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レグテックとは? スプテックとの違いや活用可能性を今のうちに知っておこう!

         

FinTechやFoodTechなど、〇〇Tech、という言葉を最近よく耳にするようになりました。既存の分野とテクノロジーを掛け合わせて作られたこれらの言葉はまとめてX-tech(クロステック)と呼ばれています。そして、最近時折その新バージョンとしてレグテックという言葉を見かけるようになりました。このレグテック(RegTech)とは「レギュレーション(Reguration)×テクノロジー(Technology)」を意味する「X-tech」用語の一つです。「規制(レギュレーション)」という行政、企業、個人すべてに影響する概念をテクノロジーによって刷新するレグテック。社会全体の生産性を高めると期待されていますが、日本では他国に比べて市場が小さいことも指摘されています。また、2015年ごろに生まれた新しい言葉ということもあり、まだよく知らない方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、レグテックを基礎から解説! その適用される業務やスプテックとの違い、発展する可能性についてご紹介します。

金融規制を背景に生まれたレグテック その活用可能性は?

レグテックはそもそも、リーマンショックを引き金とした2008年の金融危機を背景に欧米で金融規制が厳格化されたこと、また企業の社会的責任(CSR)にそれ以前から注目が集まってきていたことなどを背景に、2015年に欧米で生まれました。

2015年に11月に英国金融行為監督機構(FCA)が公開した「Call for Input: Supporting the development and adoption of RegTech」には、金融危機以降、より多くの報告義務(reporting requirements)と、より高い規制基準(regulatory standards)に対応しなければならなくなったことからレグテックへの活用支援についての意見を求める旨が記載されています。

金融分野におけるレグテックの活用可能性としては、以下のようなものが挙げられます。

・取引先企業や個人のプロファイルに関わるデータ収集やAIによる自動スコアリング
・社内外へのコンプライアンス関連のレポーティングにまつわるデータ収集やレポートの自動作成
・金融規制の変更にまつわる情報収集及び、ガイダンスへの反映指示
・取引データを基にしたマネーロンダリングの感知

しかし、規制が存在するのは金融分野だけではありません。例えば、保険分野では保険会社から監督機関へのレポート作成支援や、不正請求の検知などでレグテックの活用が行われています。

また、法律×テクノロジーのLegalTech(リーガルテック)分野で行われるリーガルリサーチや契約書レビュー・ドラフティングもレグテックと重なる部分が大きいでしょう。製造業界の省エネ法への対応や検査、予知保全にもレグテックは関わってきます。

すなわち、規制あるところにレグテックの可能性あり。むしろ今後金融分野外にもレグテックの可能性はどんどん広がっていくはずです。

レグテックとスプテックの違いは「規制を受ける側か監督する側か」

レグテックについて調べていくと「スプテック(SupTech)or サプテック」という言葉にもぶつかることになるはずです。

スプテックとは、「監督(Supervisory)×テクノロジー(Technology)」で構成された言葉であり、規制を監督・監査する側がテクノロジーを用いて業務を効率化するために用いるテクノロジーを指します。

スプテックの活用可能性は、例えば以下の通り。

・企業や金融機関の取引データの自動収集・監査
・市場モニタリングによる市場操作やインサイダー取引の検知
・国ごとの税制の違いを利用した租税回避の監視・対策

金融庁はスプテックの実現を見据え、DX人材の登用やイベント・ハッカソンの開催に取り組んでいることがこれまでに報道されています。また、経済産業省は2021年に取りまとめた「Society5.0」実現に向けての報告書「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」の中で、全世界で一日当たり217件に上る法規制の変化政策目標の変化に対応するためレグテック/スプテックの社会実装が重要であることを取り上げています。同資料でレグテック/スプテックの具体的なソリューションのうち主要なセグメントとして挙げられたのは以下の5つでした。

 セグメント要するにどういうこと?
1プロファイリングデューデリジェンス(ID管理・コントロール)ブロックチェーンや生体認証を活用し、複数ソースから個人、企業のプロファイルを実施
2レポーティング・ダッシュボードAPIやRPAを活用し、利用者のデータの収集から分析、レポーティングまでを自動化。規制当局は自動で収集し、分析、フィードバック
3リスクアナリティクス(リスクマネジメント)APIやビッグデータを用いて金融事業者内部の不正を予測、発見
4ダイナミックコンプライアンスAIやAPIにより、規制変更の自動収集、リアルタイムのモニタリングから反映指示まで
5市場モニタリング(トランザクションモニタリング)AI、API、RPA、ブロックチェーンを用いて金融事業者は取扱商品やサービス、利用者などについての情報を収集。規制当局も同様に取引データをモニタリング

参考:GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて┃経済産業省

レグテックの活用にあたって知っておきたい「マシンリーダブル」と「規制のサンドボックス」

2020年が日本のレグテック元年という声もあり、今後レグテックの活用が伸長していく未来はほぼ確実に訪れるでしょう。
それに向けて知っておきたいキーワードを2つピックアップしました。

マシンリーダブル


機械が読み取りやすいようデジタル化・構造化してデータやコンテンツを作成することを意味します。レグテックを進めるためには、規制やレポートはマシンリーダブルであることが求められます。AIやRPAが活用しやすいよう人間の側から歩み寄ることがX-techの一つのコツなのです。

前述のFCAや米イングランド銀行(BoE)では、マシンリーダブルな規制、機械に執行可能な規制の実現に向けた取り組みが進められているといいます。

規制のサンドボックス


期間や人員を限定したうえで、既存の規制を緩和する制度・仕組みを「規制のサンドボックス(レギュラトリーサンドボックス)」といいます。日本でも2018年6月に日本版規制のサンドボックス制度が創設され、2021年6月に産業競争力強化法に規定され、恒久化されました。

レグテックは規制を管理・報告するだけでなく、AFIN(ASEAN Financial Innovation Network)が立ち上げたAPIX(API Exchange)のように、Fintech企業と金融機関のマッチングを助け、クラウド上までPoCまで行えるようにすることで、イノベーションを促進することにも貢献しています。

終わりに


規制にまつわる業務をテクノロジーで刷新するレグテックについてご紹介しました。規制という自由な活動に制限を加える概念を取り扱っている分、ほかのX-techに比べてややこしく感じられたかもしれません。

しかし、こうした複雑かつ厳密なデータの処理こそ、人間ではなくテクノロジーに仕事を行わせる意味があるはずなのです。

【参考資料】
・EY Japan (編集), 日本経済新聞社 SUM事務局 (編集) 『レグテック・イノベーション ダイナミックに新たなるDX社会を創造する (日本経済新聞出版) Kindle版』日経BP、2021
・Call for Input: Supporting the development and adoption of RegTech┃FCA
・GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて┃経済産業省
・長島・大野・常松法律事務所 (著), MNTSQ株式会社 (著) 『LegalTech Kindle』金融財政事情研究会、2020
・新技術等実証制度(プロジェクト型規制のサンドボックス制度)について┃内閣官房 成長戦略会議事務局(規制のサンドボックス 政府一元的窓口)

(宮田文机)

 
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