「データ」という言葉もそうですが、知っているようで知らない言葉、改めて意味を問われると即答できない用語は意外と多いものです。
たとえば、「デジタルとアナログの違いを教えてください」と聞かれたら、皆さんはどう答えるでしょうか?
実は「デジタル」という単語は、データと同じくラテン語由来の言葉です。もともとはラテン語で指を意味する「digitus」から来ており、数を数える時に指を使っていたことからバラバラの数(=離散した数)を意味するようになったそうです。
対して「アナログ」は、ギリシャ語で「比例」という意味を持つ「αναλογία」に由来があるとされています。このギリシャ語は、英語で「類似、相似、比喩」を意味する「analogy」になり、それが転じてアナログ(analog)になったそうです。デジタルが「バラバラ」であることに対し、アナログは「並べると似ている、関連がある」という意味を持ち、連続性がポイントになります。
物事のある側面をより具体的なイメージを喚起する言葉で置き換え、簡潔に表現する“メタファー”にデジタルとアナログという表現がよく用いられています。
デジタルとアナログがどういったケースを比喩にしているか?について考えてみましょう。
デジタルとアナログは不連続か、連続か?を語義としていますが、まずはそこを起点に、比喩表現を連想してみましょう。
デジタルとアナログの語義は「離散的」と「連続的」で、また、デジタルの値は2値(0 or 1)しか取りえません。
語義と振る舞いで、対義的に連想してみるとデジタルとアナログは以下のような比喩表現に使用されます。
デジタル | アナログ |
はい/いいえ | はい/いいえ/どちらでもない |
明確(はっきりしている) | 不明確(はっきりしない) |
正確(几帳面) | 不正確(いい加減) |
論理的(ロジカル) | 直感的(インテュティブ) |
冷たい(ドライ) | 暖かい(ウェット) |
独走(離れている) | 協調(密接している) |
デジタル回路 | アナログ回路 |
機械で制御していた自動車が電子制御になったり、フィルムで撮影していたカメラがSDカードになったり、私たちの身の回りの製品は、電子化が進んでいます。
製品の原理や仕組みが全く違うものに置き換わるだけでなく、劇的な利便性の向上も伴う、テクノロジーの過渡期は、機械から電子制御、すなわち『デジタル化』を経ることが多く、アナログ=旧世代・古い、デジタル=新世代・新しいといった比喩によく使われます。
ただ単純に古い、新しいといったニュアンスだけでなく、例えば、『アナログ人間』はパソコン業務やデジタル機器などが苦手な人として比喩されます。
デジタル技術を用いて製品やサービスの付加価値を高める『デジタライゼーション』によって、労力といった観点において、仕事や生活の負担は劇的に減り続けています。
自動化されていない業務、手芸や絵画や家事といった手作業を『アナログ』、作業ロボットを導入したFAでの生産、デジタルアートや3Dプリンタなどを活用した創作などを『デジタル』と比喩する場合があります。
例えば、Excelで一つ一つ手入力で帳票を作成するやり方を『アナログ的な作業』と比喩します。
昨今、多くの企業が取り組んでいるデジタルトランスフォーメーション(DX)の観点だと、勘や経験を頼りに意思決定する手法を『アナログ的な判断』と比喩します。
冒頭で紹介したように、デジタルが「バラバラ」であることに対し、アナログは「並べると似ている、関連がある」を語源としています。
アナログとデジタルは対義的なメタファー(隠喩・暗喩)、即ち、物事をより具体的なイメージで、簡潔な伝達方法として、その活用方法は増え続けています。
実は、データ(0 or 1)や波形(正弦波 or 矩形波)などのイメージは、電子回路を「アナログ回路」や「デジタル回路」で修飾したメタファーからの連想で、メタファーなしで表現すると以下のように置き換えられます。
・デジタル回路=電圧を不連続に制御する電子回路
・アナログ回路=電圧を連続的に制御する電子回路
よく、データや波形の振る舞いの違いが「アナログ」、「デジタル」の違いと思われがちです。
電子回路においては古くからの表現方法して慣習化されているだけで、「アナログ回路」と「デジタル回路」は、昨今、活用が拡大し続けているメタファーの先駆け、と考えると「アナログ」、「デジタル」の違いに対する理解が深まると思います。
これらを踏まえ、データにおけるアナログとデジタルの違いをざっくり言うと、連続的なデータを扱うのがアナログで、段階的なデータを扱うのがデジタル、と言えます。
アナログの場合、0と1の間にある1/2も0.007も0.99999999999…..もすべて含む連続量を、わかりやすい別の連続量に置き換えて表現します。例えば、アナログ時計の場合、1秒も0.0005秒も10分も、動き続ける2つの針の角度で表現しています。「デジタルに比べるとアナログの方が情報量が多い」といわれるのはこのためです。
Wikipediaによる「アナログ」の解説ページを見ると、次のようにあります。
アナログ(英: analog、英語発音: [ˈænəˌlɔːg] アナローグ)は、連続した量(例えば時間)を他の連続した量(例えば角度)で表示すること。デジタルが連続量をとびとびな値(離散的な数値)として表現(標本化・量子化)することと対比される。時計や温度計などがその例である。 日本版Wikipedia「アナログ」より転載
一方で、デジタルは、すべてのデータを0か1で処理します。よく「コンピュータは二進法を使ってデータを処理する」といわれますが、まさにそのとおりで、コンピュータでデータを処理する時にはすべて0か1、すなわち整数に置き換えています。これを量子化と呼びます。なので、デジタル時計は1秒以下の単位は通常表示されておらず、0.0から0.9秒までの間は表記が変わらないことがほとんどです。(ストップウォッチなど0.1秒以下の単位があるものは除きます。)
そう言われてもいまいちピンとこない人も多いかと思うので、波形においての、アナログ、デジタルの違いを見比べてみましょう。
アナログはこのような正弦波(sine wave)と呼ばれる滑らかな線。
一方で、デジタルはこのような矩形波(くけいは、Square wave)と呼ばれるカクカクとした線で表現されます。
なんとなくこれでイメージが付くかと思いますが、実際にデジタルとアナログそれぞれの波形の音の違いを検証した動画を見つけたので、興味のある方は見てみてください。
英語の動画なので、簡単に概要を説明すると、100khzから始まって、1000khz、2000khzとだんだん高い音を再生していき、高い音域になるにつれて、デジタルの音とアナログの音の違いはわかりにくくなる、ということをデモンストレーションしています。
かつてコンピュータゲームが出始めたころは、描画機能が乏しく、紙に描いたような絵をディスプレイで再現できませんでした。30代以上の方ならば、カクカクとしたドットの色だけしかないキャラクターが動くゲームに見覚えがあるかもしれません。なめらかな線や微細なグラデーションなどアナログの絵を0と1だけで再現することは非常に難しかったのです(現在は、色や線の変化は「誤差」ということで処理し、アナログの持つ表現や質感に近づけることが可能になりました)。
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