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営業現場を熟知した戦略リーダーとそれを支えるエンジニアの両輪でDXをーHENNGE流DXモデルで語るデータの必要性

         

「テクノロジーで、変化をチカラに。」をスローガンに、クラウドセキュリティ サービス「HENNGE One」などを展開しているHENNGE株式会社。同社では2018年10月、「テクノロジーの解放で世の中を変えていく」を掲げてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に向けた新たなモデルを発表。同時に専任チームであるDigital Intelligence Section(DI)を立ち上げた。「HENNGE流DXモデル」と名付けられた新たなデジタルマーケティング プラットフォームの内容や具体的な展開について、DIのマネージャーである水谷氏と、システム開発のリーダーである木暮氏に聞いた。

 
 

データに裏打ちされた営業戦略が企業の成長には不可欠

「デジタルマーケティング」と聞いて、どんなイメージを抱くだろうか。多くの人は、Webやメールなどを使って問い合わせを増やし、それを営業の実働部隊につなぐ、営業の補助作業のような印象を持っているのではないだろうか。実際に、5~6年前まで水谷氏が担当していたデジタルマーケティング部門も、ほぼそんなイメージだったという。

「とはいえ、それではもの足りません。そこで、自社のWebサイトを訪れた企業のIPアドレスを自動的に判別、Googleアナリティクスと連携させて可視化する仕組みを構築したのです。それで社名のリストをつくって営業に提供したところ、思いのほか商談のアポが取れ、受注につながるといった成果も出ました。そこから、いかにデータを営業の現場に役立てるかを強く意識し始めました」

まさに「データドリブンマーケティング」を先取りする取り組みだが、そうした経験を元に、水谷氏は「本当の意味でデータを生かした営業戦略には、営業の現場を肌で知っている戦略リーダーと、それをシステムとして実現できる優れたエンジニアの両輪が不可欠」と語る。

水谷氏自身、もともとはまさに「勘と根性」の営業出身だ。だが今から10年以上前、Webコンサルタント会社に転職したのを契機にデータの重要性に着目。以来、データを営業のバックボーンとして活用する「デジタルマーケティング」に着目してきた。上の社名リストの件も、そうしたチャレンジの過程で生まれた成功例の一つだ。

そうした長年の取り組みが、現在の会社を挙げてのプロジェクトに発展していったきっかけ、それが、2018年10月の組織変革だった。それまでは営業担当者だけでデータ戦略を立案・展開してきたところに、分析系のシステムエンジニアとして豊富な経験を持つ木暮氏が加わり、新たにデータを活用したチームが誕生したのだ。それが、Digital Intelligence Section(DI)だった。

「本格的なデータマーケティングを立ち上げるに当たって、まず考えたのは、明確かつ全員が共有可能で、理解・納得できるコンセプトをつくることでした。HENNGE Oneのビジネス立ち上げから約8年を迎えて順調にユーザーも増えており、そうした顧客情報を可視化し、事業をさらに成長させるためにも、重要なフェイズに差しかかっていました」

こうした状況下、次を見据えた取り組みから生まれたのが、「HENNGE流DXモデル」だ。

HENNGE流DXモデルのコアとなるデータをSaaS経由で集める

「HENNGE流DXモデル」の前提となるのが、同社のDXにおけるビジョンだ。スローガンである「テクノロジーの解放で世の中を変えてゆく」を実現するため、意識するのが「アーリーアダプターであり続けるために、青い果実を食べる」こと。すなわち、誰よりも、どの企業よりも早く新しいテーマにチャレンジし、試行錯誤を繰り返すことでDXを実現するという同社の姿勢だ。それが「HENNGE流DXモデル」の根底にあると水谷氏は言う。

このモデルの中心にあるのが「データ」だ。設定された目標(Objective)が頭脳で、5つの主要な成果(Key Result)がその手足だとすれば、データは全身を絶え間なく巡る血液のようなものだと表現する。データがなければどんな目標も空論に過ぎず、業務効率化や可視化、分析といったタスクも動かしようがない。データこそがDXのエネルギーだと水谷氏は考える。

「そのためにまず、データを大量に蓄積する方法を考える必要があります。言い換えれば、各自が持っている情報を入力してくれる仕組みづくりが最初の課題になると考えました。具体的にはSaaS、例えばSalesforceなどのサービスがデータの入り口になります。つまり、良質なデータを大量に集め続けようと思うなら、誰でも手軽に使え、繰り返し入力してもらえるSaaSの仕組みをまず用意しなくてはなりません」

社外に目を向け、新しいものを探し、それを見るための独自の視座を養う

HENNGE社内コラボレーションスペース。ここでは、内外のスペシャリストによる勉強会やMonthly Technical Sessionとして月1回程度の社内勉強会を開催している。

営業担当者が誰でも手軽にデータ入力できる仕組みとして水谷氏が取り組んだのは「入力のストレスがなるべく少ないこと」「入力したことが、自分たちの営業活動に成果として返ってくること」。すなわち、簡単でメリットがあることだった。これらが伴わなければ、どんな優れたシステムであっても使ってもらえないと考えた。

