そもそも、Kaggle(カグル)は機械学習やデータ分析の競技会を目的としたプラットフォームである。Kaggleは世界規模で展開しており、参加者はKaggler(カグラー)と呼ばれる。KagglerはKaggle上で提示された問題に取り組み、金メダル・銀メダル・銅メダルを目指す。メダルを取得するとレベルが上がる仕組みであり、Kagglerのレベルは5段階に分類される。最上位のランクは「Grandmaster(グランドマスター)」と呼ばれる。
関西Kaggler会の会員数は100名を超えており、Grandmasterも所属している。
Kaggleとは? 参加方法やサイトの見方、ランク制度を機械学習初心者の方向けに徹底解説
2回目と同様に、3回目も13時から18時30分までの長丁場であった。関西Kaggler会交流会は金曜日の昼間に行われ、今後も金曜午後の開催を継続する方針である。
3回目の参加申込者数は事務局(運営者)を含めて174名にのぼった。このうち、半分近くが初参加であり、さらに関西以外からの参加者も約半数を占めた。これにより、関西Kaggler会交流会がいかに熱量の高い会であるかがうかがえる。
今回の関西Kaggler会交流会はセッション数が10枠、スポンサー様の支援が7社、過去最大の規模とのこと。オープニングは、主宰のmgn88氏の挨拶からスタートし、メインとなるKagglerなどによるLightningTalk会(LT会)がスタート。である。プレゼンは3部構成で、第1部は初心者向け、第2部はKagglerの上級者(いわゆる「ガチ勢」)向け、第3部はスポンサー企業による宣伝が行われた。
ここからは、プレゼンの内容をかいつまみながら、関西Kaggler会交流会の模様を紹介する。
今回も前回と同様に、プレゼンの内容はKagglerに限らず、日々のビジネスや生活に役立つヒントが多かった。「Kaggleコンペチーム推進」をテーマに発表したbobo氏のプレゼンはその代表例といえる。
Kaggleへの参加方法は、ソロで挑戦するか、チームで挑戦するかの2択である。チームであれば、知恵を出し合うことで1人では気づかない視点が得られる。一方で、チーム運営には配慮や工夫が必要だ。
bobo氏は社内でメンバーを募り、チームを組んでコンペに参加している。しかし、メンバー集めが難航するうえ、毎回参加者が異なることから、「本当にチームでのコンペを楽しめているのか」と疑問を持ったという。そこで、タスク分担やコミュニケーションの活性化に取り組んでいるが、まだ課題も残るとのことだ。
bobo氏の発表に対し、参加者からは「基盤づくりの重要性」や「具体的な関わり方」についてさまざまなアドバイスが寄せられた。このように、関西Kaggler会交流会では、プレゼン後に単なる質問や回答を超えた知見の共有が行われるのが特徴だ。
偶然にも、今回の交流会では「社内チームづくり」に関するプレゼンが目立った。愛知県の自動車会社に勤務する伊藤晃人氏は「会社を変えるヒーローのつくり方」をテーマに興味深い発表を行った。
プレゼンでは、働く個人がスキルをインプットしても、社内でアウトプットの場がない現状を指摘。会場は「思わず納得」という雰囲気に包まれた。解決策として、アウトプットの場を設けることや企業幹部に認めてもらうことの重要性を強調した。さらに、「自分自身が自分の強みに気づくこと」が先決だと述べた。この思考法は筆者自身にも「目から鱗」だった。多くのKagglerにとって勇気を与える内容だったに違いない。
もちろん、実力派Kagglerからは「コンペでの勝ち方」に関する発表もあった。去にソロで金メダル5枚、銀メダル9枚を獲得した蛸井氏は、ソロでのコンペ参加が多い経験から「ソロ向きのコンペの選び方」を解説した。
具体的には、最終サブミッションの選択が難しいコンペはソロに向いているという。チームの場合、無難な選択をしがちだが、ソロであれば思い切った決断ができる。つまり、リスクを取って金メダルを狙うということだ。蛸井氏は「運に頼る部分もある」と認めていますが、勝負勘を磨くことがKagglerに求められる重要な要素であるとすれば、「運も実力のうち」と言えるだろう。
一方、学生グランドマスターであるpenguin46氏も登壇した。大学院生の彼は、初めてのコンペでは「ちんぷんかんぷん」だったと語るが、負けず嫌いの性格で挑戦を続け、最終的にはメダルを獲得したという。
penguin46氏は「過去のコンペを調べ、定石を習得すること」が強いKagglerになるために重要だと述べた。また、学生生活とコンペの両立には事前計画が欠かせないとし、「3カ月ほどコンペ用の時間を確保し、特にコンペ終盤はインターン先のシフトを調整してもらった」と話した。さらに、コンペでの思考法が研究にも応用できると語り、学生ならではの視点でKagglerの魅力を発信していた。
また、コンペでの思考法は研究にも活かせる、と大学院生ならではのKagglerのメリットを生き生きとした表情で語ってくれた。まだまだ学生Kagglerは多くないようだが、学生グランドマスターに挑戦してみてはいかがだろうか。
最後に、関西Kaggler会で話題となっている「自作キーボード」について触れたい。今回の交流会で最初に行われたプレゼンは、なんとコンペではなく自作キーボードに関する内容だった。
トップバッターのすえ氏はKagglerであると同時に、自作キーボードづくりを趣味としている。自作キーボードは市販品にはないキー配置が可能で、キーマッピングも自由自在だ。分割タイプを作れば、キーボード間にスペースができ、そこに専門書やおやつを置くこともできるという。作業効率が向上するのは間違いない。もっとも、自作キーボードがコンペ成績に影響を与えるデータはないとのことだ。
興味深い点は関西Kaggler会を通じて、自作キーボードづくりにハマったKagglerが続出しているという事実だ。このように、関西Kaggler会交流会は単にプレゼンを聴くだけでなく、プレゼン等をきっかけにして、Kaggler仲間をつくれる貴重な機会なのだ。
現に、関西Kaggler会交流会に初参加という会社員は「データサイエンスを身につけたいが1人では難しい。モチベーションや作業効率の点から、仲間づくりをしたい」という動機から参加したという。そのため、「懇親会にも期待したい」と回答した。
交流会後、Xを見ると、アウトプットの重要性を説くプレゼンに刺激を受け、さっそく社内で発表をした参加者がいた。単に「楽しい」だけでなく、きちんと「ビジネスにつながっている」何よりの証拠といえるだろう。
関西Kaggler会交流会は今回「も」熱気がすごく、モチベーションがアップすることは間違いないだろう。また、Kagglerでなくても、プレゼン等を通じて、ビジネスチャンスが見つかるかもしれない。オフラインの会だからこそ、足を運ぶ価値はあるように思う。
(取材・TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之・野島光太郎)
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