筆者もライターを務める年間約400万人に読まれる「データのじかん」のタイムくんが書籍化されるとのことで、一足先に読ませてもらいました。そこで今回、DXを推進する立場であった筆者自身の観点で、DXを推進する方、DXを学びたい方向けに書評をお送りします!
さすがにIT用語としてのDXを「デラックス」と読む人はかなり少なくなっていると思いますが、かつては結構いたんです。
というのも、筆者はもともととある組織でDXを推進する部署におり、DX推進計画などを作っていました。その課では他部署との調整なども行っていたんですが、「デラックスって結局なんなの?」と質問してくる同僚が意外とたくさんいたんです。
半ばネタでしょうが、せっかくこちらが一生懸命DX推進をしようとしているのに、ギャグのようにDXを扱われるのは心外でした。そんな感じで奮闘しつつ、推進計画は出来たのですが、同僚からすれば所詮「関係のない話」であり、DXが浸透する前に筆者はその会社を辞めてしまいました。現在は無記名記事をメインに、DXに関するコンテンツ制作のお手伝いをしています。
とはいえ、筆者もはじめからDXに詳しかったわけではありません。IT業界歴は長いものの、さほどデジタルに詳しくなかったのが実情でした。それではいけないと思い、DXに関する情報をリサーチを日々していたのですが、経済産業省の『2025年の崖』など有名なレポートは出てくるのですが、いまいちわかりづらいものばかりでした。というのも、DXに関する書籍は経営者や経営層向けのものばかりで、「現場の社員たちが学べる」「知見を高められる」「しかも面白い」書籍がなかったのです。
筆者は十数冊ものDXに関する書籍とレポートを精読し、なんとか推進計画作成に取り組めましたが、普段の業務に加えてDXを学ぶことはなかなか難しいことと言えます。もっとわかりやすいDXに関する書籍があれば良いなあと、DX推進を担当していた時に何度も思いました。
もともとDXを推進する立場にいたからわかるのですが、社長含め、経営層はDX推進をなるべく早めに推進したいと考えています。一方、上にも書いた通り、一般社員はDXのことなど理解しておらず、むしろ「毎日の業務が増える」と捉えてしまう可能性があります。ここに経営層と一般社員の「壁」が存在するわけです。その壁を取り払い、みんなで一丸となってDXを推進するにはどうすれば良いのか。その答えはシンプルで、一般社員がDXの知識を増やすことだと筆者は考えます。なぜ経営層がDX推進を進めたいと考えているのか、それを理解するだけでも、経営層と一般社員の距離は縮まると思います。
実際に書店でDXのコーナーに行ってみてください。難しい本ばかりです。今回筆者がおすすめしたいのは、『今さら聞けないDX用語まるわかり辞典デラックス』という書籍です。そのタイトル通り、DXに関する用語を解説する辞書風の本となっています。デラックスとタイトルに入っているのが愛らしい、とても面白い本です。本書ではイラストが多用されており、さらに多様な登場人物が出てきてサクサク読めます。ページ数も200ページも無いので、読書を苦手とする人でもスッと読めるはずです。特筆すべきは「タイムくん」の4コマ。いい感じにシュールで、ニヤニヤしながら読めます。
ここまで読んで、「所詮薄っぺらい内容なんでしょ?」と思ったあなた。実は意外と深いところまで触れられています。
本書には「ICT」「SDGs」「Society5.0」など、どこかで聞いたことのある語句が登場します。なので、一見初心者向けの本のように思えるかもしれません。しかし、意外と知らない用語も多数収録されていて勉強になります。
例えば「EBPM」と言う言葉をご存じでしょうか?これは、本書によれば「エビデンスに基づく政策立案(Evidence-based Policy Making)」のことを指します。確かなエビデンスに基づいて政策立案の決定や実行、効果検証を行うことであり、知らなかったという人も多いのではないでしょうか(筆者も知りませんでした)。
また、その用語解説に留まらず、エビデンスの効果検証に必要な要素を4つにまとめたフレームワークも同じページに掲載。その名も「PICO」と言い、「P:Population(誰に対しての施策か?)」「I:Intervention(どんな施策を行うのか?)」「C:Comparison(誰を比較対象とするのか?)」「O:Outcome(何に対しての効果を検証するのか?)」の頭文字を集めた語句です。
完結に、かつ詳しく1つ1つの語句を詳しく解説しているのが、本書の特徴です。ちなみに右ページには、4コママンガが載っており、思わずクスリと笑ってしまいます。楽しく語句の勉強をしたいという人に最適な書籍と言えます。
さて、もしこの本がDX推進時代の筆者の頃にあったのならば、社員全員に本書を配布して読んでもらうことができました。それだけでも、ずいぶんDXに対するイメージが違ったのではないかと思います(少なくとも、DXのことをからかう風潮は無かったのだろうと推測できます)。3年ほどはやく本書が出ていれば…と悔やむばかりです。
この本が社会全体のDXに対する意識を”変革する”一助となるような気がしています。今からDXを勉強したい方、DX推進担当になって、社員全員にDXについて学んでほしいと思っている方、タイムくんをはじめとしたユルい仲間たちとDXについて学んでみましょう!きっと役に立つはずです。
(安齋慎平)
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