「今までエンジニアや専門家でなくてはできなかった複雑なことが、誰でもできるようになったということが大きなインパクトなのです」(大川氏)
大川氏はこれを「デジタル(IT)の民主化」と呼ぶこともあるそうです。これまで100万円や1000万円という莫大な費用で稼働させていた大規模システムが、1万円や10万円といった規模で同じくらいのことができるようになっているというのです。
それならば、ものづくりの現場でも使っていかなければもったいない。それが今回のセミナーの大きなテーマなのです。
実際に、ものづくりの現場におけるデジタル化はどのようなプロセスで進められているのでしょうか。大きく分けて4つのプロセスになっています。
①データを上げる
現在アナログで保管されているデータをデジタル化して、クラウド上にアップロードしていくこと。
②データをためる
過去のデータをデジタル化してどんどんクラウド上にためていくこと。
③データを分析する
クラウド上に蓄積したデータを分析すること。
④データを活用する
蓄積、分析したいデータを使って事業に活用すること。
現時点でも①〜③までは、IoTやAIを使って行われていることですが、④の「データの活用」については、まだ未成熟であるとのこと。そして、そのときに重要な変化が「スマホネイティブの爆発的増加」です。
これまでは、パソコンを使ってデータの管理などを行うことを念頭に、さまざまなサービスが提供されてきました。しかし時代が進むにつれて、スマホの普及率が急激に増加。パソコンを使ったことがない若い世代が急増していることにより、パソコン主体の仕組みではスムーズに業務ができないのではないかと、大川氏は考えているとのこと。
今後20年くらいでスマホネイティブの世代がマジョリティになる日が来ると予想されます。その時代を見据えて、新しい価値を生み出していく必要があるのです。
第3次産業革命までは、企業やメーカーといった提供者が、モノやサービスといったものを提供し、ユーザーがそれを使って自分で価値を作ってきました。しかし、モノや情報がデジタルに置き換わる第4次産業革命では、企業やメーカーが提供するモノや情報を、最適な状態でユーザーに価値を提供するサービス基盤を提供する人たち、いわゆるプラットフォーマーが生まれ、ユーザーはその人たちからモノやサービスを受け取るようになります。
そう考えると、これまでモノや情報を提供してきた企業やメーカーは、ユーザーではなくプラットフォーマーへ適切なものを届ける必要性が生じてきます。
その一例として大川氏が挙げたのが、航空機産業です。現在機体メーカーは大型機はボーイングとエアバス、中小型機ではボンバルディアやエンブラエルといった企業が中心となっており、ほぼ寡占状態となっています。
しかし、エンジンパーツを提供しているGEが、従来から遠隔操作や故障予想のためにエンジンに取り付けていたセンサーのデータとAIを使い、一番燃費のよい航路を計算できる機能を提供するようになりました。
これにより、航空会社が飛行機の発注の際に、どこの機体メーカーかということではなく、GEのエンジンを積んでいるかということを重要視するようになりました。特に、少しでも低燃費にしたいLCCなどでは、GE製のエンジンを搭載した機体が人気になっているとのこと。
これまでは、機体メーカーがそれぞれのパーツを使って航空機を作り、ユーザーへ価値を提供していたのですが、今回の例ではエンジンメーカーという一関連企業がプラットフォーマーとなることで、ユーザーへ最適な価値を提供することができたということ。これが第4次産業革命における新しいものづくりの顕著な事例なのです。
では、欧米の巨大企業ではない、我々日本企業、そして数多くの中小企業はどこから取り組めはよいのか?それはレポートその2で詳細をレポートします。(レポートその2はこちら)
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