全国2万3,650社を対象にし1万91社から有効回答を得た帝国データバンクの調査によると、2019年7月に正社員が不足していると回答した企業は全体の半数近い48.5%。人材採用は多くの企業が悩みを抱える経営課題となっています。
過渡期にある日本の採用環境。成果を上げるには、最新手法を常に把握しておくことが重要です。この記事で取り上げる採用手法は「スクラム採用」。採用チャネルの広がった現代に有用なスクラム採用のメリットやコツを押さえておきましょう!
スクラム採用は“全社員が当事者として携わる採用活動”を意味します。
経営層や採用部門だけでなく営業、企画、システムなど現場の各部門が“自分たちに必要な仲間を獲得する”という意識で採用に取り組むのがポイント。現場社員は求職者への接触から選考、教育までコミットすることになります。
スクラムといえば、ラグビーで試合再開時に組まれる隊列およびその際のプレーのこと。2019年ラグビーワールドカップの試合で目にした方も多いでしょう。その一致団結のイメージが、全社的なチームプレイを重視する「スクラム採用」に投影されています。
ちなみにソフトウェア開発でもチームワークを重視したアジャイル開発の実践をスクラム開発といい、近年注目を集めています。
スクラム採用にはいったいどんなメリットがあるのかを見ていきましょう。
採用の当事者が経営層や採用部門から全社に広がるということは、その分採用のチャネル(集客の入口)が広がるということです。採用市場はかつてのようにナビサイト一強ではなくなり、自サイト・SNS・副業・リファラルなどチャネルは多角化しています。
多くのチャネルに対応するにはマンパワーが必要なため、全社員に協力してもらうことは理にかなった有効な方法です。また、転職活動を行っていない転職の潜在層にまでリーチできるのは、社員それぞれの築き上げた人脈が利用できるスクラム採用ならではです。
現代の採用で最も重視されるのは、企業と求職者のマッチングといっても過言ではありません。現場に必要なポジションや人材要件を最も把握できるのは、その現場で働く人々です。また職種・ポジションが近いほど、どんな会社で働きたいかのイメージもつかみやすくなりますし、それに合わせた職場改善もしやすいです。そのため、最もマッチングする人材に最も効果的なアプローチを行える期待値が高まります。
スクラム採用は社員のエンゲージメント(企業への愛着や所属感)を高め、意欲向上や離職防止に有効に機能します。企業は人の集まりですから、人材採用は将来の会社の形を決めることに直結します。その活動に参加することで「自社の一員として役割を果たせている」と感じられるのです。
また、人材要件の定義や選考にも現場社員が関わることで「欲しい人材を採用チームが採ってくれない」という不満が生じません。
スクラム採用のメリットは把握できましたか? ここからはスクラム採用を実践する際の具体的なポイントについてご紹介します。
スクラム採用の成功は現場の社員をいかに巻き込めるかにかかっています。しかし単に協力を要請しただけでは「余計な仕事が増えるだけ」と敬遠されてしまいます。そのためスクラム採用でどんなメリットが得られるかを具体的に伝える取り組みは欠かせません。取り組み例としては、以下に列挙するようなものが挙げられます。
インセンティブとしては、紹介の過程で必要になる経費の提供や人事評価やボーナスへの反映が挙げられます。ただし本義がおろそかにならない程度にコントロールすることも重要です。「ちょっとやってみようかな」というきっかけになるくらいの金額やパーセンテージに抑えましょう。
スクラム採用を実践する組織において採用部門の役割は「採用」というプロジェクトのマネージャーです。各部門ごとに採用の責任者を設け、協力して動ける体制をつくりましょう。ほかにスクラム採用における採用部門の役割には以下のようなものがあります。
現場ごとの採用責任者の管理には、採用業務のスケジュール管理や情報共有に加え、普段の業務と採用業務の折衝なども含まれます。いわば組織づくりの最高責任者として採用を指揮するのがスクラム採用における採用部門なのです。
スクラム採用を始める前に、採用情報の管理手法を見直してください。履歴書などの採用情報はPDFで取得して、Excelで整理するといった形でまとめている企業も少なくなりませんが、それでは全社的に行われる採用情報は管理しきれません。
候補者の情報に加え部門ごとの採用状況や施策、困っていることなどを体系的に管理するデータベースを構築することをおすすめします。全社員が参加するからこそ採用部門には状況をつぶさに把握する必要があります。
また情報を格納する場所・タイミングについてもルールを定め全社員に周知してください。この際、なるべくシンプルなルールを定めるほうが結果として守られやすくなります。
「採用は経営陣や採用部門だけの仕事」という時代は過去のものになりました。全社的なタスクとして採用に取り組み、その組織のマネジメント役として採用部門を位置づけましょう。
自社の未来は社員全員でつくるという意識が現代の採用を成功させるカギとなります!
(宮田文机)
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