デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、データやデジタル技術を活用して企業のビジネスモデル、業務、プロセス、組織などを改めることです。
DXの場合、従来の慣習や常識にとらわれないドラスティックな取り組みを必要とするため、多くの企業は単なる“改め”ではなく、経営戦略上の“変革”や“改革”として取り組んでいます。
そんなDXも企業にとっての関心から実践の段階へと突入し始めています。
最近では、企業がDXに取り組みやすくするよう「守りのDX」や「攻めのDX」で分類し、DXのスタイル、テーマ、内容を明確化したり、フレームワークを定義したりする動きが進んでいます。
「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」実施した株式会社NTTデータ研究所は、「取り組みテーマ」という設問で以下を選択肢とし、A~Cまでを「攻めのDX」、D~Fまでを「守りのDX」に区分けしています。
「攻めのDX」と「守りのDX」との大きな違いは、DX実践のターゲットにあり、「攻めのDX」は「ステークホルダー」、「守りのDX」は「自社」に向けた改革・変革にしている点にあります。
その次の違いは目的であり、「攻めのDX」は「競争力強化」、「守りのDX」は「業務効率化」としています。
難易度はDXの影響対象の大きさに依存することになりますので、必然的に「攻めのDX」の方が達成は困難になります。
「守りのDX」は自社に向けた変革であり、難易度を易しい順に並べた場合、以下の実現が到達点になります。
これらはまず、デジタル化やデータが活用できる環境を整えることが必要不可欠で、デジタイゼーションに取り組む必要があります。
デジタイゼーションとは、紙の帳票を電子化したり、データの集計を自動で行ったりする“デジタル化”ことです。
様々な情報がデジタル化されることで検索・集計・分析が人手からITツールやデータ基盤に代替され、効率や生産性が向上するようになります。
その次に、
に取り組むのが一般的な守りのDXの流れになります。
一方、「攻めのDX」は顧客やステークホルダーなど外側に向けた変革であり、難易度を易しい順に並べた場合の到達点は以下になります。
これらはSFA(営業支援)やCRM(顧客関係管理)やMA(マーケティング自動化)といったデータを活用するITツールやシステムを駆使し、顧客や市場のニーズを見出しつつ、販路や集客を拡大させ売上や企業価値を高めていきます。
最終的にはまだ世の中にない製品やサービスを生み出し、それらをビジネスにすること、できるようにすることが到達点になりますが、それには企業全体のインテリジェンス化やイノベーションが起こせる士気の向上なども必要になります。
「攻めのDX」は、デジタイゼーションはもちろん、高度なデータ活用が浸透していなければ実践は困難です。
そのため、現状、多くの企業は難易度が易しく、また「攻めのDX」の土台にもなる「守りのDX」に注力しています。
DXは目的であるため、それを達成させるには、手段を必要とします。
それには、”攻め”と”守り”を使い分けた手段であるITへの投資が必要不可欠です。
具体的にはツールやシステムを始めるとするITの導入なのですが、DXに“攻め”と“守り”があるようにIT投資にも“攻め”と“守り”があり、電子情報技術産業協会(JEITA)が集計したアンケート結果では、理由や用途で以下のように分類しています。
またIT調査会社のガートナー社は、情報システムをモード1=守り、モード2=攻めで区分し、両者の共存・連携であるバイモーダルの必要性を提唱しています。
他にも2011年に「キャズム」の著者、Geoffrey A. Mooreが出版した「Systems of Engagement and The Future of Enterprise IT」では、システムをSoR(System of Record )=守り、SoE(Systems of Engagement)=攻めで大別しています。
株式会社NTTデータ研究所による「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」の「テーマ別の取り組み状況」で「取り組んでいる」と回答した企業の比率は、
であり、現状、守りのDXへの取り組みが中心となっています。
引用元:「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報~日本企業のDXへの取り組み実態、成功企業の特徴について~ | NTTデータ経営研究所(nttdata-strategy.com)
上位2テーマはITツールを導入し、それに沿う、即ち、データやツールが人や組織を動かすので、ある程度、自然に無理なくDXが推進されます。
それ以下、特に攻めのDXの3テーマでは、最適な分析、判断、決断、行動の選択肢を導き出さなければなりません。
これには人や組織がアクティブにデータと向き合わなければ、到底、実践はできません。
守りのDXと攻めのDXとの間の障壁は、データに対しての受身な姿勢や人や組織の能動性の欠落にあると言えます。
情報戦略を真に理解し、企業全体をけん引できるCIO・CDOの設置、データ活用の民主化を担うデータサイエンティストの育成といった組織力や人材の強化が守りのDXの早期成熟に繋がります。
「攻めのDX」の中心となるテーマは、既存の商品・サービスの高度化や提供価値、顧客接点の向上・改革などですが、これらを実現するには源泉となる“データ”が必要不可欠です。
例えば、顧客に提供している製品、サービスの状況がデータ化されていれば、ライフサイクルを知ることができ、アフターサービスを創作することでサービス型のビジネスが展開できるようになります。
これには守りのDXを成熟させ、蓄積したデータが活用できる状況にする必要があります。
「攻めのDX」はドラスティックな取り組みのため、完全な成功を前提とすることはナンセンスで、それ相応のリスクは覚悟しなければなりません。
失敗で課されるペナルティの厳しさに恐れ、担当者や組織が躊躇してしまうことが攻めのDXの障壁になってしまっている組織も少なくはありません。
またDXの攻めへは守りと違い、全社一斉にシフトする必要はありません。
取り組みの対象や規模を限定し、トライアルという位置づけで“小さな失敗”を許容し、それを積み重ねることで多くの企業は、攻めのDXへの活路が見出しています。
「小さな失敗」の積み重ねが企業のバネとなり、「成功」へと繋がるようになります。
企業がこういった成功を体験すると、従業員のモチベーションや組織の士気の向上し、また外部やステークホルダーからも注目されるようになります。
成功事例のプロセスやアプローチは、派生や応用が利くケースが多く、これらを有効活用する上でも、デジタル化とデータ活用は非常に重要な役割を担ってくれます。
今回は攻めと守りのDXついて紹介させて頂きましたが、両者の違い、そして守りと攻めとの間のハードルについてご理解頂けたでしょうか?
それでは最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。
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