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梅雨に入って、毎日毎日、雨の日々が続いていますね。出かけるときには降っていなくても、出先で急な雨に降られることも多い季節です。
そんなとき、ついついコンビニでビニール傘を買うという方も多いと思いますが、日本では年間何本の傘が消費されているか、ご存知でしょうか?
日本洋傘振興協議会によると、日本での傘の消費量は年間でなんと1億2000万本〜1億3000万本! 一説にはこの数字は世界一と言われています。年間降水日数は世界で13位であるにもかかわらず、です。かなりの数ですよね。
とはいえ、たしかに大きな数字ではありますが、人口換算で1人で年間1本ちょっと、というのは少ないような気も……。
実際、この数字を見て「いや、1ヶ月で2、3本は買ったことあるぞ?」と思う方も多いのではないでしょうか。私もそうです。
実は、都道府県によって傘の購入数、所有数がかなり違うという統計データがあります。
ウェザーニュースの「傘調査2017」 によると、年間の傘購入本数は1位が東京都の0.9本で、福岡県0.8本、神奈川県0.8本と続きます。逆に最下位は岩手県の0.3本で、青森県0.3本、香川県0.3本と続きました。
同社による2014年の調査では、東京都は「弱い雨で傘をさす割合」が全国トップという結果も出ているほか、公共交通機関での移動が多い大都市圏では駅から目的地までの徒歩移動が多いことも理由の一つだと思われます。
それだけに「出先で急にふられて慌てて買う」というシチュエーションも多いのでしょうか、傘の所持数も4.1本と全国トップです。ご自宅の傘立てを想像してみてください。1度しか使っていないビニール傘がたくさんありませんか……?
一方、下位の3県はいずれも車移動が多く、アンケートにも「普段車なので持ち歩かない」とコメントがあったとか。
また、ウェザーニュースはこの3県は年間の降水量が比較的少ない地域であるというのも理由の一つでは、としています。
しかし、この結果をもってもやはり実感よりは少ないような……。もしかして私やあなたが傘を買いすぎてるだけかもしれません。
さて、ビニール傘とはいえ1本数百円はするので、そうしょっちゅう買っていては家計にとっても無視できない金額になってしまいますよね。梅雨の時期や夕立のある夏は特に。
そんな声に応えたサービスとして、傘のレンタルサービスが全国各地で展開されています。急な雨でも傘を買わなくて済むという嬉しいサービスですが、実は問題もあるのだとか。
函館市が新幹線開業に合わせて2016年3月に始めた無料貸し傘サービスは、北海道新幹線新函館開業対策推進機構(以下、新幹線機構)が1000本の傘を用意してスタート。JR函館駅や五稜郭などの観光地を中心に6箇所で貸し出しを始めたものの、ゴールデンウィーク明けにはなんと100本に減っていたのだそうです。その後も傘を追加しつづけましたが、結局、全体の1割も返ってこず、赤字事業のため他団体には引き継がれずに新幹線機構の解散とともにサービスは終了しました。
このような事例は他にもあり、たとえば名古屋市営地下鉄の「友愛の傘」はこれまで累計で12万本の傘を貸し出していますがほとんど返ってこないといいます。
しかし、このサービスは今年で56年目。それを支えているのは毎年、数千本単位で「友愛の傘」に傘の寄付を続けている名古屋地下街連合会です。担当者は毎日新聞の取材に、「返却されないのは残念だが、地下街のお客様の利便向上につながる」と答えて、これからも寄付を続ける意思を示しています。
これらの事例を見ていると利用者のモラルの低さを突きつけられているようですが、実はこの傘貸し出しサービスには成功例もあるんです。
その成功例が、ダイドードリンコが展開している「レンタルアンブレラ」。返却率は驚異の70%!これまでの事例と比較すると、ものすごい数字です。
ダイドードリンコの自販機に取り付けられた専用ボックスから無料で傘を借りることができ、返却は同じく専用ボックスの取り付けられた自販機であればOKというこの取り組みで70%もの返却率が実現しているポイントは、いったに何でしょうか。
このサービスの特徴を見てみましょう。
1.傘を無料で貸し出している
2.どこに返却してもいい
3.公共性の高い場所で運用されている
ここまでは、函館や名古屋の事例と同じです。
が、
4.ビニール傘ではなく長く使える洋傘を採用している
5.傘に大きく「DyDo」のロゴが入っている
6.観光地以外でも運用されている
7.鉄道での忘れ物となった傘を利用している
という点が大きく異なります。
函館では市販のビニール傘、名古屋も市販の傘が寄付されて貸し出しされていましたし、どちらも観光客の多い地区を中心に運用されてきました。
つまり、傘貸し出しサービスの返却率の低さの要因はモラルだけではなく、貸し出す傘の種類、デザイン、地域性、そして運用コストも大きく影響しているということです。
たしかに、長く使えそうな洋傘は捨てるには罪悪感があるし、盗むにしてもロゴ入りでは使いにくい。その上、傘の返却がしにくい観光客をメインターゲットにしていないからこそ、返却率が高いのでしょう。
また、損失が大きいためにサービスが終了してしまった函館の傘貸し出しサービスを考えると、忘れ物を利用して運用コストを低く抑えているのもサービスの継続性に大きく影響しているのだろうと思えます。
傘に関するデータを見てきましたが、いかがだったでしょうか。
年間の降水日数は13位なのにも関わらず1億2000万本以上の傘を消費する日本、傘の所持数4.1本で日本一の東京、レンタル傘サービスの低すぎる返却率と成功例の違い……。一口に傘と言っても、いろいろなデータをもとに見直してみると新たな一面が発見できますね。
これを機に楽しんでデータ活用してもらえるよう、願っています!
(塚岡雄太)
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