きだったプロレスラーとしての姿なら、勇気も湧き、本音も言えます。そんな姿勢から「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれた時期もありました。

――実際、マスクドさんの率直な語り口に共感する方々も多いようです。現在、DXの隆盛により今までほとんどITと関わっていなかった企業も、AI活用やデータ分析に取り組もうとしています。そこで、情報の非対称が起きています。データ分析の専門家であれば、どのような取り組みにより何が生まれるのかが分かりますが、それが見えない方にとってはAIやデータ分析が何でもできる「魔法のつえ」に見えます。大きな予算を投入したのに、成果につながらなかったという失敗例も起きているようです。

マスクド:経営者や営業部門はITに詳しくない方も多いと思われます。だからといって、「ITは本業と関係ない」と、情報システム部門や外注先に丸投げしていては駄目。もっと関心を持つべきです。私が、プロレスを例にAIやデータ分析を語る理由も、ここにあります。プロレス)とかけ合わせることによって、業界外や専門外の人にも関心を持ってもらい、世間全体の問題として捉えてほしいと考えています。

プロレスは多様な団体が生まれたことで裾野が広がった

――マスクドさんが『データ分析の大学』を執筆されたのも、データ分析をより多くの人に知ってもらいたいという思いがあったからでしょうか。

マスクド:その通りです。私が業界内にいるからではなく、データを使いこなせない人材は、生き残れないと考えています。あらゆる産業で、データの収集と分析と活用がビジネスを成長させるために必須になります。そこで「分からない」「関係ない」と敬遠するのではなく、ぜひ自分の武器にしてほしいのです。

また、すでにデータ分析に携わる方々は、会社や業界、そして社会へと展開するリーダーシップをとってほしい。本書では、そのためのポイントなどについても紹介しています。キーワードは会社を救う「現代の“勇者”」になること、そして環境変化への対応です。

――プロレス業界でも、歴史を振り返ると1950年代の力道山選手に始まり、新日本プロレスのアントニオ猪木、全日本プロレスのジャイアント馬場など、数多くのヒーローを生み出してきました。一方で、1990年代には多くの団体が乱立しましたが、人気は低迷した時期もあった印象です。

マスクド:新日本プロレスと全日本プロレスの設立から、鶴藤長天(長州力、藤波辰爾、ジャンボ鶴田、天龍源一郎)と新たな選手が隆盛します。さらに新日本の闘魂三銃士(武藤敬司、橋本真也、蝶野正洋)、全日本のプロレス四天王(三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明)らがリードしていきます。しかし2000年代に入るとK-1やPRIDEなど総合格闘技の台頭でプロレス人気が下火になり、テレビ放送なども減りました。

ただ、現在ではDDTプロレスリング(以下、DDT)やドラゴンゲート(旧:闘龍門)など、2000年前後に旗揚げされた団体によって、新たなファンも獲得しています。特にDDTはサイバーエージェントグループの傘下として、エンタメ性の高い試合のみならず、さまざまな魅力を醸成しながら成長を遂げています。

――多様な団体が生まれたことで、プロレス業界の裾野が広がったということでしょうか。

マスクド:かつてのプロレスは、力道山が屈強な外国人レスラーを空手チョップで倒す姿に戦後の苦しい生活にあえぐ視聴者が普及し始めたテレビを通して歓喜する構図でした。現在ではテレビ中継に代わって動画配信が中心ですし、女性ファンも増えています。海外の団体で活躍する選手も増えて、世界的な人気を獲得しました。こうした変化は、昭和時代のプロレスからは考えられません。

企業のビジネスも同様だと思います。現状だけを鑑みて「ウチの会社では無理」「自分には出来ない」と立ち止まるのでなく、変化に対応して前例のないことに挑戦していくなど、裾野を広げることが大切です。特に企業においてAIやデータ分析を実現するには、必ず壁にぶつかります。ここで諦めるのではなく、「どうやって上司を説得するか」「説得のために必要なものは何か?」と、視点を変えながら行動すれば活路が見つかるでしょう。

プロレス界の常識を覆した獣神サンダー・ライガー

――プロレス界で、前例のないことや常識を覆した挑戦をした選手といえば、誰でしょうか。

マスクド:獣神サンダー・ライガー(2020年1月に引退)を挙げたいです。ライガーは高校時代にレスリングで国民体育大会に出場するほどの実力があり、プロレスラーになることを夢見ていました。しかし、当時のプロレスラーは高身長が絶対条件で、170センチ(公称)では身長が足りません。

ライガー選手が素晴らしいのは、そこで諦めず、挑戦したからです。単身でメキシコに渡り、その後、新日本プロレスに入団しました。さらにライガーは不利な身長をカバーするために、骨法による打撃技などを徹底的に磨きました。