「アラートメール」がその好例だ。HENNGEでは、自社のWebサイトにどの会社の誰がアクセスしたのかを、マーケティングオートメーション(MA)ツールのMarketoを使って把握している。そのアクセスログをSalesforceの営業データと連携させ、「あなたがアプローチしている〇〇社の××さんが、先ほどWebサイトにアクセスしてきました」というメールを営業担当者に送信する仕組みを構築したのだ。この結果、実際の商談までこぎつける確率がアップしたという。

「この仕組の最大の特徴は、アラートを営業部全体に漠然と流すのではなく、そのお客様にアプローチ中の営業担当者本人にピンポイントで送る点です。このため、送られてきたメールは自分宛ですから必ず目を通しますし、次のアクションも早くなります」と水谷氏は成果を分析する。アラートメールには、Salesforceから抽出した顧客企業の決算月などの情報も挿入されるため、営業担当者がアプローチのタイミングを細かく読める。こうしたデータの抽出・提供はすべて自動化されており、人手によるタイムラグや転記ミスもない。

こうした取り組みで切っ掛けをつかんだDIでは、新しいツールを次々に開発・リリースしているが、代表例がBIダッシュボード「MotionBoard」を使ったツールだ。2018年末の導入以来、すでに6つのボードが社内で活用されている。

このツールでは、HENNGE Oneのユーザーの使用状況などのデータを、MotionBoard上でSalesforceから抽出したお客様の属性情報とひも付け、ユーザーがHENNGE Oneをどのように使っているかを可視化できるようにした。開発に当たった木暮氏は、「営業担当者からは、こうしたデータが手元にあることで、お客様とより具体的な話ができるようになったと聞いています」と語る。

「特に既存ユーザーの離反防止を目的にしたリテンション訪問では、お客様がどういう使い方をしていて、どういう問題があるかをあらかじめ把握していないと、せっかくお会いできても実のある会話になりません。今までは、こうしたデータを営業担当者が見たくても自由にアクセスできなかった。それがこのMotionBoardを使ったツールで、事前に予習できるようになったのです」(木暮氏) 

各所に存在するデータをつなぎビジネスに生かせる人材の育成を

HENNGE流DXモデルは今後、さらに多種多様なデータを収集するために、より手軽に現場の担当者が入力できる仕組みを追加していくという。

「MotionBoardはSalesforceにログインした上で使うため、営業担当者が外出先で欲しい情報をワンタッチで探すといった操作は難しいのが現状です。そこで社内の連絡に使っているSlack上に問い合わせ回答用のbotを組み込み、外出先から営業担当者が問い合わると、このbotがMotionBoardにアクセスして必要な情報を取得してSlackに返信してくれる仕組みを開発しました。名前も『Motionbot』となじみやすいものにしました」(木暮氏)

データを扱うためのモデルとツール群が出そろいつつある今、次の課題は、これらを将来にわたって維持・改善しながらビジネスの成長に結び付けていく人材の育成だ。それにはやはりビジネスサイドで実務や豊富な接客経験を持つ営業担当者と、彼らが自由にデータを活用できる環境を提供できる優れたエンジニアの両輪が不可欠だと、改めて水谷氏は強調する。

「幸い私たちDIには、営業を技術面でバックアップしてくれる木暮のようなエンジニアがいます。しかし世の中には、まだまだ営業担当者しかいない企業も少なくありません。そうした方々がこれから営業の現場にデータを活用していこうと考えるなら、あちこちに散在するデータをつなぎ合わせ、データビジュアライズできる人材が欠かせません。データはそのままだと何も価値も持ちません。分析されて、可視化され、理解され、行動に移された時に初めて価値が出てくるためです。データビジュアライズにより経営層や顧客に対してアピールできる人材の育成がカギを握っています」と水谷氏は締めくくった。

お話をお伺いしたDataLovers:水谷 博明 さん(写真右)、木暮 威仁 さん(写真左)

HENNGE株式会社Digital Intelligence Section Manager 水谷 博明 氏
デジタルマーケティングに携わって約10年、CRM / MA / BI を中心とした約50のSaaSを業務にて活用してきた実績あり。デジタルマーケティングを超越した、“データ × SaaS”を活用した「生産性向上」「業務効率化」を目指したDXをMissionとしたDigital Intelligence Sectionを立ち上げ、様々なProjectを遂行。

Data Management Leader 木暮 威仁 氏
元金融系SEかつ元テレビ番組ADの出戻りエンジニア。証券会社やソーシャルゲームメーカーなどで社内外のデータ収集分析システム構築、運用を中心に従事し、気づけばデータエンジニアに。HENNGE株式会社に入社後、サーバーに埋もれていたサービス利用ログを収集分析するシステムを構築。さらにビジネスデータとの融合を目指してDigital Intelligence Sectionに合流、技術力を活かしてデータの価値向上、可視化を推進中。


 

「テクノロジーの解放で世の中を変えていく。」というビジョンを標榜し、HENNGE社は、現在、HENNGE流DXモデルの中核を担うデータビジュアライズアシスタントを募集している。
https://recruit.hennge.com/apply/mid-career/?gh_jid=1738609

 

 

(取材・TEXT:データのじかん編集部+JBPRESS+田口/工藤  PHOTO:Inoue Syuhei  企画・編集:野島光太郎)

 
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