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こんにちは。さて、ここで突然のミニテストです。

質問:以下の5つの国のペアで、乳幼児死亡率が高いのは?(国連統計、2006)

スリランカ or トルコ
ポーランド or 韓国
マレーシア or ロシア
パキスタン or ベトナム
南アフリカ or タイ

答えは出ましたか? ではそれを踏まえて次のTEDトークをご覧ください。(日本語字幕あり)

世界中で約3500万回再生されたこのトークの冒頭で、医師・公衆衛生専門家のハンス・ロズリング氏は、このテストをスウェーデンの大学生に行った際の結果を発表します。

ちなみに質問の答えは、「トルコ、ポーランド、ロシア、パキスタン、南アフリカの方が高い」なのですが、このテストでの学生達の正答数は平均1.8問でした。同大学の医学センター教授陣の結果ですら平均2.4問。しかしチンパンジーが答えをランダムに選んだ場合は、平均2.5問正解

ここでわかるのは、受験者たちに「アジアは世界の他の地域より非衛生的、医療が遅れている」という偏見があったこと。偏見は、秀才たちのテストの成績をチンパンジー以下にしてしまうんですね。あなたの成績はどうでしたか?

「貧しい国」の真実

ロズリング氏は次に、データを一方向からしか見ないことの危険性を指摘します。ひとつの国や地域のデータには、驚くほどのグラデーションが隠されている。だから「データを見たらまず分割しろ」というのがロズリング氏の持論です。それがどういうことか、動画内では語られていない国をサンプルに説明してみましょう。

皆さん、メキシコにどのようなイメージを持っていますか? トランプ米大統領の移民排斥政策のターゲットになっていることもあり、「貧しい発展途上国」のイメージがあるのでは。

しかし2010年から2013年まで、フォーブス誌の世界長者番付けのトップはメキシコ人資産家のカルロス・スリム氏でした。(2019年時点では5位)その総資産なんと640億ドル(約7兆円)。

ちなみに日本トップの孫正義ソフトバンクCEOの資産は、それを大きく下回る232億ドル(約2兆3千億円)。

翻って、メキシコ人の平均月収は約400ドル(約44,000円)。筆者の友人の大卒公務員でも月収1,000ドル程度。これは何となくイメージ通りでしょうか。しかし中堅以上のエンジニアになると、月収2000ドルを超えてきます。

また、日本の経済産業省のレポート(2018)によると、2016年にはメキシコの中間所得世帯(年収1万ドル~3万5千ドル)の割合が54%に達したそう。3万5千ドル以上の世帯も16.3%います。メキシコの世帯の70%以上が中間・高所得層というわけです。

つまりメキシコは国民全員が貧しいわけではなく、貧富の差が大きい国なのです。加えて、メキシコ・シティのような大都会と南部のチアパス州では、インフラからライフスタイルまで何もかもが違います。筆者は2014-15年に半年ほどメキシコ・シティに住んでいましたが、当地の富裕層のライフスタイルは東京のそれと変わりません。反面、旅行で訪れたチアパス州では、未舗装の道路、度重なる停電が当たり前でした。

こうした違いに目を向けない単一視点のデータと、「途上国」のイメージに基づいた行動は的外れだ、というのがロズリング氏の論点です。

データを翼に、未知の世界へ羽ばたく

ロズリング氏のスライドはカラフルで分かりやすく躍動的で、データを使用したエンタテイメントと言っても過言ではありません。一見何の変哲もないデータが細分化され、隠されていた真実が浮き彫りになる様子は、ミステリードラマの種明かしを見ているようです。

ロズリング氏いわく、こうしたデータは特に隠蔽されておらず、誰にでも同様のスライドを作ることは可能だそうです。しかしデータの掘り起こしに時間がかかるため、皆やりたがらないのだと。

そこで必要なのは、データベースを無料化し、簡単に検索可能にすることだ、とロズリング氏dは主張します。このTEDトークは2006年に撮影されましたが、ロズリング氏は当時すでにダークデータの存在とその問題点を指摘していたのです。

ロズリング氏は惜しくも2017年に逝去されていますが、最後の著書『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』では、彼の統計学への愛と哲学が惜しみなく披露されています。ロズリング流の「事実の見方」を身につければ、ビジネスでもプライベートでも新しい発見があるかもしれませんね。

参考リンク:
ハンス・ロズリング 最高の統計を披露

佐藤ちひろ

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