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宮西 京華(みやにし けいか)
保険会社で事務職をやっているデータマネジメント担当。歌い手動画を見るのが好き。
松田 紗友里(まつだ さゆり)
マーケティングが専門でSQLが得意。データ分析担当。ゲームやアニメが好き。
データマネジメント解説、連載の第15回が始まりました。
いざデータマネジメントを推進するとなっても、何から始めたら良いのかわからない宮西さんはDMBOKを読み進め方を勉強しました。
とっかかりとして、まずは会社の現状を把握するためにデータマネジメント成熟度アセスメントを行うことにしました。
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私は自席のモニターを眺めながらため息をついた。
「データマネジメント担当って何をやればいいんですかね?」
正直、頭の中は混乱していた。そもそもデータマネジメントという言葉の意味はわかるけど、実際に何をすればいいのか、どう進めるのかは全く想像がつかない。
「うーん、会社の状況によって違うんじゃないかな」
隣の席でコーヒーを飲んでいた松田先輩が、ふんわりと微笑む。
「そうなんですよ。前回、DMBOKを紹介してもらったので読んでみたんですけど……」
読んではみたものの、専門用語の洪水に軽く溺れかけた。言葉の意味はなんとなくわかる。でも、それをどう業務に落とし込むかのイメージが湧かない。
「おお偉いね、DMBOKの中で気になったところとかある?」
「そうですね……データマネジメントの全体像は掴めたんですけど、具体的に何から手を付ければいいのかがまだ曖昧で」
自分の言葉を口にしながら、改めて不安が込み上げる。何から始めるべきなのか、最初の一歩が見えない。
「なるほどね。じゃあ、まずはデータマネジメントがどのくらいできているかを調べるのがいいかも。最後の方にデータマネジメント成熟度アセスメントっていうのがあるでしょ」
「成熟度アセスメントって、つまり今うちの会社のデータマネジメントがどの程度できてるかを調べるってことですよね?」
「その通り。いきなり何かを改善しようとするより、まずは現状を把握するのが大事だからね。まずは現状把握から進めてみてはどうかな?」
「なるほど、確かに。方向性が見えてきました」
資料を読みながら、少しずつ頭の中で考えが整理されていく。霧の中にぼんやりと光が差し込むような感覚だ。
「でも、これってどうやって調査するんでしょう?」
「基本的には、アウトプットから見る客観的評価と、アンケートやヒアリングベースの主観的評価を総合して判断するの」
「なるほど……つまり、データの管理状態を直接見たり、各部署にデータをどんなふうに管理してるのか、困ってることはあるのかを聞いたりして、それを組み合わせるんですね」
「その通り。そうやって、まず会社の現状を把握するところから始めるといいわよ」
「それならやれそうな気がします」
手がかりが見つかったことで、少しだけ気持ちが軽くなった。いきなり大きなことをやるのではなく、まずは会社の現状を知る。それなら、私にもできるかもしれない。
「先輩、手伝ってもらえますか?」
「もちろん。じゃあ、さっそく計画を立ててみようか」
「よし、やってみます!」
松田先輩のゆるやかな微笑みを見て、私は深く息を吸い込んだ。
不安はまだある。でも、やることが見えたことで少しだけ希望が湧いてきた。
こうして、私のデータマネジメント担当としての第一歩が始まったのだった。
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データマネジメントに取り組む際、最初に行うべきこととして成熟度アセスメントを実施するのが効果的です。 データマネジメントは単一の業務ではなく、組織全体に関わる広範な活動であり、現状を正しく把握しなければ適切な施策を打ち出すことができないからです。 宮西さんのように、データマネジメントを担当することになったものの、具体的に何から始めるべきかわからないという状況は多くの現場で見られます。そのような場合にこそ、まずは成熟度アセスメントを実施し、現状を明確にすることが重要です。
成熟度アセスメントでは、組織のデータマネジメントがどのレベルにあるのかを評価し、課題を可視化します。
この評価には、客観的なデータと主観的な意見の両方を取り入れ評価することが求められます。
たとえば、データ品質の管理状況やメタデータの整備状況といった数値化できる情報を確認することが客観的な評価にあたります。
一方で、関係者へのヒアリングを通じて、日々の業務でどのような課題があるのかを把握することも欠かせません。
現場の声を反映することで、成果物には表れない問題点を見つけることができます。
データマネジメント成熟度アセスメントを行うことで、組織のデータマネジメントの状態が明らかになり、次に必要なアクションが見えてきます。
たとえば、データガバナンスが未整備であると判明した場合は、データの所有者を明確にし、管理の責任範囲を定める必要があります。
データ品質に課題がある場合は、データのクレンジング手法を導入したり、品質基準を定めたりすることが求められます。
このように、アセスメントの結果を基に、具体的な改善策を計画することができます。
データマネジメントは、単にツールを導入すれば解決するものではなく、組織の文化や業務プロセスとも密接に関係しています。
そのため、やみくもに施策を進めるのではなく、まずは現状を把握し、改善の方向性を定めることが大切です。成熟度アセスメントは、その出発点として最適な方法です。
よしむら@データマネジメント担当
IT業界、金融業界、エンタメ業界でデータマネジメントを担当した経験を持ち、現在もデータマネジメント担当している。データマネジメント業界を盛り上げるために、経験を通して得た知識の発信活動を行っている。
本記事は「よしむら@データマネジメント担当」さんのデータマネジメントを学べることをコンセプトの4コマ漫画「AI事務員宮西さん–データ組織立ち上げ編」のコンテンツを許可を得て掲載しています。
保険会社で事務員として働く宮西さんは、会社がAI時代に対応するために新設したデータ部門に突然配属されました。事務員からデータマネジメントのリーダーへと成長していく宮西さんの奮闘記を描いた物語。
本シリーズ「データ組織立ち上げ編」では、宮西さんがデータ利活用組織を立ち上げるまでの挑戦を描きます。IT業界、金融業界、エンタメ業界でデータマネジメントを担当した経験を持つ著者「よしむら@データマネジメント担当」さんが豊富な経験を基に執筆しています。データ組織の一員の皆様には、ぜひご一読ください。
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