データ分析に携わる人も、基礎となる知識だけでなく、自分なりの強みとなるような武器を持つことが大切です。ここでライガーは今まで格下扱いされていた他団体の選手を集めて、最強を決めるリーグ戦を主催します。こうして埋もれていた選手がスポットライトを浴びる機会となり、プロレス界全体が活性化しました。特に小柄なプロレスラーが活躍する場を創出した功績は大きいです。ビジネスにおいても一人のプレイヤーではなく、チームのまとめ役や引き立て役、あるいは部門や会社の壁を越えたコラボレーションを実現して新たな機会を生み出す役割などを担ってほしいと思います。

――ビジネス環境が大きく変化する中で、AIやデータ活用に関心を持つ企業も増えています。一方で、冒頭にマスクドさんが指摘されたように、下請け的な扱いをされたり、「上司や会社は変わらない」と嘆く人もいます。

マスクド:DXは「デジタル・トランスフォーメーション」なので変革は必要ですが、変革が目的化しては意味がありません。「データ分析で何かやれ」と言われたら、「なにを目的として分析するのか」「どんな成果を出せるのか」を見極めることが大切です。その上で、自社の成長につながると判断できれば自信をもって行動に出ましょう。

むろん、現状維持派による反発もあるでしょう。そこでは、新日本プロレスの棚橋弘至選手の行動が参考になります。棚橋選手はプロレス人気が低迷する中で、「愛してまーす」の決めセリフに仮面ライダーを模したポーズ、エアギターなどのパフォーマンスで、観客にアピールしました。当初は旧来のファンから罵声を浴びることもありましたが、次第に女性や子どもなど新たなファンを獲得していきました。

ビジネスにおいても、最初は妨害や部署間の足の引っ張り合いもあるでしょう。しかし、自分が中心となって賛同する仲間を集めて、上司の支援を取り付けるなど、会社を救う“現代の勇者”になるつもりで、一歩踏み出す勇気をもってほしいと思います。

自分がプロレスラーから勇気をもらったように、企業で闘う人を応援したい

――会社が変わらないならば、変わる会社に転職するという方法もありそうです。

マスクド:確かにそれも一つの方法でしょう。中邑真輔は新日本プロレスから、アメリカのWWEに移籍して活躍しています。しかし、人気選手であっても決して自身の身体能力だけでトップに上り詰めたのではありません。自身の見せ方や試合以外におけるアピール、メディア対応やSNS活用にも気を配っています。さらに大切なのは、自分の支持者を業界の内外で増やしたことです。

昨今で注目しているのは、新日本プロレスのグレート-O-カーンです。リング上では「愚民ども」と見下すヒール(悪者)ですが、リングの外では駅で不審者から女児を助けて話題なるだけでなく、被害者のみならず加害者に対しても配慮したコメント力で、器の大きさをうかがわせました。さらにプロレス以外の活動ではVTuber(バーチャルYouTuber)とのコラボなどで、今までにないファンを獲得しています。

ビジネスにおいても、「技術やメリットがあれば分かってくれる」ということはあり得ません。むしろ、技術よりも社内調整やコミュニケーションが大事な場面もあります。予算やスケジュール、社内文化や教育といった、技術以外の相手にどうやって闘うかを考えていきましょう。

――まずはさまざまな状況に応じて、一歩踏み出すことが大切だと。

マスクド:データ分析をはじめ、デジタル技術の利活用を企業のみから社会全体へ広めていくのが私の役割だと感じています。変化する時代に対抗して、真っ向勝負で闘える人材を一人でも増やしていきたい。これからも、活動を通じて多くの人の勇気を後押ししたいですね。


(敬称略)

 

意識低い系DXコンサルタント
マスクド・ アナライズ 氏
ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、記事や書籍の執筆で活躍する謎のマスクマン。執筆・寄稿歴はITmedia、ASCII.jp、Business Insider Japan、翔泳社など多数。著書に『データ分析の大学』(MdN)、『AI・データ分析プロジェクトのすべて』(技術評論社)、『未来IT図解 これからのデータサイエンスビジネス』(MdN)がある。
Twitter:@maskedanl

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100年に一度と言われるデジタルにおける大変革の真っ只中で、企業はどのように変わるべきでしょうか?私は自らも社内のデジタル化を推進しながら、顧客のAI・データサイエンスの導入を支援する中で、””変化する組織””を全身で受け止めてきました。さらにスタートアップから大企業におけるDXの仕掛け人に挑み、組織の変貌を成し遂げる裏側に迫ります。イベント当日はデジタルのワンダーランドで闘う皆様に、会社と組織を変える必殺技を伝授するスペシャルセッションとなります!

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(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣 PHOTO:Inoue Syuhei 企画・編集:野島光太郎)

 

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