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データ活用に苦慮する日本企業

企業の経営において、データの収集と活用の重要性は理解しているものの、それを積極的に活用できている企業は、現状、極少数に留まっているのが実情です。

ITの登場はビジネスの在り方に大きな変革をもたらしたものの、それは従来の業務プロセスをベースにした効率やコストの改善の範囲内に留まっています。

基幹システムの導入により、経営に必要なデータは蓄積しているものの、

 ・経営判断のエビデンスに値する役割を果たせない
 ・適切な判断材料が得られたとしても、いざ行動に移せない

 といった問題に多くの企業が悩まされています。

企業経営者の多くがデータに対しパッシブ(受身)な姿勢で向き合っている傾向があり、データ活用が課題、問題の抽出や改善策の実践のトリガー(きっかけ)としての有用性が理解されていないことが推測されます。

総資経常利益率(ROA)や自己資本当期純利益率(ROE)といった指標は企業の経営状況が良い、悪いといったことは示してくれますが、具体的にどのようなアクション(行動)を実践すれば良いか?といったことまでは示してくれません。

経営のテーマで適切な判断結果を得るためには、どのようなデータを用いれば、適切な解を導き出してくれるのか?といったアクティブ(自発)な姿勢で向き合わなければなりません。

またそれ以前に、従来型の勘や経験に基づく経営方針から脱却できない経営者もまだまだ多く、日本企業の多くはデータの活用に苦慮しているのが実情です。

企業経営におけるデータドリブンとは?

データドリブン(Data Driven)とは、経験や勘などではなく、様々な種類と膨大な量の情報を蓄積するビックデータとアルゴリムによって処理された分析結果を基に、企業運営の意識決定や課題解決などを行う次世代型の業務プロセスです。

データドリブンは大きく分けて、以下に示す3つの柱によって成り立っています。

○データの収集

経営の意思決定に必要なデータをクラウド上に配置されたデータサーバーにビックデータとして蓄積します。ビックデータに蓄積するデータは、各部門の業務システムやIoT、Webサーバー、外部サービスなどから取得します。

○データの分析

ビックデータに蓄積した定量的なデータの時間的変化や他のデータとの関連性などをアルゴリズムにて計算します。ランキング(順位)、最大値、最小値といった定量的なデータ、視覚的に理解できるグラフや図といった定性的なデータを分析結果として導き出します。

○意思決定

データの分析結果を元に具体的な施策や対策、結論などを決定します。分析結果ではいくつかの選択肢が抽出され、このプロセスでは、アルゴリズムやAIなどでは判断が難しい内容をトレードオフなどで判断します。

データドリブン経営のプロセス

前説では、データドリブンは大きく分けて3つの柱で成り立っていることを紹介しましたが、実際に経営の現場ではどのような手順でこれらをプロセスとして実践しているのでしょうか?

ここでは企業が経営でデータドリブンを実践するプロセスについて紹介したいと思います。

○プロセス(1):テーマの模索

経営で判断すべきテーマを抽象度高いレベルで模索します。
テーマは、新規事業・新商品の企画、顧客ターゲットの特定・模索など様々で、さらにブラッシュアップを行う事で自社の強み・弱み、組織体制といった抽象度の低いテーマへとブレークダウンしていきます。必ずしも企業の経営全体に関わるようなテーマである必要はなく、マーケティング部門といった特定の部署の現場の悩みや要望をテーマにしても構いません。

○プロセス(2):蓄積すべきデータ項目を決める

データドリブンのテーマに沿って蓄積すべきデータの項目を考えます。
例えば、新規事業の模索がテーマであれば、自社の強みや所有技術、実績などを明確にしなければ、出来る事業が何なのか?を模索することができません。
新規事業の需要や販売網なども押さえておく必要があり、Web上で流れるリード(見込み客)の動向も貴重なデータになります。
世の中に全くない製品やサービスなのか?もしくは新規参入なのか?で必要なデータやその入手経路も変わってきます。
データドリブンでは、統計的な観点でデータを分析するので、それなりのデータ量を蓄積しなければなりません。これには期間も要するので、どのようなデータを蓄積すべきか?の検討はデータドリブンではとても重要です。

○プロセス(3):蓄積したデータを分析する

蓄積したビックデータをどう分析するか?については、実はプロセス㈰や㈪の検討で実は殆ど決まってしまっています。
テーマから逆算するとどういった分析結果が必要なのか?といったことも併せて検討しなければならないからです。
この段階では、ビックデータのアルゴリズムによる処理、分析結果の精査や検証がメインになります。ただこのプロセスでは、今まで全く関心がなかったことや新たな事実、問題を発見することもあります。場合によってはプロセス㈰、もしくは㈪にフィードバックして分析結果の精度を高める施策を行う場合があります。

○プロセス(4):分析結果から取るべき行動を選択する。

データドリブンで得た分析結果は、<YES> <NO>といった選択肢ではなく、複数の選択肢の組み合わせで表されることが多く、このプロセスでは、メリット、デメリット、リスクなども配慮して取るべき行動を選択します。
場合によっては最適解なしといった分析結果に至る場合もありますが、これはそもそも
・取り扱うべきテーマではなかった
・自社にとってリスクが高い
といった結論を意味することもあります。
このような結論は、データドリブンに有用性がないと勘違いされる方もいらっしゃいますが、実はそうではなく、誤った経営判断から企業を守ることに繋がっているのです。

経験や勘に加え、<何かしなければならい>といった従来の風習の経営では、誤った経営判断が見過ごされ、損失を招いてしまうケースが少なくはないのです。
またデータドリブンでは、信憑性の高いデータに基づいた意思決定を経ているため、大多数が同意できるエビデンスを備えています。

○プロセス(5):行動の実践

意思決定に従って行動を実践に移します。
このプロセスは決まったことを実践するだけですが、データドリブンで得た分析結果と現場での実情に解離があった場合は、前プロセスへのフィードバックが必要になります。
また行動を実践に移す際の運用ルールも重要で現場担当者が滞りなく進められることでデータドリブンのプロセスが成立したと言えます。

企業経営でデータドリブンを定着させるには?

