吉田:森下さんは、経営者の側から見てどうですか?
森下:難しいですね。我々のところには社員と同じようなことを業務委託でやっている人もいます。契約形態が違うだけですけど、なんとなく正社員の方がコアメンバーに近いという感覚を持ってしまいがちです。最近はかなり区別がなくなってきましたが。
あと、業務の一部を副業としてやってくれている人は20人くらいいますね。そういう人たちとは、ノウハウをお互いに共有できるので、すごくいいと思います。
吉田:自分の経験では、社員を性悪説で捉えるか性善説で捉えるかで、人事の仕事は全然変わるんですよ。性善説でいくと、柵をできるだけ広げて自由にやってもらうことに腐心できるけど、わけがわからないメンバーがいると、問題を防ぐために柵が狭く高くなっていく。それは会社の歴史とか文化とか、組織的な民度によっても変わるんだと思いますが。
森下:こういう会社をやっていると、いつも「Everforthは性善説ですよね」と言われるんですけど、どちらでもないんですよ。ほとんどの人は善悪どちらにもなり得るので、カルチャーとか環境が大事なんです。情報の透明性とかコミュニケーションの仕方とか、そういうことに気をつけて、メンバーが自然と善の方へ向かって行く環境をつくることが大事なんだという考え方でやっています。「民度」というのは正にそういうことですよね。
藤本:副業ができるようになると、採用面接はなくなっていくんじゃないかと思うんです。副業でもプロボノでもいいんですけど、インターンみたいな感じでパラレルで働きながら、会社との相性を見ていくような形がいいんじゃないかと。というのも、最近は「組織のカルチャーが大事だ」とすごく言われるようになってきているけれど、そういうものは入ってみないとわからないじゃないですか。
森下:Everforthはすでにそうなってます。副業で2〜3ヶ月トライアルしてからお互い「どう?」というのが多いですね。
吉田:なるほどね。ほかに、この5年から10年の間に、日本の働き方にどんな変化が起きると思いますか? 最後はこの話題で締めましょう。
藤本:正直わからないですが、at Will Workを始めた時にイメージしていたのよりも早く変化している気はするんです。ちょうど今、会社も個人も「自分たちは何をするべきなんだっけ」ということを問い直しているところなので、その結果ある程度淘汰されていくのかな、とは思います。データを見るのが得意な会社はそうするし、感覚でやって行きます、というところもあるだろうし……。
吉田:今はあたふたしている会社も、それなりに自分たちのスペースを見つけて、その組織なりの最適解を持っている、というイメージですかね。そうなると、世の中はかなり良くなりますね。
藤本:はい。ならざるを得ないでしょうね。
森下:私はこの1〜2年で、我々のような働き方に憧れる人たちが増えていることを明確に実感しているんです。なので、制度や会社がどうなるかということよりも先に、労働者側の圧力で世の中が変わらざるを得ないんだろうと思います。
藤本:そうそう。人の方から変わってきていますね。
森下:その背景には、資本主義の行き詰まりがあるんでしょうね。モノの価値が減って精神の価値が増え、お金を稼ぐより気持ちよく働きたいよね、という人が明らかに増えているんです。そういう流れと相まって法整備も進んでいくんでしょうけど、大企業の人たちが我々がやっているようなことを本気でできるかというと、難しいでしょうね。
藤本:そうですね。だから個人としては、大企業にいながらEverforthで働く、みたいなことが増えていきそうです。
吉田:なるほどね。僕も、パートタイム人事みたいな、そういうビジネスモデルを考えようかな。人事ができる人たちをプールしてスタートアップに紹介するような。
藤本:それ、めちゃくちゃ需要がありますよ。
森下:いいですね。人のネットワークで人材を紹介し合うようなビジネス、いくらでもできると思いますよ。
吉田:ちょっと考えてみます(笑)。おふたりとも、今日はありがとうございました。
(テキスト:やつづかえり PHOTO:Inoue Syuhei)
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