まいどどうも、みなさん、こんにちは。
わたくし世界が誇るハイスペックウサギであり、かのメソポ田宮商事の日本支社長、ウサギ社長であります。今週も祝日ではないごく当たり前の平日の水曜日が意気揚々とやって参りましたので、この連載もこうして続いていくわけであります。さて、今週はギタリスト界隈と言いますか、ベーシストも含まれるので弦楽器界隈と言いますか、いっそのこと音楽家界隈と言いますか、インスタグラム界隈と言いますか、YouTube界隈と言いますか、各種界隈で物議を醸しているGiacomo Turra(ジャコモ・トゥーラ)というイタリア出身のギタリスト・インフルエンサーについてお話してみようかと思っております。
このジャコモさんは、SNSで合計100万人規模のフォロワーを持つファンクギタリストで、主にショート動画で小気味良いカッティングやメロディアスでありながらエッジーでグルービーなソロフレーズなどを披露していました。インスタ映えするカラフルな環境と装い、そして若くてイケメンで筋肉質でイタリアンという恵まれた素材を良質な編集技術でさらに盛る、というどこを切っても今風な感じで、それは人気が出るのも頷ける、と認めざるを得ない存在でありました。わたくしも各種SNSで流れてくるショート動画を拝聴しては、こんなに楽器が上手く弾けるのであれば楽しいに違いない、そして互いを認め合えるハイカラなアウトフィットを身に纏ったパリピミュージシャン仲間に恵まれている彼はさぞかし豊かな人生を送っているであろう、と軽く嫉妬を覚えつつではありますが、レスペクトを持っていいね!をしたりしなかったりしておりました。
それがつい先月、つまり、2025年4月、YouTuberのDanny Sapkoが「有名Instagramギタリストが楽曲を盗用している」という告発動画を公開したことをきっかけに世界規模の大炎上が引き起こされてしまっているわけです。この動画では、ジャコモさんが他のギタリスト(Jack Gardiner、Alex Hutchings、Travis Dykes、Thiago Gomesなど)のソロやアレンジをクレジットなしで自身のSNSに投稿していることが指摘されていました。それだけならまだしも、タブ譜やバッキングトラックを自身のサイトで販売する、というあからさまなお金儲けまでしていた、というまさに人のふんどしで相撲を取る的ななかなかやりすぎな事実が明るみに出てしまったのです。
そして、通常であればアレンジをまるパクりする場合でもちょっとくらいテンポを変えたり、ソロにちょっとだけでも違う味付けをしたり、キーを変えたりくらいはするものですが、そのような小細工をすることなく彼の場合は正々堂々と大手を振ってそのまんまでまるパクりしていたわけです。特にJack Gardinerさんのソロ(Luther Vandross「Never Too Much」)はほぼそのままコピーしていたことが特に問題視され、Gardiner本人がジャコモさんに抗議を申し立てました。ジャコモさんはGardinerさんに対し、「今後は必ずクレジットを入れる」と約束したものの、その後も同様の行為が繰り返されていたのだそうです。つまり確信犯だったわけです。
しかも自分よりもフォロワーが少ないギタリストの作品を拝借することでバレにくいような体制を作っていたということも非難の対象となっています。そのうえ、カスタムギターのプロモーション契約に関するトラブルも発覚。プロモーションに協力することを条件に提供されたカスタムギターをあまり時間を空けることなく売却してしまい、売却益の寄付もしなかったことがバレてしまったそうです。一連の炎上騒ぎに焦ったジャコモさんはYouTubeに謝罪動画を投稿したのですが、、、反省の色があまり見られなかったこの動画は火に油を注ぐことになり、またさらに多くの人の反感を買ってしまう結果になってしまいました。この謝罪動画は今では非公開になっており、インスタのアカウントなどもコメントができないようになっています。公式サイトも削除され、ギター関連ブランドのアーティストページやコラボ動画もあっという間に削除されてしまいました。まさに天国から地獄へと一直線に急降下した形となりました。いやはや怖いですね。。。
パクり問題、というのは昔から音楽業界にはある問題であり、一体どのくらい似ていればパクりとなるのか、というのは極めて線引きが曖昧だったりします。パクりではないか、という疑惑が浮上した際の解決策として、クレジットに表記して共作とする、という方法が取られることがあったりもします。たとえば、エド・シーランの大ヒット曲「Shape of You」は、TLCの「No Scrubs」と非常に似ているという指摘を受け、「No Scrubs」の作詞作曲者であるカンディ・ブラス、タメカ・コトル、ケヴィン・ブリッグスの3名が「Shape of You」のクレジットに追加され、著作権印税も分配されることになっています。
