宇都宮ライトレール(LRT)とは?次なる最有力都市がどこか解説 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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宇都宮ライトレール(LRT)とは?次なる最有力都市がどこか解説

本記事では宇都宮ライトレールの概要を紹介しています。ネットワーク型コンパクトシティとの関係性や新たな最有力都市はどこになるのかを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

         

8月26日、日本では75年ぶりとなる新たな路面電車「宇都宮ライトレール」が開業した。

75年ぶりということもあり、全国的に注目されているが、宇都宮に続く路面電車が開業しそうな都市はあるのだろうか。

宇都宮ライトレールとは?75年ぶりとなる新たな路面電車の路線

宇都宮ライトレールとは?75年ぶりとなる新たな路面電車の路線

「宇都宮ライトレール」は栃木県宇都宮市と隣町の芳賀町を結ぶ全長約15キロの路線だ。宇都宮東口駅~芳賀・高根沢工業団地間を約50分で結ぶ。

「宇都宮ライトレール」は75年ぶりとなる新たな路面電車の路線だが、旧来の路面電車とは大きく異なる。日本初となる全線にわたり次世代型路面電車システム「LRT」で整備されている点が大きな特徴だ。

「LRT」はLight Rail Transit(ライト・レール・トランジット)の略称で、ノンステップ型の超低床路面電車だけでなく、軌道や停留所の改良により、より乗りやすい路面電車となっている。

「宇都宮ライトレール」開業前の路面電車では広島がLRT化へ進化を続けている。しかし、車両も含めて完全にLRT化されているとはいえない。

また、宇都宮ライトレールではいくつかの停留所を通過する「快速」を設定する予定だ。快速の導入により、宇都宮東口駅~芳賀・高根沢工業団地間は約10分短縮の約40分で結ぶ。

快速が普通を追い抜ける設備を持った駅も設置。過去にも利用客が少ない停留所を通過する路面電車は存在したが、追い抜き設備を持った路面電車の停留所の設置は宇都宮ライトレールが国内初となる。

運行本数はピーク時が6分間隔、ピークオフ時が10分間隔。平日は約16000人の利用を見込んでいる。

なお、運営主体に関しては運転などの事業運営は民間会社の宇都宮ライトレールが担う。一方、施設の整備・保有は宇都宮市・芳賀町が行う。宇都宮市・芳賀町は施設や車両を宇都宮ライトレールに貸し付け、宇都宮ライトレールは施設利用料を払う。このような仕組みを公設型上下分離方式という。

宇都宮ライトレールとネットワーク型コンパクトシティ

宇都宮ライトレールとネットワーク型コンパクトシティ

宇都宮ライトレールの建設の背景には宇都宮市が策定したネットワーク型コンパクトシティが挙げられる。

宇都宮市では将来的な人口減少社会に備え、新たな街づくりが迫られてる。現状では人口増加に伴い、人口集中地区が広がる結果に。一見すると良さそうに思えるが、人口減少社会では様々な問題が生まれる可能性がある。

たとえば住宅地がまばらになることにより、コミュニティが分断される可能性がある。また、人口が減少すると商店や診療所などが撤退することにより、不便で効率の悪い街となる。

公共交通機関も例外ではない。人口が減少すると、人口が少ない地域に乗り入れるバス路線の運行本数は減少ないし廃止は不可避になることだろう。仮にバス路線が廃止になると、自然と自家用車の利用が増え、CO2増加につながる。実際に宇都宮市では公共交通機関の利用が減少する一方、自家用車への依存が高まっている。

そこで、考え出されたのがネットワーク型コンパクトシティ(NCC)という考え方である。これは市に各種の都市機能を集約した拠点をつくり、各拠点を公共交通機関で結ぶというものだ。

具体的には都市機能を有する「都市拠点」、住とそれに関連した機能(例えば田園)を有する「地域拠点」、労働と教育が中心の「産業拠点」、そして「観光拠点」がある。

宇都宮ライトレールは都市拠点と産業拠点の芳賀・高根沢工業団地を結んでいる。芳賀工業団地と芳賀・高根沢工業団地では約2万人の従業員が働き、通勤時の交通渋滞が問題となっていた。そこでLRTの開通により、渋滞の緩和を狙っている。

