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二条城でも稼働中!無線・無電源で稼働するIoTデバイス「スイッチストライクエアー」を生み出したシブタニ社を取材。

         

電池を交換する手間などを考えると、電池を搭載させることも現実的ではない。公共の場などの場合は特にそうだ。高速道路の場合など、30から40ほどのブースがあるため、電池を交換するタイミングなども考える必要がある。一斉に交換するのは無駄が多く、切れたものから交換する場合、電池交換の手間が日々の業務として発生する。このように、ニーズはあるにも関わらず、なかなかこの問題は解決できずにいた。

EnOceanとの出会い、そして無線化までの道のり

EnOceanスイッチ用発電モジュール

そんな時、「EnOcean」という非常に少ない電力で、最大100メートル(製品に組み込んだ状態では30メートル)ほど信号を発信できる無線モジュールをローム社が提供していることを知った。その瞬間に、この無線モジュールを活用すれば、トイレの鍵がロックされる動作で発電させ信号を飛ばせるかも知れない、この問題を解決するのはそれしかない、と閃いた。それが製品の開発経緯だ。EnOceanとの出会いが20169月だった。その後、すぐに会社を説得して開発に着手した。

開発段階で直面した問題

EnOcean送信モジュール

公共施設のトイレ、という要素が実は大きな挑戦だった。トイレの使い方は実に人それぞれだ。鍵をしっかり奥まで閉める人もいれば、先端のみをひっかける人もいる。先端のみをひっかけた場合でも信号が飛ぶ、という「確実性」の問題に金物メーカーとしてかなりこだわった。その結果、先端のみをひっかけた状態でも鍵がかかっていない場合は信号が飛ばず、ギリギリでも鍵がかかっていれば信号が飛ぶよう調整された。この調整こそがデータの正確性を司る部分であり、鍵の精度が問われるところでもあるのでメーカーとしてはどうしても譲れないところだった。鍵がかかっていない状態の場合、事故防止の意味も含めてドアは自然に開いてしまうため、利用者は必然的に鍵をかける必要にせまられる、という仕組みになっている。

信号を飛ばすための技術

電波信号をアンテナから確実に飛ばす、という部分でもかなりの苦労を強いられた。アンテナの配線方法によっては、電波が数メートルしか飛ばない場合もあった。この辺りのノウハウはローム社と協力し、トライアンドエラーを繰り返して知見を蓄え、現在の最終形にたどり着いた。設計はシブタニ社のみで行い、鍵に内蔵されるアンテナの設置方法に関してはローム社の助言を求めた。

シブタニ社で筐体を作成し、電波が飛ばない、などの情報をローム社と共有。ローム社がそれを分析し、原因を解明する、という作業を繰り返した。デザイン性や操作性を犠牲にしたくないトイレの鍵の第一人者であるシブタニ社と、電波をうまく飛ばすためのアンテナ的視点から提案をするローム社の試行錯誤が繰り返された。両者のプライドが歩み寄りながら共同で開発を進めていった結果が今回の製品だ。

妥協できないシブタニ品質

金物の品質に関しては、耐久回数20万回というシブタニ社独自の基準がある。これはおよそ10年程度の使用期間を想定している。人は公共施設のトイレの鍵に対して足をかけたり、蹴ったりなど攻撃的な態度をとることが多い。だが、鍵が壊れてしまうと、手間とコストをかけて修繕作業を行う必要が生じる。鍵が壊れることは管理者にとっても、利用者にとってもデメリットでしかないため、金物メーカーは強靭な鍵を作ることが求められてきた。強靭な鍵を作ることを追求し続けた結果、今では鍵が壊れることはほとんどない。

シブタニ社とIoTの歴史

シブタニ社は以前からTebra(テブラ)という住宅用の鍵を販売している。これはポケットに鍵を入れているだけで鍵の開閉ができる、という文字通り手ぶらで鍵が開けられるという商品だ。宅配ボックスの開閉やマンションの入り口の解錠もこれで可能となっている。ハンズフリーのロックシステムはマンションなど建物単位での導入が前提条件となるため、既存のビルへの導入は難しいが、今後新築されるマンションの多くには導入されていくだろう。また、鍵の認証履歴をネットワーク経由で通知したりすることも可能なため、子供が帰宅した際にメールなどで通知を受け取る、などの防犯対策も可能となっている。この商品自体はIoTを意識したものではなかったが、この商品がシブタニ社とIoTとの最初の接点と言えるだろう。

 
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