2018年7月創業のpluszeroは、次世代(第4世代)AI開発とカスタムAI開発事業を展開するAIベンチャー企業だ。同社の代表取締役 会長 兼 CEOの小代義行氏は「経営と技術をつなぐのが当社の仕事。それにより業務効率化だけでなく事業創出にも注力しており、世の中に先駆けて次世代AI開発に取り組んでいる」と述べた。
「DXの本質は、競争優位に立つために、どのKPI(重要業績評価指標)をいつまでにどのような値にしたいのかを設定し、そのための方策を探ることにあります。これは経営者の観点ですが、現場の観点に置き換えると『どのタスクをいつまでに、どのような精度・効率にしたいか』になります。なお、競争優位に立つためには桁違いの成果を出すことが重要であり、DXはそれを目指すべきです」(小代氏)
現在の生成AIは、第3世代または第3.5世代と呼ばれるが、その先にある第4世代AIの開発に同社は着手しているという。どのようなものなのか。
小代氏は「AIには、ルールベースのAIと機械学習ベースのAIの2通りある」という。ルールベースのAIは第1、第2世代から続く、あらかじめルールやシナリオを決めて、特定領域の判断なら信頼性が高く、問題の解決が可能だ。しかし、対象領域が異なったり、ルールやシナリオから外れたりした問題には、正確に答えることができない。一方、機械学習ベースのAI(第3~3.5世代)は現在ブームの生成AIのように、問題に直感的な答えを出すことができるが、それには間違いを含む「ハルシネーション」などがあり、信頼性に欠ける。それらに対して、第4世代はこの双方の長所を併せ持つものになると見込まれている。
「ルールベースAIは、人間の左脳(論理的)、機械学習ベースAIは右脳(直感的)に似た働きをします。双方を融合させ、バランスのとれたAI(二重過程モデル)が、当社が開発を進めている次世代AIです」(小代氏)
同社で開発・実装している次世代AIはAEI(Artificial Elastic Intelligence)というブランド名がつけられている。AEIで実現できる事例として、小代氏は次のケースを挙げた。
ルールベースAIのボイスボットは、一定のシナリオの範囲内では正確なやりとりが可能だが、シナリオから外れると対応できないなど、柔軟性や汎用性に課題がある。一方、機械学習ベースAIは柔軟性や汎用性に富むが、間違った内容を事実のように回答する恐れがあり、信頼性の面で大きな課題がある。「AEIでは事前にシナリオをつくることもなく、生成AIの出力を回答にするのでもなく、会話の流れの中で全体を把握して柔軟な回答が可能。また回答の信頼性も高くできます」(小代氏)
他にもAEIの適用例として、人間とAEIとのコラボレーションで運用管理を大幅に合理化することや、製造業におけるテスト自動化などを紹介。「運用管理の例では、AEIは出力の信頼性を高めた状態で、人間からの依頼内容を正しく把握し、現場との接続やアクションを実行できるのが、従来のAIとの大きな違いです。また、テスト自動化の例では、AEIなら、たとえ曖昧なテスト指示であっても内容を把握、膨大な仕様情報にもとづいて適切なテスト項目をCADデータなどと突き合わせることができます。またAEIと生成AIを組み合わせると、生成AIが生成したCADデータに対して、基準値への適合度を自動テストし、その結果を生成AIに返してデータの改善サイクルを回すことも可能になります」と小代氏。特に製造業のテスト自動化については、企業からの引き合いが殺到しているという。
小代氏は「信頼できるAIは新たな労働力として使える」とし、人間とは異なる5つの強みを示した。
①いつでもどこでも、いつまでも働ける
24時間365日、さまざまな方法で対話でき、人間のように担当替えや退職がない
②高生産性
人とAIで最適な役割分担で生産性を上げられる
③パーソナライズ
相手に合わせた好みのアバターを作成したり、相手に合わせた説明をしたりできる
④膨大な知識
全ての製品知識、過去の対応履歴などを備え、コンプライアンスも順守できる
⑤継続的なPDCA
データにもとづき継続的に改善が可能
同社が次世代AIと並び注力しているのが、企業などの要望に応じてオーダーメードで構築する「カスタムAI」である。pluszeroの代表取締役社長 COOの森遼太氏は、「事業創出や売り上げ向上の観点で進める『攻めのDX』には、汎用的な製品・サービスで対応できることはめったにありません。また、業務効率化や安全性向上観点の『守りのDX』の場合においても、業務プロセスの中で有効活用するには一定のカスタマイズが必要です」と、汎用的なAIの限界を指摘する。そこで、自社のビジネスに沿ったカスタムAIが「桁違いの成果」を上げるDXには重要な鍵となる。森氏は、同社のカスタムAIの事例を、次の5つを含め複数紹介した。
一般的には、レーダーで周囲の船舶の位置を測定・可視化して航行し、衝突などの危険を避けるが、レーダーによる画像は偽像を映すことがあり、信頼性に問題がある。カスタムAIでは自動運転を前提に、偽像を画像認識により高精度に検出し、安全で効率的な航行が可能になった。
同社が顧客との議論の中で新規事業の立ち上げに成功した事例。教科書出版の株式会社新興出版社啓林館と協働し、問題集の正答状況を撮影し、間違いの原因をAIが分析、次に取り組むべき問題をレコメンドするスマホアプリ「AIチューター・ゼロ」を開発した。
書籍のレビューデータ(口コミデータ)から役立つデータを抽出、数値化して構造化データとし、マーケティングに活用する仕組みを開発。これは口コミデータからトレンドデータを抽出し、既存データと組み合わせて新しいデータを生成する仕組みを採用した。従来のレコメンドシステムのように似たジャンルの商品を推奨するのではなく、例えば感情の惹起傾向を捕捉して、同じ傾向の商品をレコメンドするといった、「商品」や「ユーザー属性」とは別の軸でのマーケティングが可能になる。
森氏は、オーダーメードAIの開発のポイントを「オーダーメードAI開発は初期に学習コストがかかるため、期待するKPIが実現できないなど失敗すると大きな損失になります。そこで、初期にエンジニアに参加してもらい、技術的な可否を検討するのがポイントです。場合によってはオーダーメードではなく、既存のAIサービスをカスタマイズすることで、コストを抑えながら実現できる可能性も探れます」と解説。さらに「AIエンジニアとITエンジニアの役割は異なるが、担当する領域は不可分。両者の密なコミュニケーションが成功には欠かせません」と強調した。
第1回と同様に講演の後には、講演者を交えたグループディスカッションや参加者同士の交流が図られた。
(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣 PHOTO:野口岳彦 編集:野島光太郎)
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