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モデレータを務めた
オープンデータ伝道師 庄司 昌彦氏(左)
内閣府副大臣 あかま 二郎氏(右)

2018年1月25日、オープンデータの活用に向けて、日本では初の試みとなる官民ラウンドテーブルが開催されました。この記事では、公開実施となったラウンドテーブルの討議の模様を読み解きます。
当日は、要望を出す企業とそれに回答する官公庁に加え、オープンデータに関する有識者と、国としてオープンデータ戦略を推進する立場にある内閣官房IT総合戦略室の関係者らが一堂に会し、議論が展開されました。

平成30年1月18日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)より公表された
「オープンデータ官民ラウンドテーブル(第1回)「観光・移動」分野の開催について」の資料より

第1回のテーマとして取り上げられたのは「観光・移動」。進め方は、データの公開要望を求める企業が想定する活用のユースケースの紹介を行い、その内容を受けて各省庁がデータ提供の可否を回答、その後は有識者を加えての意見交換という流れでした。公開要望が提示されたデータは「飲食店関連データ」「訪日外国人関連データ」「公共交通関連データ」。それぞれ、「飲食店関連データ」については株式会社ぐるなび 中村 耕史氏、「訪日外国人関連データ」はウイングアーク1st株式会社 加藤 大受氏、「公共交通関連データ」はジョルダン株式会社 太田 直之氏、凸版印刷株式会社 藤沢 修氏が順に発表を行いました。

すべてが電子化できているわけではない

今政府では「機械判読に適したデータ形式で、二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータ」「人手を多くかけずにデータの二次利用を可能とするもの」と、オープンデータである条件を定めています。けれども、回答を聞いていると、一部にはまだ電子化されていない紙のままのデータもあります。
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法務省入国管理局では、入国カードに記載された出入国管理情報を基に統計データを作っていますが、カードの項目すべてがデジタル化されているわけではありません。国籍、性別、生年月日、渡航目的、入国時/出国時の空海港の情報は、「外国人出入国記録マスターファイル」に保存しています。しかし、滞在予定期間や現住所については、審査官が使う項目ですが、電子データとしては持っていないとのことでした。すべてのデータが提供できるわけではありませんが、「出入国時の空海港については統計として作成できるのではないか」という回答が得られたのは収穫でしょう。

データの信頼性の判断は利用する側にも必要

観光庁が提供している「訪日外国人消費動向調査」の項目やデータの出し方については、国と事業者が対話の機会を増やしながら、旅行者に関するより良い理解を行うための方向性が示された格好です。
国の行政機関が行う統計調査には、正確な報告の義務を伴う基幹統計調査とそれ以外の一般統計調査の二通りがあります。「訪日外国人消費動向調査」はその義務のない後者に該当し、サンプル数も比較的少なくなります。
一般統計調査の場合、調査票の質問選択肢を増やすのは容易にできそうですが、各選択肢への回答数の偏りが原因で、クロス集計結果にノイズが入ることに関して、懸念が表明されました。例えば、インバウンド旅行者が使っているソーシャルメディアを調べたいとなると、アジア独自のプラットフォームを選択肢に入れる必要があり、回答が分散するほど、有意な結果を得るためのサンプル数を得ることが難しくなるというわけです。

この点については、信頼性が高い結果ではなかったとしても、本来は使う側が正しく判断するべきことではないでしょうか。統計としての信頼性を高めるための提言が事業者側からもできれば、より活用しやすい調査結果になると思います。

匿名化は解決の糸口になるか

一方、最もオープン化への壁が高いのは、個人を特定する情報が含まれたデータです。国税庁が持つ訪日外国人の免税品購買データについては、外国人旅行者の個人情報と免税店事業者の営業上の秘密が含まれることと、税務当局が税務以外の目的で利用しないことを前提に取得するものであるという説明がありました。取得時の守秘義務に抵触するため、そのまま外部に提供はできないことを意味します。
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そして、現時点では、免税品購買データは電子的に保存されてはいません。けれども、2017年末の税制改正大綱に盛り込まれた免税手続きの電子化対応に即して、2022年4月以降の免税品販売からデータでの把握が可能になる見通しです。データ公開の可能性については、匿名化の措置や制度的に使うための手当など、今後の働きかけが必要なことは確認できました。

「はい、どうぞ」「いいえ、できません」で終わらないやり取りを

ラウンドテーブルでは、官公庁が持つデータを民間事業者が使うことを前提にしていましたが、公共利益をもたらすデータは、官公庁だけが持っているとは限りません。発表の中で求められたものの中には、自治体や民間事業者のデータもありました。有識者からは、「今日は官のデータを民が使う場合の可能性を探る場だったが、逆の場合や民民の場合もあるはず」という指摘もありました。
全体的には、「公開してください」と言われて、「はい、どうぞ」とはならない難しいユースケースばかりでしたが、少なくともお互いの意見を聞き、現状を認識するには良い機会だったでしょう。「いいえ、できません」と言下に否定することは全くありませんでしたが、有識者からは、「本当に規制するべきことなのか、それとも慣行上使えないという一種の思い込みがないかの見極めが重要ではないか」という問題提起がなされました。
すでに、この第1回ラウンドテーブルを受けて、データを保有する府省庁とデータの活用・公開を希望する民間企業における具体的準備に向けた会話がスタートし、「推奨データセット」の形式についてなど、実現に向けて加速度的に動き出しています。
ラウンドテーブルでの一往復のやり取りにとどまることなく、今後行うやり取りのラリーについては、引き続き、「データのじかん」でも随時紹介して行きます。

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