グローバル化が進む昨今、企業間の競争は激しさを増している。さまざまな商品・サービスの品質が向上する中、各企業は利益を上げるために試⾏錯誤を繰り返す。
そのような状況下において、KPI がますます重要視されている。経営を語るうえで、KPI の学習は避けては通れない。
本書『KPI ⼤全 重要経営指標 100 の読み⽅&使い⽅』は、経営者やマネージャーに対して、適切な KPI の設定や活⽤⽅法についての実践的な知識を提供する書籍である。本書では実に 100 にものぼる KPI が紹介されている。業種を問わず、⾃分の仕事に活かせる KPI がきっとあるはずだ。
KPI(Key Performance Indicator)とは、組織や個⼈が⽬標達成に向かって業務が順調に進んでいるかどうかを確認するための重要な指標だ。
⾃分たちが取り組んでいる仕事が、はたして正しい⽅向に進んでいるのか。そして、そのプロセスはゴールから逆算してどの程度達成されているのか。
KPI とは、⽬標を達成するための重要な“道標”なのである。
KPI は営利活動だけではなく、学校の運営状況など、⾮営利な分野にも適⽤できる。⼈間が関わる営みにおいて、KPI は現状をより良くするための⼼強いパートナーとなる。
本書『KPI ⼤全 重要経営指標 100 の読み⽅&使い⽅』の最⼤の魅⼒は、KPI に対する理解が深まるように⼯夫された解説⽅法である。KPI とは何か、なぜ必要なのかといった基本的なことから紹介され、具体的な設定⽅法についても⾔及されている。また、KPI が持つ様々な意味合いや役割についても丁寧に解説されている。
これにより、KPI の取り扱い⽅についての理解が深まり、企業の経営改善に直結する設定・活⽤が可能となる。机上の空論とならず、実践に直結するところに本書の有⽤性がある。
本書では KPI のメリットとして、以下の 3 点が挙げられている。
⼈によって物事の解釈の仕⽅が異なるように、組織や個⼈の問題は、えてして抽象的になりやすい。たとえば、あるビジネスパーソンにとって「営業成績がよくない」という問題があったとしよう。その原因がどこにあって、どのような状況なのかは、個⼈の解釈によって変わってしまう。明確な原因を突き⽌めない限り、解決への道は拓かない。定性的な問題を数値によって測定できる KPI を活⽤すれば、物事の管理はグッとたやすくなる。
企業の試⾏錯誤において、PDCA は最強のフレームワークだ。だが、よくある問題点として、チェックとアクションの部分がなおざりになっていることが挙げられる。やりっぱなしのまま、振り返りが⼗分になされていないため、結果として成果が不⼗分のまま放置されてしまう。事前の計画がしっかりとクリアできたのかどうか、KPI で測定することにより、解像度の⾼い振り返りが実現できる。その精度は次回のプランニングにも好影響を与えるだろう。
「情熱を持って取り組もう」「お客さまのために⼼を尽くそう」「働きやすい労働環境を作ることが⼤切だ」これらの⾔説はどれも正しく、異論を挟む余地はない。だが、⼈々のモチベーションをさらにあげるためにも、具体的に測定可能な KPI を⽤いることは
⼤切だ。⾃分たちの現在地は、どこなのか。しっかりと⽬標を達成できているのか。で
きていないとしたら、どこに問題があるのか。これらの点を可視化することで、⼈々の
⾏動⼒をブーストすることが可能となる。
本書は、これらのメリットを提⽰しつつ、同時に KPI の課題も挙げる。その課題とは、⼿段の⽬的化だ。KPI を設定することは重要だが、⽬的はあくまでも成果をあげること。不適切な KPI を設定し、⼈々のモチベーションを下げてしまっては本末転倒である。また「測定ができること」に全体重をのせることも危険だ。本書で挙げられているように、たとえば新聞社が発⾏部数を KPI に設定し、それを達成するために⽿⽬の集めやすい問題ばかりを取り扱ってしまっては意味がない。企業や組織には、それぞれが掲げる社会的意義がある。 KPI ⾄上主義に陥ることで、その意義を忘れてしまうとトラブルや不祥事へとつながることもある。
本書では KPI を⽤いた経営改⾰の実例として、2つのストーリーが紹介されている。研究
機関に製品を提供する企業と、学習アプリを開発しているゲームソフトの会社だ。
⽬標を達成するために、どの指標を KPI に設定するのか。この 2 つの実例から、その重要性を読み取ることができる。ときに KPI を変更しながら⽬標達成に向かっていくプロセスは、⾃分の仕事を振り返る上でも有効な学びとなるだろう。
企業や組織、また個⼈の活動においても、⽇々問題は発⽣する。その問題を解決するために、 KPI を⽤いて議論することが⼤切だ。ムダな犯⼈探しや、的を外した議論を避けるためにも KPI は役に⽴つ。
総じて『KPI ⼤全 重要経営指標 100 の読み⽅&使い⽅』は、KPI に関する基礎知識から設定⽅法、活⽤⽅法、改善プロセスに⾄るまで、包括的かつ実践的な内容になっており、KPIを⽤いた経営改善に役⽴てられる⼀冊となっている。特に、中・⼤規模企業に勤める経営者やマネージャーにとっては必読の書籍だ。組織が⼤きくなれば、その分、マネジメントの難易度もあがる。KPI を⽤いたマネジメントは、組織の⼤きさに⽐例して、その重要度を増す。マネジメント層だけではなく、KPI を活⽤して個⼈の成⻑につなげたいと考えているビジネスパーソンにもおすすめできる⼀冊だ。
本書は、⽬標を達成し、より⾼い成果を出そうと⽬指す⼈々にとって、最良のパートナーとなるだろう。
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