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昨年末に発覚した厚生労働省の不正問題で、その原因の一つとして取り沙汰されたのが、統計職員の少なさです。
実は、日本の労働人口に対する公務員の数はOECD(経済協力開発機構)に加盟する諸国の中でも最低の水準なのです。
そしてこの“公務員”が少ないという問題は、日本の政府のあり方に深く関連しています。
そこで今回は、公務員の数を起点に「大きな政府」「小さな政府」というキーワード、そして消費増税について考えてみたいと思います。
前述の通り、日本の労働人口に対する公務員の数はOECD諸国の中でも最も低い値となっています。ではどのくらい低いのか、欧米諸国や韓国と比べてみてみましょう。
OECDが公開している報告書「Government at a Glance 2017(図表で見る政府2017)」によると、直近10年間の加盟諸国の労働人口に対する一般政府雇用者の割合は以下のようになります。
最新となる2015年のデータでは、加盟国平均が18.06%なのに対し、日本(5.94%)や韓国(7.61%)の公務員比率は10%を切っています。一方で、ノルウェーやスウェーデンなどの北欧諸国の、公務員比率が25〜30%前後と比較的高い値を維持しています。
つまり北欧諸国などでは、労働している人のおよそ3人から4人に1人が公務員であるのに対し、日本では、働いている人のうち公務員は、およそ16人に1人である、という計算になるのです。
他国と比較すると、日本の公務員は格段に少ないことがわかったところで、その原因や問題点について考えてみましょう。
「小さな政府」、「大きな政府」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないのでしょうか?
「小さな政府」 とは、経済活動に極力政府が加担しないという政府のあり方です。
例えば、「国民からの税収入を抑える/政府から国民への支出を抑える」、「国が運営する企業が少ない」、「年金や医療費などの社会福祉も民間企業に任せる」と言うような要素があげられます。
「小さな政府」を採用する国は、競争社会になるので、経済の発展や人材の質を上げることにつながります。また、自分がどこで何にお金をかけるのか(例えば年金をどこの金融機関で積み立てるのかなど)、を自由に選択できることもメリットの一つとして挙げられています。
一方で、経済格差が生まれやすく、医療費や学費などの自己負担も多いため、社会的な弱者が切り捨てられやすいというところがデメリットになります。
「大きな政府」は、政府が経済活動に介入するような政府のあり方です。「小さな政府」とは逆に、「国民からの税収入を増やす/政府から国民への支出を増やす」、「国営企業や公共事業が多い」、「医療費や学費を税金で賄えるため個人の負担が少なくなる」などが特徴となります。
「大きな政府」では、国民が平等に社会福祉を受けられるため、個人間の格差が小さくなります。
一方で、たくさん働いても税金として徴収されてしまうため、経済発展のモチベーションが低くなることがデメリットとして挙げられます。
「小さな政府」の代表例が政府支出を最低限に抑える方針を取っている自由の国アメリカです。そして、日本もまた、「小さな政府」と言えるでしょう。
まず、公務員の割合が少ない、ということは、社会福祉を十分に行き渡らせるための労働力が欠如している、という状態です。また、公務員をたくさん雇用すること自体が国による雇用を創出するという「社会福祉」の一環だとも言えます。
また、政府のあり方を判断するのに重要な指標であるGDP に対する政府支出(国から国民に支払われる社会保障費や公的事業への投資など)の割合を見てみましょう。
日本の値は、OECD諸国の平均値42.07%を下回る39.19%となっており、資金面でみても比較「小さな政府」であることがわかります。
一方で北欧諸国やフランスなどは、一般政府で雇用される労働者も多く、GDPに対する政府支出の割合も大きいため「大きな政府」と言えるでしょう。
しかし、GDP に対する政府支出の割合と、労働人口に対する一般政府雇用者の割合をグラフにして、各国の分布を見てみると、政府支出に対して見ても、日本の政府雇用者の割合が非常に小さいことがわかります。
現に、アメリカやオーストラリアは日本よりも政府支出の割合は低いにも関わらず、政府に雇用されている人の割合は日本の倍以上になっています。
つまり、日本の公務員不足は、単に「小さな政府」という理由だけでは説明できないと言えるのではないでしょうか。
グラフにしてみると日本において人々が支払っている税金に対し、公務員が非常に少ないということが改めてわかりました。
では、人件費として使われていないぶんの私たちの税金は何に使われているのでしょうか?
国税庁が発表した平成30年度の国の一般会計歳出額の内訳を見てみると、大きい割合を占めているのが、年金や社会保険料などの社会保障関係で33.7%、ついで国債費23.8%となっています。
広く知られているように日本は借金大国です。GDPに対する負債率は2017年時点223.23%で数字にすると、 1,200兆円にも上り、OECD諸国と比べてみても最も負債の割合が大きい国になっています(OECD諸国の平均は80.93%)。
さらに、例年、歳入以上に歳出しているため、年々、負債が積み上がっています。その上、少子高齢化が進む中、社会保障費のうち約70%を年金や医療費が占めていることもあり、歳出を減らす、のはなかなか難しそうに見えます。
こうした現状から、2019年10月の消費税増税が決定したのです。現に増税分は財務省のHPでも「社会保障の財源」として充てると説明されています。
日本は公務員が非常に少ない「小さな政府」でありながら、政府支出の1/3以上を社会保障費に使う福祉国家としての一面も持っている不思議な国です。
また、1200兆円の借金を抱えながらも、約670兆円の資産を持つ資産大国でもあります。
つまり、資産をうまく運用すれば、「小さな政府」として課税することなく借金の返済や経済成長の可能性や逆に増税によって福祉などの手を厚くする「大きな政府」になることも十分あるということです。
様々な可能性を秘めた日本の未来を決めるのは、国民一人一人の投票や活動です。
あなたは将来、どんな国で暮らすことを望みますか?
公務員がたくさんいて手厚い福祉が受けられる北欧型の「大きな政府」?経済発展が著しいアメリカ型の「小さな政府」?はたまた全然違う形の政府?
自分で思い悩んだときはこの記事で実践したようにデータを見ることで情報を整理することもオススメです。
今年の7月には参議院選も控えていますので、ぜひぜひ考えてみて、投票の参考にしてみてくださいね。
(大藤ヨシヲ)
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