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あの日本企業が、ローマ教皇庁の図書館のデジタル化に貢献。伊達政宗の書状などがオンラインで閲覧できます!

         

ローマ教皇庁の図書館であるバチカン図書館。ここは1448年にローマ教皇ニコラウス5世によって設立された、世界最古の図書館の1つです。貴重な歴史的資料が数多く収蔵されています。実はこの図書館の資料の一部がデジタル化されており、バチカン図書館のサイトから閲覧することができます。なかには、伊達政宗がローマ教皇のもとに派遣した慶長遣欧使節に託した書状などもあります。このアーカイブ化プロジェクトには、実は日本のNTTデータが関与しています。

なぜバチカン図書館はNTTデータを選んだのか

NTTデータは、国立国会図書館の約200万件ものコンテンツをデジタルアーカイブ化した実績を持っています。そのノウハウを活かし、『AMLAD』と呼ばれるデジタルアーカイブサービスを提供しているのですが、それに目を付けたバチカン図書館が、NTTデータをビジネスパートナーとして採択したというのが、このプロジェクトの流れです。

バチカン図書館には、古くは2世紀のものから20世紀のものまで歴史的価値のある資料が残されています。特に、羊皮紙(羊などの動物の皮を木枠に張って限界まで伸ばし、ナイフで削って乾燥させたシート状のもの)やパピルスに書かれたものや、金銀によって装飾が施されたものなどは厳重に保存管理されてきました。しかし、年月の経過とともに劣化が進み、いずれ解読不可能になると懸念されていました。そこで、バチカン図書館はNTTデータにデジタルアーカイブ化の協力を要請することになったというわけです。

順風満帆ではなかったデジタルアーカイブプロジェクト

ここでこの記事が終われば、「ああ、またよくあるサクセスストーリーか」と思ってしまうでしょう。しかし、この話は順風満帆ではありませんでした。

バチカン市国は、基本的には寄付金によって成り立っている国家です(その他、観光業や不動産収入もあり)。主たる産業は切手の製造などであり、デジタルアーカイブ化事業を実施するための予算はありませんでした

そこで、NTTデータはデジタルアーカイブ化のための専用基金を設立して寄付を募りました。インセンティブも用意し、例えば500ユーロ以上の寄付をした人に対して「バチカン版ウェルギリウス」の1ページの限定複製ギフトを贈呈することにしました。加えて、バチカン館長とDigitaVaticana(デジタルアーカイブ推進のために設立されたNPO法人)の代表であるブルガリ夫人の署名が入った証明書も添付。結果として、多くの寄付を集めることができました。

400年の時を超えて、日本がバチカンへ貢献

2021年3月14日現在、NTTデータは3000冊についてアーカイブ化を開始しています。上述の『AMLAD』を基軸に、国際基準に対応した信頼性の高い高品質なシステム構築を行っています。

日本の活版印刷の起源は、安土桃山時代に天正遣欧使節がグーテンベルクの印刷機を持ち帰ったことから始まったとされています。グーテンベルクと言えば、聖書の大量印刷を可能にし、宗教改革に大きな影響を与えたことでも有名。400年の時を超え、日本の企業がデジタルアーカイブ技術という形でカトリックの世界に貢献しているのです。

さらに建築物のデジタル化に成功

NTTデータはさらにこのデジタルアーカイブ事業と並行して、バチカン市国が保有する希少な文化遺産や建造物の3Dデジタル化を進めていました。バチカン市国にある「Gregorian Tower(グレゴリアンタワー)」は、16世紀に時のローマ教皇グレゴリウス13世によって建築されたもの。この建物では天文学と暦の研究が行われていたのですが、ここでの研究の成果により、それまで使われていた「ユリウス暦」から、現在もなお使われている「グレゴリウス暦」へ見直しが行われています。NTTデータはこの建物の3Dスキャンを行って、デジタル化に成功しました。

そのスキャン方法は、3Dレーザースキャナー2台とデジタルカメラ1台を用い、3日間かけて撮影するというもの。撮影枚数は、合計で約600枚にも及んだそうです。光の当て方に気を配りつつ作業を進めたといいますから、かなり難易度の高いプロジェクトであることが窺えます。

ASEAN地域の文化遺産もデジタル化

NTTデータは2020年、ASEAN事務局が推進する「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive(略:ACHDA)」プロジェクトにも関わっています。これはASEAN諸国の貴重な歴史的文化遺産をデジタル化するもので、ASEAN地域全体の文化遺産をデータとして集約します。2018年12月から始まった第1フェーズでは、インドネシア、マレーシア、タイの3か国の文化遺産約160点の2D・3Dのデジタル化を行いました。

まとめ

歴史的資料のデジタルアーカイブ化は学術的にも文化的にも必要です。しかも海外のプロジェクトに、日本企業が関わっていたということを知らない人も多いのではないでしょうか? 日本の技術力が衰退しているというニュースを耳にしますが、今もなお最高水準の技術力を持つ分野もあるということに、もっと自信を持っても良いのではないかと思います。


【参考記事】
貴重な資産を後世へ バチカン図書館の蔵書デジタル化をNTTデータがサポート(動画あり) | クリスチャントゥデイ
バチカン市国の16世紀の天文台「Gregorian Tower」を3Dデジタル化 | NTTデータ
デジタルコンテンツの利活用事例~バチカン図書館のデジタル化~ | NTTデータ(PDF)

(安齋慎平)

 
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