藤本:私の一番の衝撃は、実はGmailでした。それ以前はキャリアデザインセンターという会社で転職情報誌を作っていたんですけど、会社のメールというのは会社に行かないと見られないものだったんですよね。営業だったのでいつも外にいて、お客さんからメールが来ているかどう気になるんだけど帰れない、という状況でした。それがGmailだとどこでも見られて、どこでも仕事ができるわけです。今でこそ普通のことですけど、当時は衝撃でしたね。
吉田:確かに、オンラインで仕事をする環境が当時からありましたね。僕も「WFH」というのに衝撃を受けました。Work from Homeのことなんですけど、新卒で入社して数年目の子でも「今日はWFHです」というメールを送ってきて会社に来ない。Google Japanの就業規則にはそんな制度は何も書かれていなかったんですけど、アメリカのやり方がそのまま踏襲されていて、エンジニアとかワーキングマザーなんかは特に、当たり前に家で仕事をしていました。
藤本:朝からひどい雨だったりすると、誰も来ないですよね。
吉田:そうそう。
森下さんがEverforthを設立したのは2010年ですよね。Googleのやり方なんかも意識されていて、最初からリモートワークも当たり前の働き方をされてきたということですが。
森下:Googleを立ち上げたラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンが言っていたような世界観が好き、というのもありますし、私が一番参考にしたいと考えていたのは、『奇跡の経営』という本に描かれているブラジルのセムコという会社です。組織階層とか役職とかルールというものが何もないんですよ。日本でそういう会社を聞いたことがありませんでしたが、アメリカでは優秀な人たちを集めて自由にやるというGoogleのような会社が出てきていて、これからはそうなっていくんだろうと思っていました。
吉田:人事の仕事も、2000年代にようやく変わり始めたように思います。それまでは、社員をいかに規律正しく労働させるかという「管理」に意識を集中させてきたわけです。いわゆるホワイトカラーの、時間で縛られない人たちの生産性をどう上げるか……みたいなところをやっと考え始めたのがあの時期だった。法律も裁量労働制が限定的にOKになったりしました。とは言え、悪い会社が酷使しないように労働者を守るという、日本の法律の大前提は未だに変わらないですけどね。
藤本:労働基準法が労働者を守るために制定されたものである、というのはすごく理解できるのですが、今は「時間で管理する」という前提が色々なところで矛盾を引き起こしていますよね。法律を守るために本来は必要ない余計な仕事が発生しているような気がします。
その点、Googleですごく良かったと思うのは成果を自分で決める「OKR」(注)という制度です。これも最初は衝撃を受けたんです。定性的な成果と定量的な成果の両方を定義できない仕事はダメだと言われて。私は営業でしたが、数字を取ってくるだけではダメで、その数字をどうやって達成するのかという手法はもちろん、その数字の意味についても自分で考えて定義するんです。この方法なら、数値で成果を測りづらい職種でも成果を定義できて、「時間の管理ってなんで必要なんだっけ?」という疑問が出てきます。
(編集部注:「OKR」はObjectives and Key Resultsの略で、組織と個人がそれぞれのO(Objective:目標)と、そのOを測定するためのいくつかのKR(Key Results:主な結果)を設定し、その実現状況を確認しながら努力するしくみ)
吉田:森下さんのところもOKRを使っていますか?
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