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まずは「ぷらっとこだま」の概要を確認してみよう。ぷらっとこだまは1990年から発売が開始されている、各駅停車タイプの新幹線「こだま」に乗車できるJR東海ツアーズの歴史ある旅行商品だ。あくまで旅行商品なのできっぷとは異なり、券売機やEX予約から購入することはできないことは覚えておくべきだろう。まずはぷらっとこだまと比較されやすい他の交通機関について、価格・所用時間を比較してみよう。
■東京⇒大阪までの価格・所要時間比較
価格 | 所要時間 | |
ぷらっとこだま(通常期) | 11,210円 | 4時間 |
のぞみ(通常期) | 14,720円 | 2時間30分 |
LCC(格安航空会社) +リムジンバス | 7,690円 | 5時間弱 |
深夜バス | 4000円以下(最安値) | 8時間超 |
時期によって価格や所用時間は前後するが、「ぷらっとこだま」のメリットは安さにある。普通車指定席(通常期)の価格は東京~新大阪間が11,210円、東京~名古屋間は8,810円だ。「のぞみ」の普通車指定席(通常期)と比較すると、東京~新大阪間は3,510円、東京~名古屋間は2,490円もオトクになる。
一方、所要時間は「のぞみ」(東京~新大阪)が約2時間30分に対し、「こだま」は4時間だ。「こだま」は各駅停車タイプなのに加え、「のぞみ」「ひかり」の通過待ちもあり、どうしても所要時間が延びてしまう。その分、運賃が安いというわけだ。
それでは他の交通機関と比較すると、どうだろうか。
例えば、LCC(格安航空会社)のピーチだと、関西空港から成田空港の最安値(4月17日搭乗分)は4,590円だ。関西空港から成田空港までは約1時間30分である。大阪梅田から関西空港まではリムジンバスで約50分・1800円。成田空港から東京駅まで同じくリムジンバスで約70分・1300円(現在は1500円)だ。搭乗手続き等を含めると、5時間弱・7,690円だ。
確かに「ぷらっとこだま」よりも3,520円安いが、乗換えや搭乗手続きの煩わしさに加え、機内に持ち込める荷物は2個合計7キロ以内となる。最も安い料金クラスだと預け手荷物は有料だ。所要時間は「こだま」よりも30分以上余分にかかる。
深夜高速バスだと、最安値は4000円以下だ。ただし、所要時間は8時間を超え、最安値の深夜バスの快適性は新幹線よりも劣ることは言うまでもない。
最後に「ぷらっとこだま」はドリンク引換券が付いてくる。これは東海道新幹線各駅にあるJR東海ツアーズの指定販売店にてドリンク1つと交換できるものだ。
このように見ると、「ぷらっとこだま」は最安値ではないが、所要時間や乗り継ぎの手間など、トータル的に考慮すると、コストパフォーマンスが高い旅行商品と言える。だからこそ、30年以上にわたって、旅行者から愛用されてきたというわけだ。
一方、「ぷらっとこだま」のデメリットはややこしい発券作業にあった。筆者もこれまでぷらっとこだまを利用する機会は少なからずあったが、その評価は間違いではなく、だからこそぷらっとこだまは、長らく「玄人向け」の旅行商品だったと感じている。2月乗車分までの流れは以下の通りである。ただし、ここでは窓口での受け取りは割愛する。
①申込開始は乗車日1ヶ月前(前月の同じ日)の11時
②専用サイトより予約する。ただし申込可能時間は5時30分~23時30分まで
③券売機でJRチケット、ドリンクチケットを受け取る
④JRチケットを自動改札機に挿入し、乗車する。
⑤ドリンク引換券を店舗に提示し、ドリンクを受け取る。
問題は③の券売機でJRチケット、ドリンク引換券を受け取るという作業だ。この「券売機」が新幹線乗車駅の専用改札口付近にあるJR東海の指定席券売機に限られていたのだ。つまり、在来線にある券売機やJR東日本・西日本の券売機では受け取れなかった。
東京駅丸の内口や京都駅烏丸口でも受け取れないことから、いちいち新幹線専用改札口まで出向く必要があったのだ。また、指定席券売機も台数が限られ、オンシーズンには列ができることも珍しくなかった。そのため、指定席券売機を探す旅行者の姿も珍しくなく、新大阪駅や東京駅から乗車する際は十分に時間に余裕を持つ必要があったのだ。
