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経産省の担当者がすべて答えます!いまさら聞けない「キャッシュレス社会」の全貌(後半)

         

「選択肢が多すぎて面倒だ」を避けるために

吉山     それにともなって通信インフラも整っていくということですね。

永井氏  クレジットカード決済はまさにそのような形です。CAFISとJCNという2つの大きなインフラで、国際ブランドがついていればどのイシュアのカードでも使える相互開放がされています。アクワイアラもマルチで対応できます。事業者さんとしても低コストでやろうと考えているはずなので、重層的な過剰投資が連綿と続いていくことにはならないでしょう。ただし、専用線かインターネットかという選択は技術進歩にからんだ大きな話。競争のなかの経営判断、避けられないインフラ投資のひとつと理解していただければ。

小暮氏  これはあくまで私見ですが、日本の人口が減っているなかで各QRコード事業者は独自のサーバを立ててやっていますが、重いサーバを各社が立てていくビジネスモデルが成り立つのかどうか。サーバや各社が保有するデータを統合してもまったく問題ないぐらい日本のデータ処理能力は発達しています。

日本の人口は減少傾向にありますが、人口そのものは少なくありません。今後キャッシュレス市場のパイが大きくなれば、収益拡大にともなってよいサービスも生まれてくるはずです。市場参加者みんなで細切れにして「パイが小さい」と言い合っていたら、よいサービスは生まれないでしょう。本当によいサービスが生まれる土壌に育っているのかを、よくよく考える必要があります。以上、私見です。

永井氏  中国も決済事業者がいくつも出てきた後に収れんされた経緯があります。ある事業者のサービスに決済を集中すればお得になるような仕組みはユーザーを集めるのではないでしょうか。クレジットカードのマイルをどこで貯めるか、どこに寄せるか――と同じです。利用者の利便性を考えると、そのような形で収れんされていくのが自然でしょう。

小暮氏  競争にあたっては、消費者が困らないことが大前提です。いまは事業者の選択肢があまりに多く「自由ゆえの不自由」な環境になっていると認識しています。この印象によって「キャッシュレスって面倒だ」と思われるのだけは絶対に避けたいのです。

永井氏  資本主義、自由主義の我が国では、事業者は公正な競争で選ばれていくのが基本です。政府が交通整理することの是非は意見が分かれるところでしょう。社会コストを下げ、消費者が困らない上で、公正な競争環境をつくることが、いま政府としてやるべきことだと認識しています。

小売店の決済手数料3.24%をどうするのか?

吉山    実際にキャッシュレス社会の中心役を担うのは小売業者です。2018年2月に経産省の旗振りで電子レシート化実験が実施されましたが、そこで聞こえてきたのが小売業者はキャッシュレス化に乗り気でないという声です。小売業者の現状や取り組みは経産省にどう映っているのでしょうか。

永井氏  くり返しになりますが、これも消費者がどのような形で支払いをしたいのか、それに沿った仕組みを提供できるのかで判断することになります。キャッシュレスの入り口の一つはクレジットカードですが、小売業の利益率が2%程度といわれているなかで3~4%やそれ以上の手数料を取るとなると、多くの小規模小売業はなかなかキャッシュレス化に踏み切れないでしょう

一方で、コンビニなどの大手小売業ではお客さまがより簡単に決済したいニーズがあるということで、積極的にさまざまなペイメントを導入しています。体力のある大手はキャッシュレス化に積極的で、その後のデータ利活用も視野に入った取り組みも散見されます。ここで、ある種の格差が出ているようです。

中小・小規模の小売りにとっては、キャッシュレス化がコストになっているのは事実でしょう。そこで、初期投資が少なくて済み、かつ決済事業者が手数料を一定期間無料にするようなQRコード決済サービスが登場しています。このあたりが最近、キャッシュレスがマスコミなどで話題になっている部分。キャッシュレス化の対象が、より広い範囲の小売業に広がっていく可能性が出てきています。

吉山     クレジットカードの決済手数料3.24%も、大手の大量販売小売業者ではもっと低く、地方の小さな小売業ではもっと高く設定されています。現状の決済インフラとコスト体系が変わらないと難しいし、小規模小売業者にしてみると、低い導入コストのサポートがないと前に進めないという現状があります。そこに変化はありますか?

小暮氏  あると思っています。地方の飲食業などでは5~10%といわれている決済手数料を、新しく進出してきたPSP(決済代行業者)が3.24%で提示するケースがあります。通常業務で使える決済端末が2万円程度で導入できたり、場合によってはキックバックもあったりなど、地方でも以前よりは低コストで導入できるようになったと認識しています。こうした最近の動きを知らない小売業の方もいらっしゃるようなので、最新動向を広く伝えていくことも大切な仕事です。

日本の現金維持管理コストはなんと8兆円!

吉山     キャッシュレス社会ではデータをみんなで利活用できるようになりますが、最初にデータを提出するのは小売業です。立ち上がり時期の現在はとくに「自分たちは出すだけ?」という認識もあり、小売業のデータ利活用は進んでいないようです。

永井氏  小売業は規模の大小問わず、「他社のデータは知りたいが、自社データは出したくない」というが基本的な考えです。確かにこのままではデータ利活用は進みにくいでしょう。しかし一方で、キャッシュレス化が進むと現金を取り扱うコストが下がってきます。

吉山     ある調査によると、日本全体の現金維持管理コストは約8兆円で、そのうち銀行のATMが約2兆円残り6兆円が一般事業会社の現金輸送・管理コストになっています。全国銀行協会ではキャッシュレス化により銀行の現金維持コスト半減できる、という見立てもあるようです。

永井氏  実際にファミレスチェーンがキャッシュレス・レストランを実験的に出店したりコンビニがスマートレジで決済の高速化を実現したりしています。いわゆる現金取り扱いコストを下げるというキャッシュレス化のメリットを小売業は享受できます。しかし、そこから先にあるデータ利活用まで手が届いていないのが現状です。

現在は、データを共有する前に自社のデータを活用して、その可能性を知っていただく段階といえます。まずは、自社でのデータ利活用をしっかり検討していただきたいのです。決済事業者は、そのあたりのマーケティングも含めてサポートするビジネスモデルを構築してほしい。そのうえで、個人情報を消した属性情報を用いて協調領域でデータ共有ができたら素晴らしいですね。このあたりのことはキャッシュレス推進協議会の検討課題として扱っていきます。

 
既存の決済インフラか?新たなインフラが必要か?
地方におけるインバウンド拡大の後押しに

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