インターネットの普及とともにネット販売が拡大したように、日々進化するデジタルテクノロジーが社会に、目まぐるしい変化や進化をもたらしています。これまで以上に未来は予測不能で不確かになり、以前は強力な武器であった成功体験やセオリーがバイアスとなって、目の前の課題が解決できなくなるケースも散見されます。
この状況を的確に説明しているのがGoogleの秘密研究所「X」を統括していたアストロ・テラー氏が説明した図で、「テクノロジー」の進化の加速度は「人間の適応能力」の線形的な進化のスピードをすでにはるかに凌いでいると述べています。そして、「私たちはここにいる」と図に示された地点が示すように、もはや平均的な人間が適応できる範囲を超え、人間社会は新たな領域に到達しています。
「アストロ・テラーの図」は、テクノロジーが進化するスピードに人間の適応能力が対応しきれていない状況を説明していますが、その根底には人間の適応能力は線形的で飛躍的な加速が難しいのに対して、テクノロジーが指数関数的に進化するというスピードのギャップがあります。実際、テクノロジー分野がIT化やOA化という取り組みを推進していたのは過去の話で、十年でDXという新しい概念を生み出し、今なお進化し続けています。労働の現場でも叫ばれていたITやデジタルを活用した「働き方改革」は、ここ十数年ずっと課題であり続けています。もはやテクノロジーの進化に応じてテクノロジーを利用しようとすると、人間社会が適応する間に新しいテクノロジーが開発される構図ができてしまっており、人間中心の視点でテクノロジーを捉え直さなければ、テクノロジーを扱うことはできなくなってしまうでしょう。
このギャップをITやデジタルで埋め、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるるための挑戦的な活動こそ、DXが本来目指すところではないでしょうか。答えの無いDXは難しさを伴いますが、「データのじかん」ではDXを「人間の適応能力を進化させる挑戦的な営みとして、進化の過程に多様性をもたらす大切で尊い活動のひとつ」だと考えています。
データのじかんでは、気楽にDXやビジネス用語やキーワードを知ることができるITやテクノロジーを身近に感じる入り口や様々な組織・チーム・団体・個人の皆様の多種多様なDXの在り方を取材しています。DXについて、DXの初期の定義である「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことを解説し、その後、A〜Zまでの『なんとかトランスフォーメーション』や『なんとかエクスペリエンス』を紹介しました。こうした中でキーワードを知り、少しでも興味関心が高まったところで、DXを進めている先人の取組み事例や多種多様なアイデアから、あなたならではのDXの進め方を探っていただければ幸いです。
TEXT:データのじかん編集長 野島 光太郎(のじま・こうたろう)
広告代理店にて高級宝飾ブランド/腕時計メーカー/カルチャー雑誌などのデザイン・アートディレクション・マーケティングを担当。その後、一部上場企業/外資系IT企業での事業開発を経て現職。静岡県浜松市生まれ、名古屋大学経済学部卒業。
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