マスクド・アナライズ氏は“自称”AIベンチャーでの経験をもとに情報発信する意識低い系DXコンサルタント(自称)のマスクマン。IT media、ASCIIなど数々のメディアでAI・データ活用に関する情報を発信しており、『未来IT図解 これからのデータサイエンスビジネス』(JX通信社マーケティング責任者・作家の松本健太郎氏との共著)などの書籍も執筆しています。
そんな同氏が2021年末にリリースした最新著書が『データ分析の大学 10年先も揺るがないビジネススキルを身につける』。本記事ではブックレビューを通して、その内容をさらに生かすためのポイントをご紹介します!
『データ分析の大学 10年先も揺るがないビジネススキルを身につける』(以下、『データ分析の大学』)は、“データ分析初心者”を対象にした書籍です。どのくらい初心者向けかというと、「Excelをデータ分析ツールとして正しく使う方法」から丁寧に説明されるくらい。
本書を読んでも、年収1,000万円以上稼ぐGAFAのデータサイエンティストに転職したり、フリーランスや起業で成功したり、ましてやFIRE(早期リタイア)することなどは不可能です。
※引用元:マスクド・アナライズ (著) 『データ分析の大学 10年先も揺るがないビジネススキルを身につける Kindle版』エムディエヌコーポレーション(MdN)、2021、ロケーション243の7
序文からこのように、『データ分析の大学』に甘い夢を抱くことは否定されます。本書のテーマは、あくまで“フツーの人”が少し“データ分析”を身につけて日々の仕事の効率を高め、そこからデータ活用の世界へ入門していくまでをサポートすること。
いわば、“データのことが全然わからないけど「勉強したい」と思っている人が知っておきたいこと全部入り本”といえるでしょう。
第1章「なぜ、データ分析は重要か?」でデータ分析を本当に役立てるためのマインドセットを、第2章「データ分析を学ぶ」でデータ分析の学習方法を把握したうえで、やっと実践編(第3章「データ分析を実践する」)に入ることになります。
このように堅実なアプローチで学習をはじめられるのは、初学者にとって大いにメリットをもたらすでしょう。
ここまでの内容を読んで「そんなことでいいの? もっとPythonとかRとか駆使して華麗にデータ活用したいんだけど……」と思った方もいるかもしれません。
しかし、経済産業省の資料『我が国におけるIT人材の動向』では、 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2020年に公表した資料「Reスキル・人材流動の実態調査及び促進策検討」を引用し、データサイエンスやAI、IoT等を担当する先端IT従事者(=デジタル人材)と先端IT非従事者(=従来型人材)との間に大きなギャップが存在するという問題が取り上げられています。
※引用元:我が国におけるIT人材の動向┃経済産業省、18枚目のスライド
上記の表を見ると、従来型人材はデータサイエンス分野の業務を「過去一度も担当したことがない」の割合が100%。その結果、「スキルを使う予定がないから」と自主的な勉強やスキルアップに向ける意欲・時間にも大きな格差が生じていることもデータから見て取れます。
※引用元:我が国におけるIT人材の動向┃経済産業省、20枚目のスライド
また、日本では米国、カナダなど欧米各国と比べてIT人材が情報通信関連の企業に集中する傾向があるとのこと。
もしもあなたが「従来型人材」ならば、学習を開始するだけでほかのビジネスパーソンに差をつけられることがわかります。
そして、IPAと一般社団法人データサイエンティスト協会が共同刊行した『データサイエンティストのためのスキルチェックリスト/タスクリスト概説』では、データサイエンティストに必要な能力のスキルセットとして以下の3つが挙げられています。
・ビジネス力:課題背景を理解し、ビジネス課題を整理・解決に導く力
・データサイエンス力:情報処理・人工知能・統計学などの情報科学系の知恵を理解し使う力
・データエンジニアリング力:データサイエンスを意味のある形として扱えるようにして、実装・運用する力
※引用元:データサイエンティストのためのスキルチェックリスト/タスクリスト概説┃IPA、一般社団法人データサイエンティスト協会
このうち、プログラミングスキルやソフトの知識が該当するのは「データエンジニアリング力」のみ。従来型人材がデータ分析スキルを業務で生かす機会は自分で生み出す必要があるため、ビジネス力・データサイエンス力もまんべんなく伸ばすためにも基礎から着実に納めることが重要なのです。
2025年の大学入試共通テストから国立大受験の必要科目として「情報」が加えられるなど、IT人材の育成に政府は本腰を入れて取り組んできています。
それに伴って初学者がデータ分析スキルを伸ばすための無料ツールが増えてきているのはうれしいポイント。
例えば、機械判読可能な(=データ分析にそのまま使える)データをExcel形式で作成する方法をまとめた資料が、総務省統計局によって公開されています。
「1セル1データとする」「セル結合は使わない」「データの単位を記載する」などデータの準備で押さえるべきポイントが下図のように実例付きでまとめられているのが同資料。
※引用元:統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法┃総務省
『データ分析』の大学でも実際にこの資料をもとにExcelデータの不備についての解説が行われています。また、巻末ではおすすめ書籍や動画(YouTubeチャンネルなど)、コミュニティ、参考になるブログなど、マスクド・アナライズ氏によってキュレーションされた教材がまとめられています。
このように同書を起点に学習のネットワークを広げていくことが、その価値を何倍にも高めます。1~2日あればサクッと読める内容ですから、完読後は何か一つでも関連資料にアクセスして学習の連鎖をつくりましょう!
『データ分析の大学』の副題は「10年先も揺るがないビジネススキルを身につける」。
第4章では、「データ分析で会社が変わる」と題し、データ分析を組織の成果につなげるためのビジネススキルが記載されています。
自社にとっての10年先も、自身にとっての10年先も「揺るがない」ものとできるようなデータ分析スキルを着実に身に着けるための第一歩として同書を、またデータのじかんの記事を利用していきましょう!
【参考資料】
・マスクド・アナライズ (著) 『データ分析の大学 10年先も揺るがないビジネススキルを身につける Kindle版』エムディエヌコーポレーション(MdN)、2021
・我が国におけるIT人材の動向┃経済産業省
・データサイエンティストのためのスキルチェックリスト/タスクリスト概説┃IPA、一般社団法人データサイエンティスト協会
・統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法┃総務省
(宮田文机)
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