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「道の駅」こそが幸福な街の「ベースキャンプ」といえる理由

         

前回の記事では、「地域経済分析システム(REASAS=リーサス)」というツールを使って、福岡県久山町の「稼ぐ力」と「地域経済の回し方」に注目しました。
地域内でお金をうまく回すためには、「稼ぐ力」だけでは不十分です。そのお金が外部にどんどん逃げてしまったり、大部分が貯蓄に回されたりすると、フローが生まれません。幸福な街、強くしなやかな街づくりにはストックとフローのバランスが欠かせないのです。

では、どうすれば地域の資源を地域で消費し、地域経済循環率を100%に近づけられるのでしょうか?さまざまな施策が考えられますが、今回は「道の駅」に注目します。そして、道の駅こそが幸福な街づくりに欠かせない「ベースキャンプ」といえる理由に迫ります。


第1回|毎度話題の「街の幸福度ランキング」‐‐本当に「住みやすい街」に住めばみんな幸せになれるのか?
第2回|住む場所が人の幸せを形作る‐‐幸福になるための街の選び方
第3回|「幸福な街」のつくり方ー街のストックとフローをデザインする

知っているようで意外と知らない「道の駅」の定義と歴史


国土交通省によると「道の駅」は「地域の創意工夫により道路利用者に快適な休憩と多様で質の高いサービスを提供する施設」のことです。
平成3年(1991年)に山口県、岐阜県、栃木県で「道の駅」の実験が行われたのがはじまりで、平成5年(1993年)に全国103箇所が登録されました。その後、年々その数は増え続け、平成25年(2013年)には全国1,000箇所を超え、令和6年2月現在で1,213駅が登録されています。

今でこそ、地域の特産品や新鮮な野菜、海産物などを販売するイメージが強いですが、制度発足時は「通過する道路利用者のサービス提供の場」として全国各地に広がりました。そのため、当初は24時間無料で利用できる駐車場やトイレを備えた「休憩機能」や、道路情報・緊急医療情報を提供する「情報発信機能」が重視されていました。しかし、「道の駅」の数が全国1,000箇所を超えた2013年から「道の駅自体が目的地」になる「第2ステージ」に移行しました。「道の駅」は単なる休憩施設を超えた、活力ある地域づくりを共に行うための「地域連携機能」を強めてきたのです。

第3ステージへと進む「道の駅」

さて、「道の駅」を幸福な街の「ベースキャンプ」と呼ぶのは、「道の駅」のあり方がさらに次のフェーズへと進んできているからです。

発足当初から1993年までの「通過する道路利用者のサービス提供の場」を第1ステージとすると、「道の駅自体が目的地」になった第2ステージを経て、2020年からは「地方創生・観光を加速する拠点」へと変容してきています。加えて、「道の駅」同士や民間企業、大学や農協、福祉団体とのネットワークを形成することで、元気に稼ぐ地域経営の拠点として力を高め、新たな魅力を持つ地域づくりに貢献しようとしています。
国土交通省によると、「道の駅」第3ステージが目指す形は以下の3つを含みます。

「道の駅」第3ステージが目指す姿

具体的な取組み

「道の駅」を世界ブランドへ

・海外プロモーションの強化

・外国人観光案内所の認定取得

・キャッシュレス決済の導入

・観光周遊ルートの設定

・観光MaaS

新「防災道の駅」が全国の安心拠点に

・「防災道の駅」認定制度の導入と重点支援

・地域防災力の強化のためのBCP策定や防災訓練等の実施

あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに

・子育て応援施設の併設

・自動運転サービスのターミナル

・大学等との連携によるインターンシップや実習


なぜ「道の駅」が幸福を生み出すのか?

以上で述べてきた「道の駅」の沿革や現状を踏まえ、なぜ「道の駅」が幸福な街づくりのベースキャンプになり得るのかを分析してみましょう。

まず、「道の駅」には、地域の農水産品や地域で生産された加工食品が集まります。域外の大手資本のスーパーが全国各地から仕入れた農水産品や大量生産された商品を扱うのと比べ、「道の駅」で買い物したお客が支払ったお金は地元の生産者に還元されるという利点があります。生産者は稼いだお金をさらに原材料費や人件費に回すことで、お金は域外に出ていかず、地域内でグルグルと循環することになります。

また、各地の「道の駅」では、地域の文化や歴史、特産などについて情報発信を行うため、来訪者は地元の魅力について知るきっかけになり、知名度はさらに上がります。結果的にリピーターが増え、地域の売上はさらに増えていく仕組みです。さらに「道の駅」が第3ステージに進んだことで、子育て支援施設が充実し、MaaSが整備されれば若者から高齢者まで、さまざまな世代が集い合える場になります。「道の駅」が大学などの教育機関と連携すれば、学生たちが「道の駅」をしたり、商品開発をしたりすることも可能になるでしょう。

加えて、地域住民によって「道の駅」の「防災拠点」としての役割がこれまで以上に認識されれば、安心感をもたらし、災害にも耐えうる「レジリエンス」の強化にもつながるはずです。こうした観点からみると、「道の駅」がストックとフローのバランスを保つのに寄与し、地域の「幸福」を生み出す「ベースキャンプ」といえる理由を理解できるのではないかと思います。

こうした観点からみると、「道の駅」がストックとフローのバランスを保つのに寄与し、地域の「幸福」を生み出す「ベースキャンプ」といえる理由を理解できるのではないかと思います。

道の駅で幸福作りに成功した「道の駅むなかた」

最後に、幸福づくりの「ベースキャンプ」として機能してきた「道の駅」として、福岡県宗像市の「道の駅むなかた」の例を取り上げましょう。

「道の駅むなかた」は2008年に民間主導で地域産業の活性化を目的として設立されて以来、売上は右肩上がり、九州地区では11年連続売上ナンバーワンです。特に宗像市は海沿いに位置しているため、豊富な種類の海産物を高い鮮度で購入できるのが人気の理由の一つです。特に宗像市鐘崎地区は天然トラフグの水揚げ量が多いことで知られており、伝統ある漁業を営んできた場所なのです。

また、地元の食材にこだわった食堂や、地元のお米の米粉を使用した商品を販売しているパン屋もあり、売上がきちんと地元の生産者に還元される仕組みになっています。さらに2000平米を超える広場を利用してイベントを開催することもできますし、キッズルームや授乳室、車中泊を楽しめるエリアも併設しているため、さまざまな世代の人たちが集い合う拠点としても機能していることが分かります。


まとめ

地域の生産者が自分たちの自慢の野菜や海産物を持ち寄り、地元の歴史や文化と結びつけることでブランディングし、さらなるリピーターを生み、売上がきちんと生産者に還元されるーこうした理想的な地域経済循環を可視化した場所が「道の駅」といえるのかもしれません。「道の駅」に足を運ぶとき、地元の住民たちは自分たちにとっての「幸福」をイメージすることができるのです。

 

著者・図版:河合良成
2008年より中国に渡航、10年にわたり大学などで教鞭を取り、中国文化や市況への造詣が深い。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。現在は福岡在住、主に翻訳者、ライターとして活動中。

(TEXT:河合良成 編集:藤冨啓之)

 

参照元

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