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データで見る純喫茶の移り変わり:昭和レトロを代表する純喫茶はどのようにして生き残るべきか?

         

スターバックス一号店と純喫茶

もう少し純喫茶と口コミ・SNSの関係について調べみます。今に続く「喫茶店ブーム」がいつから始まったのかというと、それはおよそ20年前にさかのぼります。

おしゃれな喫茶店の代名詞「スターバックス」第一号店が銀座にオープンしたのが1996年。この時期から欧米風の外観や内装をモチーフにしたり、趣向を凝らしたメニューを提供したりするような喫茶店が増えました。そして、女性を中心にそのカフェを巡って歩く「カフェ巡り」がブームとなり、雑誌やテレビなど様々なメディアで取り上げられるようになったといいます。この女性発信の喫茶店ブームの流れの中で、再び純喫茶が「再発見」され、流行のひとつの分流として、純喫茶をはしごする「純喫茶巡り」ができたのではないでしょうか。そしてそれが現在まで続いているということになります。もしかしたらこの2000年代から始まる喫茶店ブームがなければ、純喫茶を巡る環境は全く異なったものになっていたかもしれません。

と、このように純喫茶は「特別な雰囲気を楽しむ場所」としてこの20年ほど活躍してきました。

大手チェーンとコンビニの台頭

一方で、「コーヒーを飲む場所」としての需要は厳しいものがあります。

日本はコーヒー大国です。減少し続ける純喫茶とは真逆に、この30年で大手チェーンの喫茶店の数は増えています。ドトールを例に挙げると、1988年には200ほどだった店舗数が、2019年にはおよそ1300店舗にまで増加しました。また、スターバックスは1996年の一号店オープンから24年経った2020年9月末の時点で1601店舗まで増加しているなど、日本では大手のチェーン店がハイペースで店舗数を拡大しています。

ネットリサーチ会社「マクロミル」による調査によれば、たとえばドトールは30代から60代と幅広い層に利用されていて、利用者の半分以上が会社員もしくは公務員であるといいます。こういったチェーン店は店舗数が多く、支払い形式も多様化しており、個人営業の純喫茶よりも比較的遅くまで営業しているため、サラリーマンの方々が普段使う用途に適しています。元々純喫茶が担っていたサラリーマンの憩いの場としての役割は、現在ではこういった大手チェーンが担っています。

また、コンビニがカウンターコーヒーを開始したことで、コーヒーはさらに手軽なものになりました。特にコンビニで淹れたてのコーヒーが100円で変える、というセブンカフェの登場は衝撃的で、以後急速にコンビニでコーヒーを買う、という文化が瞬く間に定着しました。具体的な数値をあげると、セブンカフェがカウンターコーヒーを導入した2013年時点ですでに1年に4.5億杯も飲まれ、2018年にはおよそ11億杯も飲まれるまでに成長しました。

こうしたコーヒー業界への新規参入が増えた結果、ここ30年ほどで日本におけるコーヒー消費量はさらに高まり、平成年間でコーヒー輸入量はおよそ1.4倍にまで拡大しました。こういった背景に加え、インスタントコーヒーや缶コーヒーの普及もあり、いまや「コーヒーは手軽に飲むもの」という認識が一般的です。

しかし、その分「コーヒーを飲む場所」としての純喫茶の役割はますます薄れてしまいました。かといって、これから純喫茶が大手チェーンやコンビニコーヒーと対等に勝負できるかと言えばほぼ不可能に近いでしょう。そこで、今後純喫茶はどう生き残っていくべきか、つまり「特別な雰囲気を楽しむ場所」としての役割をいかにして発揮していくかを考えなければいけないわけです。

地域コミュニティとしての純喫茶

データには表れませんが、確実に純喫茶の役割として存在するのが「地域コミュニティの場」としての純喫茶です。

純喫茶巡りをしていると地元のシニア層が5~6人ほどで集まり、モーニングを食べながら和気あいあいと話しているという光景に頻繁に遭遇します。

果たして、この喫茶店がなくなってしまったら、この方々はどこに行くのでしょうか。純喫茶は、地域住民がコミュニケーションをとる場所として重要な役割を担っています。

たとえば、その役割を代替するものとして、NPO団体などによって運営されるコミュニティカフェがあります。最新のデータではないのですが、2000年にはおよそ30店舗ほどだったコミュニティカフェは、2011年には5倍の158店舗にまで増加しました。それほどまで、全国で純喫茶的な役割を担う場所が足りていないことがわかります。

コミュニティカフェの利用者のほとんどは60歳以上であることから、定年後の地域とのつながりを持つことができる場として一定の役割を果たしています。同世代と話すことが生活にメリハリをもたらしますし、講座を開催するようなコミュニティカフェでは学ぶ機会もあるので、生活の質を向上することができます。このように、純喫茶が持つ魅力はSNS的に映える非日常的な空間だけではなく、「地域の住民が集まるカフェ」という場にも間違いなくあります。コーヒーを飲む場所、からコミュニティーが繋がる場所まで喫茶店の機能性も多岐に渡ります。純喫茶は今後このまま衰退していくのでしょうか?それとも何かしらの策が講じられるのでしょうか?

リモートワークが続く中、人が集って雑談をする場所としてまた多くの層の人に必要とされる日が近々もしかしたらまた訪れるかも知れませんね。

みなさんもご近所に気になる純喫茶があればぜひ一度思い切って覗いてみてください!新しい繋がりがひょっとしたらそこから生まれてくる、かも。

【参考URL】
・Wikipedia|純喫茶コーヒーブームなのに喫茶店が減っていく背景
・厚生労働省|喫茶店営業の実態と経営改善の方策昭和の空間「純喫茶」に若い女性が惹かれる理由
・クックドア|日本にカフェは100年前から存在した?!カフェの成り立ちと変化の歴史をご紹介
・ドトール|ドトールグループ総店舗数
・スターバックス|会社概要
・Wikipedia|コンビニコーヒーコミュニティカフェの実態に関する調査結果

(織田哲平)

 
SNSでつながる純喫茶

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