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Excelのオートフォーマットに悩まされた科学者たちは遺伝子につけられた名前を変更することに!?

         

「使い勝手が悪いなあ」と思っていても、周囲の使用率が高いせいで使わざるを得ないソフトウェアってありますよね。筆者はExcelに対する苦手意識がとても強く、しぶしぶExcelを使っているタイプなのですが、皆さんは快適なスプレッドシート生活をお過ごしでしょうか。

仕事で頻繁にExcelを使用する人であれば、Excelの様々なおせっかいにしばしば頭を抱えたくなるのではないでしょうか?オートフォーマットとオートコレクトは作業効率を上げるどころか、不要な場合の修正に手間がかかってしまうことも少なくありません。

そんなExcel使いの悪夢の最終系と言っても過言ではないのが、Excelのオートフォーマット機能のせいで遺伝子の名前を変更するハメになったヒトゲノム命名法委員会(HGNC)のエピソード。一体どんな経緯があったのでしょうか?

遺伝子研究者泣かせのExcelオートフォーマット

ヒトゲノムには何万個もの遺伝子があり、遺伝子学界ではそれぞれに名前が与えられています。これらの名前は英数字で構成されているのですが、このうち27個がExcelのオートフォーマットにより日付に変換されてしまうという問題が、長期に渡って研究者たちを悩ませてきました。

例えば、MARCH1という遺伝子名(Membrane Associated Ring-CH-Type Finger 1の頭文字)を入力して入力キーを押すと、「1-Mar」に自動変換されてしまいます。いや、日付じゃないから! と呟きつつ、このおせっかい機能を無効化する方法を検索してみても…日付のオートフォマットは一括オフにできないとな…?

(参考:数値から日付に自動的に変更されないようにする

これを防ぐ方法はいくつかあり、例えばオートフォーマットをオフにしたい範囲を指定して、「表示形式」ドロップダウンメニューから「文字列」を選ぶことで、選択範囲には日付オートフォーマットが適用されなくなります。

しかしその都度範囲を選択しないといけない上に、スプレッドシートを複数人で共有している場合、誰かひとりでもこの処置を忘れると、データ全体に影響を及ぼしてしまうのです。

事実、2016年の調査によれば、3,597本の遺伝子学関係の論文のうち、およそ5分の1にこのExcelデータエラーの痕跡が認められたのだとか。論文にデータエラーがあると全体の信ぴょう性を損ねてしまいますから、研究者たちはヒヤヒヤし通しだったのでは。

遺伝子研究者たちの反応

研究者たちは長年、このシンプルながら非常にやっかいな問題に苦しめられてきました。しかし2019年、ついに歓喜の瞬間を迎えることに。ヒトゲノム命名法委員会が、Excelのオートフォーマットで日付にされてしまう27個の遺伝子の改名を決定したのです。

これにより、例えば前出のMARCH-1はMARCHF-1となりました。これを受けた研究者の反応は…

(訳:HGNCの発表にゾクゾクした。)

この瞬間を心待ちにしていたことが良く分かります。

Microsoftの対応

実は遺伝子の改名自体は以前にも行われたことがあります。しかしその理由は名詞と紛らわしい(WARS、MARS等)、差別的であるからなど、名前自体に問題があるからでした。今回のように、ソフトウェアが遺伝子名を誤読してしまうから、というのは前代未聞です。

学会内ではこの変更に関して、「Excelの機能を変えるよりも、人間の遺伝子名を変える方が簡単であっていいのか?」「なぜ我々が譲らなければならないのか?」という疑問の声が上がりました。学会はMicrosoftに対してこの件に関するコメントを要請しましたが、Microsoftは完全無視。膨大なExcelユーザーの中でほんの一握りに過ぎない遺伝子学分野に不便があるというだけで、広く使われている機能を変更する価値はないと判断したのでしょう。

ただ、現在でも各種オートコレクトやオートフォーマットのON、OFFを切り替えるオプションはあるわけですから、個人的にはそこに日付の項目を加えるくらいしてもいいのではと思いますが…

Excelの類似ソフトが現れて、そちらの方が利便性やカスタマーサービスに優れていると評価され始めたら、Microsoftはユーザーのフィードバックに耳を傾け始めるのかもしれません。

遺伝子学の研究者でなくても、Excelのオートフォーマット/コレクトに苦しめられている…という方は、こちらこちらもチェックしてみてください。

参考リンク:
・ Scientists rename human genes to stop Microsoft Excel from misreading them as 
dates「Excelの便利機能活用術」日付や数値の形式が勝手に変換される“おせっかい”を防ぐ

佐藤ちひろ

 
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