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IoTやAIなどの新しい技術が実用化されつつある今の時代は、「第4次産業革命」と呼ばれています。このような状況で、ものづくりの現場はどのように変わっていかなければならないのか、模索している企業も多いことでしょう。

しかし、「第4次産業革命」というものがこれまでの産業革命と何が違うのか、そしてこれからの産業がどのように変わっていくのか。これらのことを理解しなくては、現時点で何をすべきかが見えてきません。

そこで東京商工会議所では、会員にその示唆を提供するべく、様々なイベント・セミナーに有識者の声を聞く機会を設けています。今回はウイングアーク1st株式会社のConnected Industries エヴァンジェリストの大川真史氏を迎え、2018年2月27日に「スマートものづくり実践セミナー」を開催しました。第4次産業革命と呼ばれるこの時代に、どのようにしてものづくりを行っていくのか。そのヒントが散りばめられたこのセミナーについて2回にわたりレポートいたします。
(レポートその2はこちら

第4次産業革命はデジタル技術の革新

まずは「第4次産業革命」についての話からスタート。

18世紀の第1次産業革命が蒸気機関という動力の獲得、19世紀の第2次産業革命が電力・モーターという動力革新、20世紀の第3次産業革命がコンピュータという自動化というものでした。

これまでの産業革命は、新しい技術が開発され、工業化社会が推進されてきたという歴史です。しかし20世紀の終わりから現在にかけての第4次産業革命では、IoTやAIといったデジタル技術の革新が起こっています。

これにより、世界の社会構造に変化が起こっています。それはこれまでの工業化社会からサービス化社会に移行しているということです。

「イノベーションの源泉が技術ではなく、人々が何を価値として感じるか、何の体験に喜びを感じるか、新しい価値そのものを作り出すことが主導的に行われている世の中になっているのです」(大川氏)

ちょうど、これから始まる第4次革命のちょうど入口に我々は立っているということなのです。

自動車関連産業を例に挙げると、これまでは「いかに速く簡単に移動するか」という価値を提供してきた市場だったものが、「自動運転」という新しい技術が生まれたことにより、移動している間に別な体験ができるという、別な価値が生まれているということが重要。自動運転がもたらすものは、「運転しなくてよい」という便利さではなく、運転をしないことで生まれる「移動中の時間」という価値なのです。

また、AIがさらに進化すれば道路の使用率を最適化することで、交通システムがスマート化され、目的地へ何時何分に到着するかという予測ができるようになる可能性が出てきます。そうなってくると、クルマという「モノ」に対する価値はほとんど感じられなくなり、消費者は「移動すること」自体に価値を感じるようになります。

消費者は、価値を感じるものにお金や時間を費やすもの。これまでは「クルマ」というものに価値を感じていた人たちが、移動そのものに価値を感じるようになるため、自動車メーカーのあり方というものも変わってくると大川氏は語ります。

「デジタル(IT)の民主化」がもたらす世界

大川氏は、IoTやAIといった技術を使い、現在あるアナログ的なもの(書類など)をデジタル化してインターネット上にアップロードし、それを活用するということ自体は昔からある概念のため、目新しいものではないと言います。では、なぜ現在注目されているのでしょうか。

「今までエンジニアや専門家でなくてはできなかった複雑なことが、誰でもできるようになったということが大きなインパクトなのです」(大川氏)

大川氏はこれを「デジタル(IT)の民主化」と呼ぶこともあるそうです。これまで100万円や1000万円という莫大な費用で稼働させていた大規模システムが、1万円や10万円といった規模で同じくらいのことができるようになっているというのです。

それならば、ものづくりの現場でも使っていかなければもったいない。それが今回のセミナーの大きなテーマなのです。

ものづくり現場のデジタル化プロセス

実際に、ものづくりの現場におけるデジタル化はどのようなプロセスで進められているのでしょうか。大きく分けて4つのプロセスになっています。

①データを上げる
現在アナログで保管されているデータをデジタル化して、クラウド上にアップロードしていくこと。

②データをためる
過去のデータをデジタル化してどんどんクラウド上にためていくこと。

③データを分析する
クラウド上に蓄積したデータを分析すること。

④データを活用する
蓄積、分析したいデータを使って事業に活用すること。

現時点でも①〜③までは、IoTやAIを使って行われていることですが、④の「データの活用」については、まだ未成熟であるとのこと。そして、そのときに重要な変化が「スマホネイティブの爆発的増加」です。

これまでは、パソコンを使ってデータの管理などを行うことを念頭に、さまざまなサービスが提供されてきました。しかし時代が進むにつれて、スマホの普及率が急激に増加。パソコンを使ったことがない若い世代が急増していることにより、パソコン主体の仕組みではスムーズに業務ができないのではないかと、大川氏は考えているとのこと。

今後20年くらいでスマホネイティブの世代がマジョリティになる日が来ると予想されます。その時代を見据えて、新しい価値を生み出していく必要があるのです。

ユーザーへ最適な価値を提供するプラットフォーマーが必要

第3次産業革命までは、企業やメーカーといった提供者が、モノやサービスといったものを提供し、ユーザーがそれを使って自分で価値を作ってきました。しかし、モノや情報がデジタルに置き換わる第4次産業革命では、企業やメーカーが提供するモノや情報を、最適な状態でユーザーに価値を提供するサービス基盤を提供する人たち、いわゆるプラットフォーマーが生まれ、ユーザーはその人たちからモノやサービスを受け取るようになります。

そう考えると、これまでモノや情報を提供してきた企業やメーカーは、ユーザーではなくプラットフォーマーへ適切なものを届ける必要性が生じてきます。

その一例として大川氏が挙げたのが、航空機産業です。現在機体メーカーは大型機はボーイングとエアバス、中小型機ではボンバルディアやエンブラエルといった企業が中心となっており、ほぼ寡占状態となっています。

しかし、エンジンパーツを提供しているGEが、従来から遠隔操作や故障予想のためにエンジンに取り付けていたセンサーのデータとAIを使い、一番燃費のよい航路を計算できる機能を提供するようになりました。

これにより、航空会社が飛行機の発注の際に、どこの機体メーカーかということではなく、GEのエンジンを積んでいるかということを重要視するようになりました。特に、少しでも低燃費にしたいLCCなどでは、GE製のエンジンを搭載した機体が人気になっているとのこと。

これまでは、機体メーカーがそれぞれのパーツを使って航空機を作り、ユーザーへ価値を提供していたのですが、今回の例ではエンジンメーカーという一関連企業がプラットフォーマーとなることで、ユーザーへ最適な価値を提供することができたということ。これが第4次産業革命における新しいものづくりの顕著な事例なのです。

では、欧米の巨大企業ではない、我々日本企業、そして数多くの中小企業はどこから取り組めはよいのか?それはレポートその2で詳細をレポートします。(レポートその2はこちら

取材・TEXT・PHOTO:三浦一紀

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