北海道胆振東部地震や台風19号が日本列島に甚大な被害をもたらした令和元年。被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。ニュースで災害の光景を見た誰もが、自身や家族がいつか被害に見舞われるのではないかと不安を覚えたのではないでしょうか?
しかし、自然災害は実際に増えているのか、被害が拡大しているのかについて正確に把握している方は多くないはずです。不安に対処するには正しい事実を把握し、効果的な対策を講じるしかありません。
本記事では死亡数や被害の程度などの正確な災害データとデータを用いた最新の災害対策をご紹介します。
結論からいうと、日本の自然災害の発生件数と被害はこの数十年増加傾向にあります。
まずは1971年から2018年までの「日本の自然災害発生件数と被害額」を5年刻みでまとめた中小企業庁作成のグラフをご覧ください。
※「2019年版「中小企業白書」┃中小企業庁」より引用
ご覧のように増減はありつつも徐々に被害額・発生件数ともにアベレージが上がっています。インフレを加味しても被害額が増加傾向にあることは間違いありません。特に目立つのは1991-1995と2011-2015の被害額が突出していること。いうまでもなく、1995年の阪神・淡路大震災と2011年の東日本大震災がその原因です。
そのすさまじさは被害者の数にも現れており、下図の通り昭和20年~平成30年(1945-2018)の災害のなかでも死者・行方不明者数が突出しています。
※「令和元年防災白書_附属資料7 自然災害における死者・行方不明者数┃内閣府 防災情報のページ」より引用
ただし、例年の死者・行方不明者数自体は、両震災の年を除けば昭和35(1960)年以降は微減あるいはほぼ横ばいといえます。この背景には「防災体制の整備・強化、国土保全の推進、気象予報の向上、災害情報の伝達手段の充実等を通じた災害対応能力の向上、災害に対する脆弱性の軽減」などがあると内閣府の資料には記載されています。
なお、自然災害の種類別に発生件数をみると最も多いのが台風で地震、洪水がそのあとに続きます。しかし被害額では地震が全体の82.8%を占めており、その恐ろしさを物語っています。
※「2019年版「中小企業白書」┃中小企業庁」より引用
まとめると、日本の自然災害の発生件数と被害額は増加傾向にあり、そのなかでも阪神・淡路大震災や東日本大震災に代表される地震の被害規模が大きい。ただし、通常の年の死亡者数・行方不明者数は災害対策の発達により1960年以降微減あるいは横ばいの状態にあるといえます。
さらに視野を広げ、世界の自然災害データについても見てみましょう。
※「平成25年版 防災白書|図表1-0-9 世界の自然災害発生頻度及び被害状況の推移(年平均値)┃内閣府 防災情報のページ」より引用
まずは発生件数と被害額ですが、やはりどちらも1970年代から2010年代にかけて増加傾向にあります。被災者数も増加しているものの、発生件数に比べれば増加幅は緩やかといえるでしょう。死者数については増減ありつつもほぼ横ばいといえそうです。日本の状況と似ていますね。
2019年初頭に話題を呼んだ『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(書評記事はコチラ)によると、全世界の自然災害で亡くなる人の数は過去100年で半分以下になったそうです。それは、国際的な災害支援の体制や災害対策が特に貧しい国々で普及したからとのこと。100年単位で俯瞰してみれば状況が改善されている点もあるということは押さえておきましょう。
自然災害は増加しているが、人類のそれに対抗する能力も伸びているという状況は世界でも日本でも変わらないようです。自然災害は地球の気候システムの変動や温室効果ガスによる地球温暖化などが複雑に絡み合って生じています。
そんななか我々にできることは「地球環境の保全により異常気象の抑制に務めること」「災害対策を十全に行うこと」の2種類に分けられるでしょう。
データを「21世紀の石油」と位置づけ、その活用を推進するデータのじかんですので、最後に、データを活用した最新の災害対策をご紹介します。
ビッグデータをAIが解析することで自然災害が起きた後の被害状況を予測する取り組みが現在進んでいます。
シリコンバレー発で今年日本に上陸したワン・コンサーンもそのひとつ。過去の災害データや住民の分布といった膨大なデータをもとに地震や洪水が起きた後の被害状況を予測。防災計画や避難経路の見直しなどに寄与します。
日本企業でも富士通が過去のデータから水位を予測し水害対策をサポートするAI技術がリリースされるなど、2019年、AIによる未然の災害対策は大きく進行しています。
データが予測してくれるのは災害の状況だけではありません。災害時の人々の動きもその対象となります。
Yahoo!ビッグデータレポートチームが手がけたのが「隠れ避難所問題」の解決。2016年4月の熊本地震において、災害時に自治体指定ではない場所へ避難してしまったため、救助の手が回らない人が続出しました。通信機器から発信される位置情報データを解析すれば、そんな隠れ避難所を発見できます。
それだけでなくSNSの発言内容などのデータも活用すれば、通行可能道路の割り出しや被害範囲や生活への影響の把握、安否確認なども可能になるでしょう。
災害救助に携わる現場の人々をデータは後押ししてくれます。
災害時の混乱のなかで作業の優先順位や担当地区、休憩時間の確保のスケジューリングを行うことは非常に負荷が大きい作業です。九州大学と富士通の研究機関はその作業をスーパーコンピューターに代行させる技術をリリースしました。
実際に救助作業に向かう際は、作業員の心拍数や心電波形が貴重なデータに。体調やストレスの程度を把握することで、災害救助のためついつい無理してしまいがちな作業員の安全確保・健康管理をリアルタイムで行うことが可能になるのです。
自然災害の現状についてさまざまなデータを参照の上、ご説明しました。
自然災害がここ数十年増加傾向にあるというのは残念ながら事実です。ただし、それに対抗する人類の力は着実に進歩しています。
今後もデータにより精度を高めるであろうハザードマップを定期的に確認し、防災グッズを確認して災害リスクに備えましょう。
(宮田文机)
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