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前回は、ウイングアーク1st東日本営業統括部が、データ活用により営業成績とメンバーのモチベーションアップに成功した話を紹介しました。部を率いる久我 温紀さんは、マネージャーになる前はずっと売上トップのスーパー営業マンでした。営業の極意やマネージャーとして大事なことを一体どのように学んできたのか? 今回は久我さんに、自身のキャリアを振り返ってもらいました。

お話をお伺いしたDataLover:久我 温紀(クガ アツキ)

ウイングアーク1st株式会社 営業・ソリューション本部 副本部長

2004年新卒入社。
法人向けソフトウェアの営業に従事し、新人賞、最年少トップセールス、4期連続トップセールス。その後、営業企画部門リーダー、事業推進責任者を担当。東日本営業統括部長を経て2017年9月より現職(営業・ソリューション本部 副本部長)営業改革に取り組み予算未達成部門の全てを達成部門へと導く。インサイドセールス導入、ワークスタイル変革、組織ステートメント設計など幅広い分野で活躍。

新入社員研修で伝説のスコアを残す

大学の経営学部経済学科を卒業し、ウイングアーク1stの前身である翼システムに入社しました。主に自動車整備工場向けのパッケージソフトを作っている会社だったんですが、ソフトを多く売るにはお客さんである整備工場に儲かってもらわないといけないということで、「カーコンビニ倶楽部」というフランチャイズの仕組みを作っていたんですよ。

当時の町の整備工場って個人事業主のおじさんがやっていて、店によっても日によってもサービスがまちまちでした。そのままではなかなかお客さんが来ないので、店構えも品質や価格も均一化して、信頼を得られる店を作っていこうという考えで始めたんだそうです。ソフトウェアの会社がお客さんのビジネスのためにそこまでやるってすごい! そう思って入社を決めました。

傘を売るためには傘を売ってはいけない

新入社員研修のときに、傘を売るという課題がありました。

チーム毎に割り当てられたエリアで、いくつか用意された商品の中からひとつ選んで売ってきなさいという課題を与えられるんです。数時間の間にどのチームが一番売れるかという競争だったんですけど、うちのチームは傘を選んで、40本という伝説のスコアを残して勝ちました。全部で30チームくらいあって、2位のチームが2~3本だったので、僕らのチームは圧倒的でした。人事部も「こんなの初めてだ」とびっくりしていましたね。

何故それだけ売れたのかというと、僕は最初に「売る」という考えで売ったら、多分ダメだなと思ったんです。押し売りって、無理やり売るからパワーもかかるでしょう?

だから「傘が欲しい人は誰なんだろう」と、最初に少しリサーチをして、傘に対する反応を見ていきました。そうしたら、僕らの持っている傘の中に人気のキャラクターの絵が付いた子ども用の傘があって、これを「お孫さんへのプレゼントに」と勧めたら喜ぶおじいちゃん、おばあちゃんがいる、という仮説ができたんです。

僕らの割り当てられたエリアは亀戸の商店街だったんですけど、年配の方がやっているお店だとか、皆さんが集まっている寄り合い所なんかに行ったら、一気に売れちゃって。

セールスって押し売りではなくてマーケティングが絶対必要。扱う商材と、それを欲しい人たちをマッチングさせるだけでかなり売れるということに、その時に気づいたんですよね。

“使えない新人”がデータ分析の力でトップ営業に

最初に配属されたのは情報企画事業部というところで、ソフトウェアの営業をやりました。ITは全然分からなかったのですが、ITの技術者の方を相手にする商材だったので技術が分からないとダメだと、会社にVBA(Visual Basic for Applications:マイクロソフト Officeアプリケーション用のプログラミング言語)のソフトを買ってもらい、本を見ながらアプリケーションを作ってみたりしました。Webのシステムが流行り始めた頃でもあったので、HTMLも勉強しましたね。

同期が訪問件数を増やそうと外に出ているとき、僕は勉強をしたり、当時からデータ分析が好きだったのでデータを見たり、結構会社にいる時間が長かったんです。だから最初は怒られましたよ。会議も話の内容が難しすぎてよく分からないから寝ちゃうこともあって、「こいつは一番使えない」と思われてましたね(笑)。

でもね、訪問件数を増やすことが目的じゃないわけです。売上を上げなきゃいけないんだよなと思って、最初の頃に電話で入ってくる問い合わせの件数と内容を分析しました。

受注につながる問い合わせが一番多く入るのが何曜日か調べてみると、月曜日と金曜日が圧倒的に多いと分かりました。如実に違うんですよ。考えてみるとすごく簡単で、やらなきゃいけない仕事を、多くの人は週の最後にまとめてやるか、週明けたらすぐにやろうと考えるか、どちらかなんです。問い合わせないといけない状況のお客様は月・金に動く。僕もそうだし、心理的に分かるなと。それからは、すごく効率よく見込みの高いお客様を取れるようになって。月曜日と金曜日はずっと会社にいて、みんなが外に出ている間に来る問い合わせを全部自分が率先して対応しました。そうしたら、2年目には同期の売上を全部足しても到達しないぐらい、売れるようになりました。

会社にいて電話が鳴らない時は、お客さん先に行った時に使うヒアリングシートや資料を作るなどしていましたね。VBAを勉強したので、Accessを使って自分でSFA(営業支援ツール)のようなものも作りました。

