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民泊新法ってどんなもの?インバウンド需要で注目を浴びる民泊を取り巻く現況を解説

         

東京オリンピックを目前に控え、日本のインバウンド観光需要はますます高まっています。 さらにSNSなどでニッチな情報も共有されるようになった結果、首都圏内だけでなく、地方部にもその影響は及んでいます。

そうした状況の中で、ホテルや宿泊所不足の懸念もなかなか拭いきれません。

そこで近年、関心が高まってきているのが、空いている個人の家や部屋を活用したいわゆる『民泊』です。

エアビーアンドビーをはじめとした、民泊運営者と顧客をつなぐプラットフォームも増える中、民泊はより一般的な存在になりつつあります。

余剰となっている場所を有効活用することで、様々な問題を解決し、ビジネスの領域でも注目を集めている民泊ですか、昨年には法改正も行われ、運営には様々な制約が伴います。

今回は、民泊新法とはどんなものかを解説するとともに、民泊の現状をデータでご紹介いたします。

民泊事業者は何をすべきなの?民泊新法をご紹介

民泊の需要が増える中、民泊事業をより安全なものにするべく昨年の6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。

では、家に空き部屋がある場合や、仕事でしばらく家を空けるなどの事情で部屋を有料で貸したいと考えたとき、どのような手続きをすれば良いのでしょうか?

手続きの概要を簡単にご説明します。

民泊として、住宅を貸し出しためには、以下に紹介する設備条件と居住条件を満たしている必要があります

まず設備要件としては

  • 台所
  • 浴室
  • 便所
  • 洗面設備

の四つが設置されている必要があります。

また居住条件としては、

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  • 入居者の募集が行われている家屋
  • 随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋

の三つが必須条件となります。例えば、新築のマンションで借り手が見つからず、民泊として利用したいという場合では、居住としての使用履歴がないため、 居住条件を満たすことができません。

以上の条件を住宅が満たしている事を確認した上で、民泊を運営する人は、“住宅宿泊事業者”として、都道府県知事などに届け出をする必要があります。地域によって届出先が違うため、民泊制度ポータルサイト「minpaku」での確認が推奨されています。

民泊として運営する場合は、顧客の安全を確保するため、事業者は以下の項目を義務として課せられます。

  • 宿泊者名簿の設置
    宿泊者の氏名、住所、職業、宿泊日のほか、日本国内に住所を持たない外国人の場合は、国籍と旅券番号を記載
  • 安全の確保
    非常用照明器具の設置や避難経路の表示など
  • 外国人観光客の快適性と利便性の確保
    届出住宅の設備の使用方法、移動のための交通手段、災害時の通報連絡先などを外国語で説明
  • 宿泊者の衛生確保の措置
    居室の宿泊者1人当たりの床面積や、定期的な清掃、換気、寝具の洗濯、感染症が発生した際の保健所への通報など
  • 騒音防止等、必要事項の宿泊者への説明
    騒音の防止、ごみの処理、火災の防止、その他周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項を説明
  • 苦情の処理
    周辺住民からの苦情や問い合わせへの適切かつ迅速な対応
  • 「住宅宿泊事業」の届出済の標識の掲示
    門扉、玄関(建物の正面の入り口)など一般の人にも見やすい場所に標識を掲示

    以上の条件を満たした上で、宿泊サービスを提供できるのは年間180日まで、という上限があり、自治体によってはこの期間が独自に条例で定められています。

実際に民泊はどの程度利用されているのでしょうか?データから紐解いてみたいと思います 。

民泊新法施行から一年足らずで100万人が利用!海外からの熱視線を浴びる民泊

観光庁が今年の5月に公開した「住宅宿泊事業の宿泊実績について」という資料によると、民泊新法の施行から、今年3月末までに、宿泊者数の累計は989,235人と一年足らずで100万人を目前としており、隔月ごとに見ても、成長率110%と急成長しつつある業界であることがわかります。

出典:住宅宿泊事業の宿泊実績について

一方、宿泊者の国籍を見てみると、日本に住所を持つ宿泊者は全体のうち約27%、残り3/4近くの宿泊者は外国からのインバウンド旅行客であることがわかります。

出典:住宅宿泊事業の宿泊実績について

宿泊客の国籍を細かく見ていくと、近隣の中国や韓国をはじめ、東アジアの国々の観光客が全体の50%以上を占めており、アメリカやオーストラリアといった英語圏の観光客も目立ちます。

データで見ると圧倒的に外国からの注目度が高い民泊ですが、日本国内でも様々な問題解決の一手として重要視されています。

民泊が解決する日本の様々な問題

民泊で改善する可能性があるのが、“空き家問題”です。近年、少子高齢化に伴い、住む人や管理する人がいなくなってしまった空き家が急増しています。

実際、住宅総数に占める空き家の割合も年々増加しており、昨年10月時点では、13.6%となる846万戸、実に、八軒に一軒は空き家という状態です。

空き家が放置されると、犯罪に利用されたり、倒壊などの危険性もあるため、地域の問題として広く取り上げられることも多いです。

そうした中で、民泊として、空き家を活用できれば、空き家の維持だけでなく、地域の活性化や治安の維持にもつながると期待されているのです。

また、日本国内で年々増えるインバウンド需要の増加に伴い、この数年で、外国人観光客の宿泊施設の不足が大きな課題としてあげられるようになりました。

東京オリンピックをはじめとした、イレギュラーなイベントの開催に伴い、宿泊施設の需要が一時的にぐっと高まると、宿泊難民などが生まれる可能性があり、様々な事件、事故を誘発する可能性があります。

そこで、使っていない住居を宿泊施設として活用できれば、そうしたイレギュラーな対応もこなすことができると考えられています。

まとめ

今回は、新たな宿泊施設のあり方として日本国内だけでなく外国からも注目が集まる民泊を取り巻く現状についてご紹介いたしました。

民泊について、まとめると以下になります。

  • 住宅を貸し出すためには設備条件と居住条件を満たす必要がある
  • 以上を満たした上で民泊事業者は都道府県知事に届出を出さなくてはならない
  • 民泊を運営する上で、事業者は快適性、安全性を担保するための義務を負う
  • 民泊運営は年間最大180日
  • 民泊利用客の3/4は外国からのインバウンド観光客
  • 民泊は、日本全国で問題になっている空き家の増加や東京オリンピックなど一時的なイベントによる宿泊施設の需要増加に対応する鍵となりうる

エアビーアンドビーをはじめ、インターネットで仲介となるサービスも急増しつつあり、一定の要件を満たせば誰でも運営ができりところが強みの民泊事業。成長率も高いため、今後新たな副業の一つとしても期待されています。

その一方で、この新たな宿泊形態に対応すべく、法改正なども早いスピードで行われているため、きちんと情報収拾することが、運営のカギとなりそうです。

またビジネスとしてだけでなく、社会問題を解決するきっかけにもなりうるということもあり、今後とも注目していきたいですね。

【参考引用サイト】
・増加するインバウンドと民泊市場の拡大~不動産事業者による民泊活用事例民泊新法 - 政府広報オンライン住宅宿泊事業の宿泊実績について統計・データ|日本政府観光局(JNTO)民泊制度ポータルサイトminpaku空き家率13.6% 過去最高、2018年10月時点 :日本経済新聞

(大藤ヨシヲ)

 
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