データドリブンは従来の業務プロセスと違い、ビジネスそのものへの向き合い方が大きく異なります。
そのため、
 
・経営でデータドリブンを活用するシーンがイメージできない
・データにどう向き合えば良いのかわからない
・インサイドなビジネススタンスが理解できない
 
といったことが課題となり、経営にデータドリブンが定着できている企業は、まだまだ少数派に至っています。

(1)経営陣は率先してデータドリブン経営を学ぶべき

データ収集や分析といった膨大な作業の負担を軽減し、その分、企画の構想、問題・課題の抽出などに注力するのがデータドリブンの活用スタイルです。
即ち、手を使う作業はコンピュータに任せ、今まで以上に思考を使い、ビジネスの質を向上させることがデータドリブンの本質なのです。
ただ日本の企業の多くはいわゆる大企業病といった病に侵されており、やってみせるという人材育成がいつの間にかやってみせろというスタイルに変わってしまい、自らが自発的にビジネスに向き合う姿勢が不慣れになってしまっています。

当然、データドリブンのような概念が難しい業務プロセスは、やってみせたところで正しく理解できる経営者は極めて少なく、まずは経営陣がその有用性をしっかり理解しなければなりません。

(2)データ活用を徹底するリーダーの存在

データドリブンの定着には、情報機器、ツール、インフラといった設備の導入だけでなく、それを使う現場の人たちの変革も必要になります。
データドリブンによる業務プロセスの導入の際は、当面の間、従来の業務プロセスも並行しながら、業務は進めなければなりません。
当然その間の従業員への負担は高くなり、慣れないデータドリブンの業務プロセスより、慣れ親しんだ従来の業務プロセスをついつい選択してしまう傾向があります。
こういった状況を招かないようにするには、データドリブンの活用を徹底的に指導する現場リーダーの存在が必要不可欠です。
従来のプロセスで業務を行わざるを得ない人とデータドリブンのプロセスで業務を行う人とを分別し、まずは特定の領域のみデータ活用を徹底させ、徐々に浸透させる施策が有用です。

いきなり全ての業務にデータドリブンを導入すると、部署全体が回らなるといったリスクに見舞われることになります。

(3)コミュニケーションも重要

データドリブンはデータ入力や分析といった作業の負担が減る分、経営に必要な企画やアイディア、蓄積に必要なデータの項目などを検討する業務が増えることを招きます。

当然、このような業務はプレゼンなどを行なってエビデンスを示し、周囲から同意を得るプロセスを踏まなければなりません。

意外かもしれませんが、データドリブンでは、業務を進める上で今まで以上に質の高いコミュニケーションが求められるようになります。

(4)データサイエンスの知見

どのようなデータを蓄積し、それをどう分析するか?といったことは実はかなり高いスキルや経験、感性が求められます。特に経営では自社のビジネスに対し、広い視野を持って向き合わなければならず、それにはデータサイエンスの知見は必要不可欠です。
データサイエンスの知見は、データの入手経路・方法、分析方法など様々な活動において組織でのデータドリブンの定着を大幅に加速してくれます。

(5)ITサービス・ツールの導入・利用

データドリブンを実現するためのITサービスやツールには、可視化・意思決定をサポート、アシストするテンプレートや共有・連携・レポーティング機能、データサイエンスの分析機能などが盛り込まれています。
上述の(1)〜(4)をすぐに準備・実現することは非常に困難です。

このようなITサービス・ツールを利用することで、データ活用の障壁を下げ、また省力で効果的に進められるようになるので、データを活用する文化が根付きやすくなります。

データドリブンでは、企業の目的・用途に応じた以下のようなITサービス・ツールが提供されています。

  (A)データを統合して格納するために:

   ・データレイク・分析基盤
   ・DMP(データマネジメントプラットフォーム)

  (B)データを活用するために:

   ・BIツール
   ・ダッシュボード

  (C)特定の用途に活用するために:

   ・営業:SFA(セールスフォースオートメーション)
   ・顧客管理:CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
   ・WEBマーケティング:WEB解析ツール
   ・マーケティング:MA(マーケティングオートメーション)

まとめ

データドリブンの活用に苦慮している実情、データドリブン経営の概略、プロセス、そして企業への定着方法について紹介させて頂きましたが、データドリブンの課題の解決に役に立ちそうな情報をお届けできたでしょうか?

最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。

  • 日本企業の経営者の多くは、データ活用にアクティブな姿勢で向き合えていない
  • データドリブン経営は、データの収集、分析、意思決定の3本柱で成り立っている

  • データドリブン経営のプロセスでは、テーマの模索、蓄積すべきデータの検討を重視すべき

  • 経営にデータドリブンを導入したいのであれば、まずは経営者がその有用性を理解すべき

  • データドリブン経営を定着させるには、強い信念を持ったリーダー、計画、データサイエンティストの存在が必要不可欠

  • データドリブンの導入は、データを扱うスキルだけでなく、検討、構想、コミュニケーションなどのスキルも求められる

  • データドリブンのITサービス・ツールを導入することでデータを活用する文化が根付きやすくなる

 

TEXT:畑中一平

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