営業って、その年の予算を達成したらおしまいじゃなくて、今期が終わったら休みなく次の期が始まるんですよね。勝ち続けるには、今から来年の売上も見越して案件を管理していくことが必須です。でも、その頃きちんと案件管理をしている人は少なかった。自分で作ったツールをもっと簡易的なExcel表にして部下に渡すなどもしてみましたが、なかなか使ってくれなかったですね。全社的には2006年にSFAを導入し、その後MAPPA(※)を使うようになって、やっとみんなが情報を入力するようになりました。

(※現在久我さんの東日本営業統括部で利用している営業ダッシュボード「MAPPA」については、前回の記事/営業部門のデータを“真っ裸”にしたら 全員のモチベーションも成績も上がった話

多くの営業担当者は、月のノルマを達成するために月末に向けて売上を伸ばしていく。しかし久我さんは、若手の頃から月初に売上が上がるように調整し、翌月以降の売上の仕込みに注力するようにしていた。現在はそのスタイルを自部門のメンバーにも根付かせようとしている。

飽くなき成長を求める原動力

新人賞やトップセールス賞を毎年いただいてはいましたけど、特に最初の頃は毎日いろんな壁にぶち当たっていました。

例えば、お客さんが「これができたら買ってあげる」と言うので、AccessとVBAでその要望をかなえる簡単なアプリケーションを作ったんです。でも、買ってくれなかった。その時は「ひどいな」と思いましたけど、そういう経験を経て、どういうお客さんだと買ってくれないか、ということも分かるようになりました。

あと、案件数が多くなり忙しくて、相対的に緊急度が低いお客さんのことを待たせることが常習化してしまった時に、すごく怒ってくれたお客さんがいました。「久我さんはたくさん案件を持ってるかもしれないけど、僕にとって窓口は久我さんしかいないんだよ。対応してくれないと、僕の仕事が全部止まるんだよ」と。そんな風に怒ってくれる人ってなかなかいないので、とてもありがたかったですね。

とにかくたくさん動いて、経験しないと分からないことがいっぱいあるんですよね。理論はただの理論です。それをちゃんと自分で身に付けるには、やらない限り絶対無理だと思います。

壁にぶち当たりながらもずっとやってきたのは、もっとパフォーマンスを出せる人間になりたいと思い続けてきたからです。僕にとって「働く」というのは、人間にとってのすごく自然な行為なんですよ。原始時代にマンモスを追いかけていたのと同じで、生きるためには経済活動が必要ですから。そして、ただ働くんじゃなくて、仕事を通じて自分や会社、そして人類が進歩していくのが理想だなと。会社の中で一番になりたいとかではなく、とにかく昨日よりもパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいいんだろう、そんなことを考えながらやってきています。

あとは、単純に楽しいんです。ちょっとしたことでも、なにか新しいものを生み出せたりするとすごく嬉しい。状況は常に変わって、次々にやってくる難しいことを乗り越えていくのが、終わりのないゲームみたいですごく面白いんですね。

本当の意味での「働きやすい環境」を作りたい

今、仕事が楽しいと思える理由には、営業と開発が一緒に良いものを作っていくという、ウイングアークの文化もあると思います。

入社1~2年目の頃、開発は別の会社でやっていたんですけど、その会社の社長さんが僕みたいな若造の話をちゃんと聞いてくれました。「お客さんがこう言ってるから、こんな機能があった方がいい」と伝えると、さらに上の提案をしてくれるんです。「久我、お客さんの言うことは分かる。だけど、それじゃダメなんだよ。こういうことが起きる。だからこういうふうにした方がいいんだ」と。学ぶことがたくさんありました。こういう開発と営業の関係性は、今でも受け継がれていて、開発の担当はすごく現場に来てくれて、営業ももの作りに参加できているという喜びを感じられるんです。

振り返ってみると、僕は営業というよりも事業の成長に興味を持ってやってきたんですよね。営業は会社の事業を引っ張るためのトップラインを作る重要な役割であり、会社の未来を創る仕事です。営業のプレイヤーとマネージャーというのは、事業を引っ張っていくための役割の違いでしかないので、マネージャーになったときもモチベーションに変化はありませんでした。今のメンバーにも、なぜ営業が必要なのか、全体像の中で把握してほしいと、よく言っています。自分たちのプロジェクトを助けてくれる社内のメンバーがいて、お客さんがいて、そのお客さんの先にさらにお客さんがいて――、そう意識すると仕事が面白くなるし、その好循環を止めずにより良くしたいと思いますよね。

最近では、会社の働き方改革の企画の骨子にも携わりました。「働きやすい環境を作る」と言いますけど、ラクな環境を与えるというのは違うと思うんです。本当にパフォーマンスを発揮したい人たちが思いきり力を出しやすい環境、それこそが「働きやすい環境」だから、それを作ろう、という提案をしました。

例えば女性の場合、出産や子育てで時間をフルに使えないときもあるかもしれません。でも、それで能力が高い人を失ってしまうのはあまりにももったいない。そういう人が力を発揮できるようにもっていくのが合理的です。

この会社で働いていてとても楽しいんですけど、僕の理想とする状態は、まだ実現できていない。もっと可能性を引き出していきたいと思っています。

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取材・TEXT:やつづかえり PHOTO:Syuhei Inoue

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