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【出版不況の実情から最も読まれた本まで】日本の出版市場を今をデータで探る!

         

新型コロナウイルス感染症の流行で在宅で過ごす時間が増える中、以前よりも読書をするようになった、なんて人も少なくないのではないでしょうか?

実際コロナ禍に伴い「巣ごもり」需要で書籍の売上が拡大している、というニュースも度々報じられています。

しかし、その一方で1990年代後半から長らく「出版不況」が囁かれています。

出版業界の実態はどうなっているのでしょうか?今回は出版業界の今についてさまざまなデータから切り込んでいきます。

そもそも出版不況ってどんなもの?

出版不況が広く知られるようになったのは1990年代後半から。

実際、市場規模で見てみると1996年の2兆6563億円をピークに減少を続け14年連続前年割れとなった2018年には紙と電子を合わせた全体の市場規模が1兆5,400億円とおよそ20年で約1兆1,000億円(約42%)の大幅な減少に転じました。

このような莫大な数値の減少を見ると日本の出版業界に降りかかる不況の根深さを実感させられます。

電子書籍市場の拡大が出版業界の活路となるか?出版市場の推移を探る

ここで直近5年間の出版市場の動きを見ていきます。公益社団法人 全国出版協会が2020年1月に発表した出版市場についてのデータによると2019年の市場は紙と電子を合わせ1兆5,432億円にのぼったということです。

出典:全国出版協会「2019年の出版市場」※データポイントとして書かれている数字が総数

過去5年間の市場の推移を見ていくと、2019年は1兆5,400億円だった2018年より2.6%の増加となっていることがわかります。全体の市場として前年を上回ったのは2014年の電子出版統計開始以来、初めてのことだそう。

2019年の市場の内訳を見てみると、紙が前年比4.3%減の1兆2,360億円だったのに対し、電子が前年比23.9%増と急激に成長したことが市場の拡大の後押しをしていることが見て取れます。また市場全体における電子出版市場の占有率も19.9%と2割に迫る勢いで、その成長が伺えます。

さらに2020年7月に全国出版協会が公開した2020年上半期(1~6月期)の出版市場のデータによると2020年の上半期は、2019年の市場拡大同様、電子出版市場の拡大によって前年比2.6%増の成長が見られたということです。

2019年上半期

2020年上半期

占有率

(億円)

(億円)

前年同期比

書籍

3,626

3,517

97

44.3

雑誌

2,745

2,667

97.1

33.6

紙合計

6,371

6,183

97.1

77.8

電子

電子コミック

1,133

1,511

133.4

19

電子書籍

166

191

115.1

2.4

電子雑誌

73

60

82.2

0.8

電子合計

1,372

1,762

128.4

22.2

紙+電子

合計

7,743

7,945

102.6

100

出典:全国出版協会「2019年の出版市場」

内訳を見ると特に電子コミックの市場拡大が顕著で前年比33.4%増の1,511億円となっています。一方で、電子雑誌はサブスクリプションサービスなどの拡大で販売部数は前年比17.8%減となっています。

好調が続く電子出版市場が長年停滞してきた出版市場に風穴をあけることができるのか、期待が高まりますね。

2019年の売れ筋から最も売れた本まで

ここで2019年最も売れた本は2018年9月に亡くなった俳優の樹木希林さんの遺した言葉から編まれた『一切なりゆき 樹木希林のことば』で、ミリオンセラーを達成したそう。樹木希林さんの関連書籍は、女性を中心に幅広い世代の読者を魅了し、第3位にも『樹木希林 120の遺言』がランクインしました。

また、大ブレイクした『鬼滅の刃』(集英社)を筆頭に映像化作品が好調で、前年を上回ったということです。

本の平均価格ってどのくらい?どんな分野の書籍がよく発行されているの?

最後に、どんな書籍が刊行されているのか、また本の平均価格がどのくらいなのか、を見ていきましょう。

総務省統計局が発表している「書籍新刊点数と平均価格」によると2018年の書籍新刊点数は71,661点となり、その内訳は以下のようになりました。

最もよく刊行された部門は「社会科学」で15,220点、ついで「文学」の13,048点、「芸術・生活」の11,856点となっています。

出典:総務省統計局「書籍新刊点数と平均価格」

さらに分野別の書籍新刊点数の2018年までの過去4年の推移は以下のグラフのようになっています。

出典:総務省統計局「書籍新刊点数と平均価格」

 

部門

2015年

2016年

2017年

2018年

総記

828

763

858

767

哲学

4,199

4,176

3,932

3,955

歴史・地理

3,953

3,685

3,404

3,530

社会科学

16,745

16,078

15,422

15,220

自然科学

6,044

5,639

5,757

5,325

工学・工業

4,327

4,391

4,176

3,906

産業

2,565

2,625

2,652

2,492

芸術・生活

12,939

13,299

12,676

11,856

語学

1,615

1,604

1,628

1,535

文学

13,478

13,270

13,327

13,048

児童書

4,305

4,319

4,350

4,721

学習参考書

5,447

5,190

4,875

5,306

総数

76,445

75,039

73,057

71,661

出典:総務省統計局「書籍新刊点数と平均価格」

グラフを見てみると、書籍の刊行点数は年々減少していることが見てとれ、2018年は前年比1.9%減となっています。

また分野別で見ると「社会科学」や「哲学」などの部門では減少傾向が見られるものの、「産業」、「児童書」は三年連続で増加傾向を見せています。

続いて書籍の平均価格について推移を見ていきましょう。4年間の推移は以下のグラフのようになっています。

出典:総務省統計局「書籍新刊点数と平均価格」

2015年から2016年にかけて約17円と急増し、その後も増加を続けています。

また部門別に見てもほとんどの部門で価格は増加傾向にあります。特に「語学」の部門は4年で200円近く値段が上昇しているのがわかります。

部門

2015年

2016年

2017年

2018年

総記

1,567

1,705

1,666

1,443

哲学

1,224

1,225

1,208

1,235

歴史・地理

1,422

1,385

1,512

1,485

社会科学

1,566

1,541

1,559

1,582

自然科学

1,994

2,027

1,984

2,110

工学・工業

1,956

1,939

2,097

2,058

産業

1,532

1,547

1,631

1,615

芸術・生活

1,111

1,111

1,114

1,073

語学

1,405

1,418

1,414

1,644

文学

808

826

834

851

児童書

1,100

1,150

1,155

1,142

学習参考書

1,398

1,492

1,419

1,325

総平均

1,145

1,162

1,167

1,168

おわりに

長年にわたる出版不況の影響は根深く、なかなか抜け出せない出版不況の中ですが、電子書籍市場の拡大に伴い少しずつ改善の兆しが見えつつあります。

また、コロナ禍に伴い読書への関心が高まっており、業界にとっては成長のチャンスが訪れているのかもしれませんね。

【参考引用サイト】
・ 外出自粛で「巣ごもり読書」拡大: 日本経済新聞 
・ 2019年の出版市場を発表|公益社団法人 全国出版協会 
・ 2020年上半期(1~6月期)の出版市場を発表|公益社団法人 全国出版協会 
・ 統計局ホームページ/日本の統計 2020-第26章 文化 
・ 出版不況 - Wikipedia 
・ 2019年 年間ベストセラー総合第1位は『一切なりゆき 樹木希林のことば』 

(大藤ヨシヲ)

 
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