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スマートフォンやパソコン、冷蔵庫に洗濯機、私たちは日常的にさまざまな電子機器を活用して生活しています。そしてそれらを動かすのに欠かせない電力の大部分は石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に頼っています。

しかし、枯渇性資源であるこれらの燃料は、どこかで必ず限界が来ます。そして、その限界の日に、人々が今のような生活を維持できるという保証はありません。

このように、わたしたちの生活は限りある地球上のさまざまな「自然」を消費し、資源の枯渇危機や地球温暖化などの環境変動を引き起こしています。

経済の成長が叫ばれ、消費が加速する中で、「見ないふり」をしてきたさまざまな環境問題と向き合わなくてはいけない時期はかならず来ます。というより、もうその時期はすでにやってきているのではないでしょうか

人類が地球で生活を営み続けるために、どのような方向転換が必要なのか、その道筋の一つを提示したのが斎藤幸平の『人新世の「資本論」』です。

『人新世の「資本論」』ってどんな本?

Amazonの売れてるビジネス書ランキング第1位にも輝いた本書。さらさらと読める文体とは裏腹に、刺激的な内容で話題を呼んでいます。

著者の斎藤幸平は、哲学・経済思想史を専門とする研究者で、現在は大阪市立大学で教鞭をとっています。

タイトルの人新世とはオゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞した大気化学の研究者、パウル・ヨーゼフ・クルッツェン(Paul Jozef Crutzen)が提唱したもので、人間によるさまざまな活動の痕跡が記録された新たな地質時代のことを指します。

地質時代は、地球上で起こった大規模な環境変動、そしてそれに伴う大量絶滅と新たな生物の登場などで区分されます。

これまで人類が地層から読み取った大規模な環境変動は数百、数千万年をかけて起こったものですが、いま、それと同規模の変動が僅か数千年の人間の活動によって引き起こされようとしているのです。

そして、急速な気候の変化は居住区域の縮小や農作物の生育不良、生物の大量絶滅に繋がります。

過去のデータを見てみると1880~2012年の間に世界平均気温は0.85度上昇し、結果として海面は約19cm上昇しています。海抜の低い島国では「環境難民」として他国へ移民する人々も増えています。さらに、平均気温は2100年までに最大で4.5度上昇する、という予測もあります。

「地質学的な」気候危機に直面しながらも資本主義社会の中で経済成長や過剰消費をやめられない。そんな私たちに向け、マルクス主義哲学、マルクス経済学を専攻する著者は、マルクスの晩期の思想を探る中で行き着いた、新しい豊かな社会の形を提案します。

経済成長と環境保全は両立できない?SDGsの欺瞞

資本は、人間も自然も徹底的に利用する。人々を容赦なく長時間働かせ、自然の力や資源を世界中で収奪しつくすのだ。
斎藤幸平の『人新世の「資本論」』

日本をはじめ多くの先進国(グローバル・ノース)は資本主義社会です。そして、グローバル・ノースに属する多くの人は物質的に豊かな暮らしをしています。

資本主義社会では資本を巡って様々な競争が起こります。その結果、技術は発展し、より良いものを求めて様々な商品が開発されています。

そして人々がより良いものをより安価で大量に消費すれば、当然自然もまた消費されます。そしてその自然の中には、グローバル・サウスと呼ばれ、安価な労働力として搾取される人々も含まれています。

現在、グローバル・ノースのさまざまな国々ではSDGsが掲げられ、日本でもプラスチックの買い物袋の有料化や紙ストローの採用など、SDGsにのっとったさまざまな取り組みが行われています。しかし、どれだけプラスチック買い物袋の利用量を減らしても、人々が過剰消費をし続けている限りは自然や安価な労働力として搾取される人々は消費され続けることになります。

一方で、資本主義社会では消費、つまり資本のやりとりが停滞すると、経済が回らなくなってしまいます。経済が回らなくなれば多くの人々の生活が立ち行かなくなってしまいます。そうした中で自分自身の生活よりも環境保全をという決断を個人がすることは非常に難しいと考えられます。

つまり、経済成長を続ける社会においては、構造的に環境を搾取し続けなければならないのだ、と本書は指摘します。

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