長らく大きな障壁となっていたチケットの受け取りが「チケットレス化」したのだから、界隈での期待が高まるのは当然といえるだろう。チケットレス化した3月乗車分からの流れは以下の通りだ。
①EXサービス会員になる。スマートEXは年会費無料。
②専用サイトより予約する。申込可能時間は24時間。
③当日はEX予約と連携した交通系ICカードで入場。
④ドリンク引換券もチケットレス。店舗にてQR決済し、ドリンクを受け取る。
この他、2月乗車分からの違いとして、座席指定がシートマップからできるようになった。以前も座席指定はできたが、「通路側・窓側」といった区分のみで、細かな座席指定はできなかった。また、予約後の座席変更も可能になった。
東海道新幹線ではEX予約によるチケットレス化が進む一方、「ぷらっとこだま」は紙チケットのみで、時代に取り残されていた感があった。今回、EX予約と連携させることで、ようやく「ぷらっとこだま」もEX予約と発券面で同水準となった。
筆者は3月の金曜日に、「ぷらっとこだま」を使って、新大阪駅から東京駅まで「こだま720号」に乗車した。予約は2月乗車分と変わらずスムーズに行え、EX予約ページに「ぷらっとこだま」の予約情報が表示された。
新大阪駅・新幹線乗換改札から入場。EX予約と連携済みの交通系ICカードを内蔵したスマホを自動改札機にタッチすればいいだけで、本当に便利だ。在来線から新幹線専用改札に行く手間が省け、大幅な時間短縮を実感した。
一方、ドリンク引換券の表示は苦戦した。ドリンク引換券はEX予約ページでは表示されず、JR東海ツアーズのマイページから表示する。店頭では引換券をタップし、店にあるQRコードをスキャンした上でドリンクと引き換えとなる。ドリンク引き換えも交通系ICカードのタッチだけで行えればベストだ。
「こだま720号」は新大阪駅を10時54分に発車するが、10時30分頃にはすでに入線していた。金曜日の昼間と言うこともあり、「のぞみ」が入線するホームには長蛇の列が見られる。一方、「こだま720号」の車内は空いている。
「ぷらっとこだま」はあくまでも旅行商品のため、座席枠が決まっている。つまり、「ぷらっとこだま」利用者だけで、「こだま」の全指定席が埋まることはない。
10時54分に新大阪駅を発車。筆者が乗車した12号車は3割~4割ほどが埋まる。新大阪~名古屋間において、「のぞみ」が停車しない駅は米原駅と岐阜羽島駅だ。大阪市内から米原駅へは在来線の新快速利用が考えられる。筆者は、筆者の周りに着席した乗客も「ぷらっとこだま」利用者で首都圏まで乗り通すのでは、と予想した。
12時02分に名古屋駅に停車。ここで6分停車し、後続の「のぞみ」に道を譲る。名古屋駅で一気に乗客が増え、8割ほどが埋まった。
「こだま720号」は名古屋駅から「のぞみ」が通過する各駅へ先着する列車なのだ。そのため、愛知県から静岡県へ移動する利用者が多いことは容易に想像がつく。事実、名古屋駅から筆者の隣に座った乗客は静岡県内で降りた。
名古屋駅から東京駅までは2時間40分を要し、多くの駅で「ひかり」「のぞみ」の通過待ちを行う。各駅に停車する分、「のぞみ」よりもシャッターチャンスは多いかもしれない。新富士駅手前では車内から富士山の撮影が楽しめた。低速だったおかげで、撮影できた写真である。このあたりは「ぷらっとこだま」ならではの楽しみだ。
熱海駅・小田原駅では降車と同時に首都圏を目指す客も乗る。結局、新横浜駅まで12号車の乗車率は7割~8割をキープした。
14時30分頃に新横浜駅に到着し、一気に空いた。新大阪駅から乗車した客も新横浜駅で降車した。おそらく、「ぷらっとこだま」利用者だろう。
新大阪駅から3時間54分後の14時48分に東京駅に到着した。筆者はピーチや高速バスで関西~関東間の移動は経験済みだが、やはり新幹線は楽だ。「ぷらっとこだま」はトータル的にコストパフォーマンスに優れた旅行商品であることを改めて再認識した。
(取材・TEXT・撮影:新田浩之 編集:藤冨啓之)
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