「BI(Business Intelligence)ツールでグラフを作成してみたいけど、どんな使い方ができるのだろうか?」
「大手企業みたいな大規模なデータはないけど、自社でBIツールを活用できるのだろうか?」
前回の記事では「BIツールの分類」をテーマにBIツールの特徴を学習しました。そこで気になることは自社で活用できるのかどうかだと思います。
この記事では、BIツールのコンサルタントとして多くの会社を支援し、データアナリストとしてデータ活用をしてきた経験を活かして、BIツールのユースケースを紹介します。
実際にBIツールを利用している企業の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
BIツールは、社内外に蓄積されている各種データを集計して、表やグラフで可視化し、ビジネスの意思決定に活用するためのツールです。データを有効に活用し、経営や現場での意思決定に役立てれば、ビジネスの可能性をさらに広げることができます。
イメージしやすいのは、売上などのお金や、顧客などの人のデータをグラフで可視化した例だと思います。ですが、ビジネスで使えるデータであれば、あらゆる用途で活用できます。
最初にいくつか事例をピックアップします。その後、BIツールの種類別にユースケースを紹介します。
売上などの自社の収益を可視化する使い方が一番の王道です。ECサイトや小売業のPOSデータなどの場合、商品やユーザーのデータを保有していることが多いため、購入金額・購入頻度・最終購入日などのRFM分析や、ユーザーを分類して可視化します。自社の営業所や顧客の購入店舗などから都道府県ごとのエリア分析をすることも多いです。
売上や利益のデータは経営層からセールスの現場まで多くの人からのニーズがあるため、BIツールの価値の見せどころです。
BIツールは、相手に合う形でデータを可視化したり、相手に合わせてデータを見せる・見せないを制御したりすることが簡単にできます。Excelなどでそれ管理する場合は、ファイルのバージョン管理などが難しいですが、BIツールでは管理上のミスが生じにくく、信頼できるデータをもとに意思決定ができるようになります。
全国展開をしている小売店でBIツールを活用する場合、店長がライバル店の売れ筋を確認して試行錯誤したり、これから注力したい商品を売っているお店の状況をBIツールで確認して、どのように売っているかを他店の店長に確認したりするなど、店長間による創意工夫が生まれるような事例もあります。
次に多い活用方法は、自社のサービスやアプリの利用状況をモニタリングする使い方です。ユーザーの行動からプロダクトの改善案を導き出したり、顧客のサービス内での行動体験を最適化するためにデータを可視化したりします。定量データだけでは、なぜその状態になっているかを特定することが難しいため、定量データの分析と連動してユーザーに定性的なインタビューを直接行うことも重要です。
利用状況をモニタリングする代表的な使い方は2つあります。
1つ目は、新機能のリリース後の状況チェックです。利用状況が想定通りになっているかを、あらかじめ設定した条件とタイミングに合わせて確認します。なぜ上手くいったのか、上手くいかなかったのかを確認することで今後の開発に活かします。
2つ目は、異常を検知することです。利用データは一定期間が経過すると安定し、かわり映えがなくなるため、見られなくなるケースが多いです。そのため、急に数値が変動したときのみに、その理由を探すためにBIツールを利用することがあります。BIツールのなかにはアラート機能をもつツールがありますので、あらかじめ閾値を設定し、閾値を超えたら、Slackなどに通知するようにします。普段はかわり映えがないのであまり見る意味はないですが、異常があるときにその理由をBIツールで探索すると良いと思います。
BIツールは、特定の目的に限らず、データさえあれば、さまざまな用途で使うことができます。近年、自社の社員に関するスキルや能力、業務実績などをデータ化して、人員の適正配置や採用育成活動を行うタレントマネジメントのニーズも拡大しています。まだ事例は少ないですが、データを集めて部分的に活用している例もあります。
人のキャリアに関わることなので、配置転換などは慎重に行う必要があるものの、データによる一定の基準に基づいたマネジメントをすることで、公平な人事施策を打つことができます。
大学では入試の点数から、単位の取得状況や卒業後の進路までをデータ化する事例が増えてきています。入試の点数が良くても退学してしまう生徒や、入試の点数がよくなくても真面目に勉強して成功する生徒などの傾向を分析しています。
IoTデバイスの普及により、さまざまなモノをデータとして扱うことができるようになっています。BIツールはこのようなIoTデータの活用にも力を発揮します。
例えば、社内にあるプリンターの利用状況をBIツールで集計して、利用を最適化したような事例もあります。プリンターの利用データと社員証のデータを統合すれば、どの部署でどのくらいプリントしているのかを総務部が把握できます。そして、カラー印刷の比率が多ければその部署に通知したり、印刷量が多ければ両面印刷するように通知したりする仕組みを作ることもできます。
難易度は高いですが、エレベーターの混雑回避のための適正出社人数の分析や会議室の空予約の回避などをコロナ前に行う企業もありました。
アウトプットによって、BIツールは「レポーティング型」「アナリシス型」「ビジュアライズ型(ダッシュボード型)」の3つに分けられることを前回に説明しました。これらは以下の表のような特徴があります。
レポーティング型 | アウトプットの形が大きく変動しない場合に決まった値を確認できる。経営層など数字に慣れていてデータを探索する時間がない人に有効。グラフで表現するよりも数字でみた方が早いという意見もある。 |
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アナリシス型 | 見る人によって視点を切り替えて分析できる。商品や顧客を分析する必要があるマーケターなどに有効。 |
ビジュアライズ型 | グラフなどのビジュアライゼーションの力で、誰でもひと目で状況を判断できる。全社で見る重要指標などを作るのに有効。 |
これらのBIツールのアウトプットは、「ビジュアライズ型」→「アナリシス型」→「レポーティング型」の順に参照するのが王道の使い分けです。全体感をビジュアライズ型でひと目で確認し、気になるところがあれば関連するアナリシス型のアウトプットを確認。その結果をレポーティング型で出力して意思決定に活用するのがベストな使い方だと思います。
BIツールは、ビジネスにおけるあらゆるデータを見える化し、意思決定に役立てるためのシステムです。業界業種、企業規模を問わずさまざまな場面で利用されています。
紹介した内容を参考に、自社でも活用できそうであれば、ぜひ導入を検討してみてください。次の記事はBIツールの導入方法です。お楽しみに!
私は、社会人1年目のときにBIツールのコンサルタントをしていました。周囲の社会人に比べてITのスキルや経験が乏しく、「早く一人前になりたい!」と焦っていました。
その後、1年間BIツールの勉強をするとお客様の質問にも次第に答えられるようになっていき、BIツールやデータ可視化に関してだけは、大企業の部長や中小企業の社長といったお客様の前でも堂々とお話しできるようになっていきました。ニッチなスキルでも「専門的な知識」で貢献できる!と思えたアハ体験です。
株式会社オープンエイト データ戦略グループ マネージャー 前側 将さん
1992年北海道生まれ。動画制作ツールVideoBRAINを扱う、株式会社オープンエイトのデータアナリストとして、データ基盤の開発やデータ分析など幅広い業務を手掛ける。 また、BIツールに関する情報を発信するYouTubeコミュニティ「BIツール研究所」を主宰し、データ可視化の実践と普及に日々まい進中。監修を行った「『BIツール』活用 超入門 Google Data Portalではじめるデータ集計・分析・可視化」(秀和システム)が2021年11月下旬に出版。
BIツール書籍:https://www.amazon.co.jp/dp/4798065412/
前側さんTwitter:https://twitter.com/willanalysts
BIツール研究所
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCElyJ5Z_1mQWpUWLjs2-gaQ
Twitter:https://twitter.com/bitoollabo
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