2022年の出生数は前年比5.1%減の79万9728人と発表され、1899年の統計開始以来初めて80万人を下回りました。出生数は2016年以降、過去最少を更新し続け、2016年に100万人を割り込み、2021年には81万人に。2019年時の厚生労働省の予想では2040年に74万人、という予想が出されていましたが想定以上のスピードで加速度的に少子化が進んでいます。
さらに団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり20代の人口が急激に少なくなる2025年には国民の4人に1人が後期高齢者となる「2025年問題」も間近に控えています。
出生数の減少によるさまざまな課題が切実さを増す中で社会の中で妊娠、出産、育児をどのようにサポートしていくか、が非常に重要になってきます。さまざまな出産や育児をサポートをする大きな要素の一つが「育休」です。
2022年には育児・介護休業法改正に伴い、産後の大変な時期に分割して男性が育休を取得できる産後パパ育休や育休の分割取得などが可能になり、より柔軟に育児にコミットできるようになっています。そうした中で、男性の育休にまつわる数値はどのように変わってきたのでしょうか?
かねてより日本において、男性が育児・家事にコミットする時間がOECD諸国などと比較して非常に少ないことが取り沙汰されてきました。2016(平成28)年のデータでは、比較対象である欧米諸国における1日あたりの家事育児の時間が2時間半以上あるのに対し、日本ではわずか半分の1時間23分であることが明らかになっています。
日本における男性育休の制度は諸外国と比較して充実しているにも関わらず、活用はなかなか進みませんでした。
下は2021(令和3)年までの女性・男性別の育児休業取得率のグラフです。女性においては、2006年以降、8割以上の取得が維持されているのに対し、男性の取得率は2000年代1%前後と低空飛行を続けていました。
しかし、2010年代に入ると徐々に取得率は増加するようになります。
特に大きな変化が見られるのが2011年と2020年です。東日本大震災のあった2011年には、前年比の2倍近い2.63%が育休を取得、また新型コロナウイルス感染症の流行により人々の生活が大きく変わった2020年には前年比5%超と過去最大の増加幅を見せています。
これは、震災やパンデミックといった未曾有の災害に対し、人々の暮らしの変化や家庭というものの優先度が高まったことが背景にあると考えられます。
2011年の育休取得率の増加が一過性のものだったのに対し、2020年の増加では、続く2021年も増加トレンドとなっており、テレワークなど働き方の変化により仕事をしながらも家庭に意識が向く傾向が強くなっていることが伺えます。
育休で重要なのは取得率だけではありません。そこで、育児休業期間を見てみましょう。
2015年から2021年にかけて3年ごとの育児休業期間を見ると、育児休業を取得した女性では、取得期間1ヶ月未満の人は2%未満なのに対し、同じく男性では、半数以上が取得期間1ヶ月未満となっています。
男性の育児休業期間をグラフ化したものが以下になります。
女性と比較すると育児休業期間は圧倒的に短いものの、年を重ねるにつれ、男性の育児休業期間が伸長していることがわかります。2015年にはおよそ57%だった5日未満が2021年には25%まで減少、逆に2週間〜1ヶ月未満や、1ヶ月〜3ヶ月未満は増加し、2021年には、1ヶ月〜3ヶ月未満の期間取得した人が1/4程度まで増加しています。
コロナ禍によって背中を押された男性育休は、取得率も取得期間も改善傾向にあります。
少子化について、主要な数値の改善の見通しはまだまだ先行きが見えませんが、こうした改善の積み重ねが、大きな数値にも変化につながることが期待されます。今後2022年以降の数字が出る中で法改正がどのように男性育休を変化させていくのか、結果が楽しみですね。
【参考資料】
(大藤ヨシヲ)
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