一方で、12音階で作成する「メロディの有限性」を訴えるプログラマーであり弁護士、そしてミュージシャンでもあるダミアン・リール(Damien Riehl)さんはミュージシャン仲間のノア・ルービン(Noah Rubin)さんとともにアルゴリズムを使って687億以上のメロディーを自動生成し、そのすべてを「いかなる権利も保有しない」CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)ライセンスで公開しました。これは将来の音楽家が「自分の曲が偶然既存曲と似ていた」という理由で盗作訴訟を受けるリスクを減らそうとする動きなのだそうです。
今回のジャコモさんのケースは、まるパクりであり、100万人単位のフォロワーがいるインフルエンサーがそんなことをやったら絶対バレるのは時間の問題、ということは簡単に想定できそうなものですが、もしかしたらジャコモさんは「音楽をパクることに対して罪悪感を持つべき」という発想がないのかも知れません。音楽という本来自由に楽しむべきものが著作権という形でがんじがらめになってしまいつつある、というのも確実なわけですし、かと言って、他人のギターソロの譜面をオンラインで販売して利益を得る、というのは看過されるべきではないことですので、なかなか難しい問題ではあります。ジャコモさんの場合は、ギターやベースの演奏能力、そしてそれをいかにうまく編集して人に見せるか、という部分では確実にずば抜けた才能を持った人であり、いかも若くてイケメンで筋肉質でイタリアンなわけですので、なんならギターなんか弾かなくたってさぞかしおモテになるはずです。全てを手にしたように見えた彼ですが、神様は彼に作曲の才能までは与えてくれなかった、というところが今回のケースのアイロニーであり、根本的原因なのかも知れません。
世界中の人々に名前と顔を知られている彼が今後どんな活動をしていくのか、というところに注目が集まるところですが、才能がある人であることは間違いないと思うので、パクるのではなくコラボして曲を提供してもらう、許可を申請してから楽曲を使用し、収益を分配する、などすれば関係者全員ハッピーな落とし所も見つかりそうな気もしますけど、どうなんでしょうか。AIによる著作権侵害が最近はよく話題に上りますが、今回は生身の人間がSNSという人目のある場所で白昼堂々とまるパクりをした結果まんまとバレた、という話でありました。堂々とやりすぎて逆になかなかバレなかったのかも知れませんね。。。
そんなわけで、今回は日本ではあまり大きく取り上げれていないジャコモ・トゥーラさんの炎上の件を取り上げてみました。クリエイティブとは、あるいは著作権とは、ということを改めて考えるよい機会にはなったのではないでしょうか?それではまた来週お会いしましょう。ちょびっとラビットのまとめ読みはこちらからどうぞ!それでは、アデュー、エブリワン!
(ウサギ社長)
・“One of the most unbelievable things I’ve ever seen in music”: Popular social media guitarist Giacomo Turra accused of stealing other musicians’ songs for content | Guitar World
・I caught this famous Instagram musician STEALING songs by Danny Sapko | YouTube
・Who is Giacomo Turra and what are the allegations against him? Plagiarism scandal explained in wake of mounting backlash | sportskeeda
・エド・シーラン、“Shape Of You”のクレジットにTLCの“No Scrubs”の作曲者を追加 | NME Japan
・アルゴリズムで作られた680億曲以上のメロディは「パブリックドメイン」として成立するのか? | Gigazine
メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!