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2018年、11月のある日、動画配信アプリをぼーっと眺めていたら、これまでの「M1グランプリ」全大会が配信されていることに気づきました。師走も近づき、今年のM1(2018年12月2日開催)が目前に控えていたこともあって、筆者は好奇心で第一回大会から見てみることにしました。

M1は言わずと知れた漫才のショーレース。2001年から始まり、2010年に一度終了したものの、その人気の高さから、2015年に再開し、現在まで続いています。

例年、プロアマ問わず数千組の漫才師たちが挑むこの大会。再開後は毎年参加者が増加しており、今年は昨年より500組以上多い4640組が予選に臨み、10組が決勝へ進出しました。}年々、熱気が高まる中で、この大会の開催を毎年楽しみにしている、という人は少なくないのではないでしょうか?

そんな「M1を毎年楽しみにしている一人」として、改めて第一回大会から見てみると、年を追うごとに、笑いの質が変化していき、1組1組のネタの精度もどんどんと上がっていくのを感じました。

そして、そこで気になったのは、審査員が漫才師たちにつける点数の変化です。

M1では、5~9人の審査員が一人当たり100点の持ち点をもち、各漫才師の漫才に点数をつけることで審査が行われます。

ここ数年は、ほとんどの漫才師が審査員一人当たり80〜90点台の点数をマークする、非常にハイレベルな戦いになっています。一方で、第一回、第二回大会では、50点台の点数も複数回、見受けられました。

これは、ひょっとしたら筆者が感じた「年々、ネタの精度が上がっている」という感覚は数字で裏付けられるかも…?

今回はそんな期待からこれまでのM1の全大会の得点データを観察してみました。

M1が開催されなかった4年の間も漫才師たちは努力を怠らなかった

まずは、各年の得点を見ていきましょう。

今回は、全体の傾向をみる、ということで、得点は決勝一回戦のみの得点を採用しています。

下記のグラフが、各年の全得点から得た箱ひげ図です。青い真ん中の箱はその年の得点の真ん中、約50%が分布する領域です。そして箱より上の細い線に上位約25パーセント、下の細い線には下位に約25%が分布しています。

2001年と2002年は、他の年と比較すると全体的に得点が低く、また、得点のばらつきが大きいように見えます。逆に2008年以降は、安定して得点が高く、またばらつきも小さくなっています。

そこで次に平均点と、得点のばらつきの関係を観察していきます。

ここでは、審査員が全体的に漫才のレベルが高いと判断したか否かは平均点で、また、得点的に接戦だったか否かはばらつきで判断する、ということにします。

今回、得点のばらつきの尺度として、標準偏差を用います。さらに、接戦であればあるほど値が大きくなるよう、標準偏差の逆数をとることで“接近度”とします。

下記のグラフでは得点のばらつきと平均点の関係を示しています。

図の傾向として、右肩上がりであり、大会のレベルが上がるほど、接戦になっていくことがわかります。また、2008年以降は平均点が顕著に高くなっていることが改めてよく理解できます。

次に開催年と平均値、接近度の関係を見てみます。

2010年から2015年にかけて、M1が開催されなかった期間があったにもかかわらず、平均点、接近度共に前年度の大会よりも高い値を出していることから、漫才師たちは、M1の有無にかかわらず、漫才の質を上げているということがよくわかります。

決勝出場者だけでなく、応募者全体が“面白く”なっている

続いて、M1の予選参加者が決勝に進める倍率と平均点、接近度の関係を見ていきます。

こちらのグラフでも、右肩上がりの傾向が見られます。つまり、倍率が高くなればなるほど、平均点は高く、より接戦になる、ということです。

一方で、一旦大会が休止し、再開した2015年以降については、応募組数、倍率、共に2010年大会よりも低い値になっていますが、平均点、接近度はいずれの年も2010年大会よりも高い値を出していることもわかりました。

つまり、応募者数が増えるほど、漫才のレベルが上がる傾向があるということ、さらに、時間の経過に伴って、質は上がっていく、ということが明らかになりました。

この結果は、年々応募者全体の質も上がっている、という可能性を示唆しているのではないでしょうか?

まとめ

2018年のM1グランプリでは、“審査員の審査は的確だったのか”について、例年以上に注目が集まりました。

その要因としては、2018年から審査員となった立川志らく氏による新しい切り口の批評が物議を醸したことや、2017年のM1王者、とろサーモンの久保田氏と2018年の出場者、スーパーマラドーナの武智氏が、審査員を務めた上沼恵美子氏をSNSのライブ放送上で痛烈に批判したことが挙げられます。

そうした中で、審査員一人一人や芸人一組一組の得点データを観察し、考察した記事は多く見られました。

今回、俯瞰的にM1グランプリの得点を観察したところ、M1が開催されなかった期間も出場者のレベルは年々上がっており、さらに、出場者だけでなく、応募者全体が面白くなっている可能性がある、ということが明らかになりました。

このように、普段何気なく見ているものでも、データにしてみるとまた新たな発見があるかもしれません。

何はともあれ、現時点で平均点が90点近いハイレベルなM1グランプリ。来年以降どれだけ“面白く”なるのか、楽しみですね。

【参考記事】
M-1上沼審査は的外れ!?~お笑いもビッグデータで評価できる時代~ | Yahooニュース
 賛否両論の『M-1』上沼恵美子さんの採点 本当に偏っていたのか | BUZZFEED

(大藤ヨシヲ)

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