また、途中の停留所からはそれぞれの地域拠点を結ぶ支線バスを運行する。つまり、都市拠点~産業拠点を結ぶ宇都宮ライトレールが幹となり、支線バスが枝といった感じだ。

宇都宮市では宇都宮ライトレールをJR線を乗り越え、宇都宮駅西口、東武宇都宮駅方面への延伸を計画している。このルートが実現すると、宇都宮市の心臓部にLRTが乗り入れることになる。

宇都宮に続く都市はあるのか

そもそも、路面電車が主役級で活躍している都市の規模はどれくらいだろうか。実は東京や大阪にも路面電車は存在するが、主役級ではない。

最も路面電車が密に走る広島市の人口は約120万人。一方、最も人口が少ないのは函館市の約24万人だ。最も多い人口範囲は30万人台~50万人台であり、宇都宮市もここに当てはまる。

また、宇都宮駅から沿線にある清原工業団地までが直線距離約8キロ、芳賀・高根沢工業団地までが直線距離約10キロだ。

それでは人口が50万人くらいで、新幹線が乗り入れるくらいの中心駅から10キロ前後に工業地区がある都市はあるのだろうか。もしかすると、宇都宮に続くLRT建設候補の街になるかもしれない。

この条件に該当する都市が兵庫県姫路市である。姫路市の代表駅、姫路駅には山陽新幹線が乗り入れる。姫路駅から日本製鉄などがある広畑の工業地帯までは直線距離約7キロだ。姫路市の人口は約52万人であり、宇都宮市とほぼ同数である。

姫路市でLRT建設の可能性はあるのだろうか。2023年10月現在、姫路市には具体的にLRTの建設計画は存在しない。しかし、姫路市議会ではLRTに関する質問があった。姫路市のLRTの実現度はどれくらいなのだろうか。

宇都宮市の場合は宇都宮駅と芳賀・高根沢工業団地の間に存在する鉄道は宇都宮ライトレールしかない。一方、姫路から広畑へは山陽電気鉄道本線・網干線がある。山陽姫路駅から飾磨駅で網干線に乗り換え、広畑駅に至る。実際、広畑の工業地帯へ向かう通勤者は山陽電車を利用する。実際に姫路駅から南側に向かうバスの便は多くない。

それでは、姫路駅からバスの運行本数が多いのはどうか。姫路市内を走る神姫バスの路線図を見ると、姫路駅北口から姫路城を経由して書写山までの本数が多い。確かに、姫路駅から姫路城までの大通りは道幅が広く、LRTには持ってこいの環境と思える。

しかし、LRTの新設は低いように思われる。なぜなら、姫路市は過去に鉄道建設で痛い目に遭っているからだ。それが姫路駅から南側の手柄山を結んだ1966年開業の姫路市営モノレールである。

このモノレールは同年に開催された姫路大博覧会に合わせて開業した。博覧会終了後は広畑まで延伸する計画もあったという。しかし、急進的かつ高額なモノレール建設ということもあり、姫路市の財政を圧迫。モノレール計画を推進した市長は市長選で落選し、開業からわずか8年後の1974年に運行休止に追い込まれた。このような経緯があるため、新しい鉄道システムの導入には慎重になるのかもしれない。

また、姫路市ではJR線をまたぐルートでの交通渋滞が深刻だったが、近年の道路建設により大きく改善された。このように見ていくと、姫路市でのLRT導入の可能性は低いように思われる。

宇都宮ライトレールに続くLRT建設は当分はなさそうだ。しかし、LRTの実績が目立つものであれば、同規模の都市での導入話が持ち上がるかもしれない。

著者:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。

(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)

 

参照元

「ネットワーク型コンパクトシティ形成ビジョン」|宇都宮市
小川裕夫「神戸への対抗心で巨大化、『姫路駅』の紆余曲折」|東洋経済オンライン
宇都宮ライトレール公式サイト|宇都宮ライトレール
姫路市ホームページ|姫路市

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