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倒産の危機からの脱出

陣屋はリーマンショック後に売上が低迷。

さらに先代オーナーが他界し、女将である宮崎氏の母親も入院し経営者不在の事態。宮崎夫妻は旅館業について充分に学ぶ機会もなく、赤字を解消し売上アップと経費削減が求められる状況でした。そこで経営状況を分析すると「顧客情報や営業情報、各予算は“前女将の頭の中”でスタッフには共有されておらず、不透明な状況。予算管理はルーチンワークになり危機感もなかった」といいます。

まずは経営改善方針の改善に着手。当時流行していた割引サービスを取りやめ、単価値上げを決意。稼働率や売上よりも「目指すべきはクオリティ」としました。

宮崎氏は、「旅館従業員の実態は、約8割がバックヤード作業。用事があるときのみ出向くいきあたりばったりの接客や、欠席者が多かった朝礼・夕礼を辞めました。仕事を効率化し、そのぶんお客様との会話や接点を増やしていきました」と語ります。そして、旅館経営を支える現在の基幹システムの導入へと踏み切ります。

クラウド型旅館管理システム「陣屋コネクト」で状況を打破


当時は最適なシステムが市販されていなかったため、セールスフォース・ドットコム社のプラットフォームを利用した基幹システムを自社で独自開発。これを「陣屋コネクト」を命名。シンプルな使いやすさを重視するため複数ツールの混在利用は行わず、すべての業務を集約。情報の一元管理を目標に開発しました。

「陣屋コネクト」では、各従業員が所有していたお客様の情報を社内で共有。「サプライズのプレゼントをしたい」「アレルギーが発症してしまったので、夕食のメニューを変えてほしい」など、お客様の要望を瞬時に共有できる「陣屋コネクト」の利用シーンをデモビデオで紹介しました。


「いかに旅館のファンになっていただくか。それは二回目の宿泊が勝負」と言い、車のナンバーを顧客情報と紐づけて管理し、駐車場に車が入ってきた時点で「◯◯様、お待ちしていました」と声かけが可能な「誰でも天才ドアマン」や、湯温センサーと人感センサーで常に風呂温度と清掃頻度を最適化する「見張りの自動化」など、IoTを活用した数々のスムーズな対応を披露。音声認識を活用し、入力の手間まで省く徹底ぶりです。

スタッフ全員にITを浸透させるポイント


いかに便利なシステムでも「陣屋コネクトを社内でどう普及させるかが一番の課題でした」と宮崎氏。

「一方的に与えたものはありがたがってもらえないので、社員に選んでもらった」と言い、「使いやすいデバイスを各自で自由に選択してもらう」「始めはデバイス複数種類2、3台ずつ購入してスタッフに使用して貰い、人気のあるものから買い足していく」など、シニア社員でもログインして活用してもらえるよう工夫を惜しみませんでした。

こうして「陣屋コネクト」は情報伝達の公平性に貢献。「行った/言わない/聞いてない」という事態を撲滅し、情報とタスクの一方通行化を阻止。

各自が同じ情報を持つことで業務の優越が無くなり「指示待ち」から脱却。主体性とモチベーション両方のアップにつながりました。

ES(従業員満足)向上に向けてワークスタイル変革

陣屋HPクリックするとリンク先に移動します。

また従業員が常に最適なモチベーションで業務にあたれるように週休2日制と月・火・水曜日を休館日とした週休3日制、そして有給休暇完全消化を実施。一方で営業日は常にフルメンバーでお客様をお迎え、こうした形でも1人ひとりが「聞いていない」「知らない」という状況を作らないようにしていきました。

こうした就業形態について「当初は『サービス業なのに休むのか』とお叱りも受けることも多かったが、近年ではサービス業でも休みを取るべきという共感の声が増えました。休館日はドラマの撮影などに使用されることもあります」と宮崎氏。

また、従業員のスキルアップのためにサービス研修会とPDCA報告会を実施。そのほか「提供する側が食材の味を知っているべき」と1人あたり予算が1万円以上のバーベキューや、自己分析表を提出し社長と面談した従業員のみに陣屋利用券を配布するなどの施策で、モチベーションとスキルアップを図っていきました。

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