コマツは、建設生産プロセスのあらゆるモノのデータをICTで有機的に接続し、測量から検査までの現場の全てを「見える化」することで、安全でかつ生産性の高い「未来の現場」を実現させるためのソリューションをスマートコンストラクションと名付けています。
コマツは、最善の使い方やノウハウ、自動化システムや現場管理システムを組み込んだICT建設機械を開発し、支援ソフトウェアや情報共有システムを活用し、ドローンを使った3次元測量データのを使うことにより、高精度の施工支援を実現しています。
自動化されたICT建設機械は省力化と安全性を追及し、数センチ単位での機器制御が可能な熟練したオペレーターの操作技術と同レベルの操作を実現させます。設計データや測量データを利用した高精度な施工支援システムを導入することで、現場を見える化し、人手と経験に頼っていた現場を、未来の建設現場へと変革しているのです。これは、まさにデータの力が建設現場を進化させる好例だといえるでしょう。
世界中の大規模鉱山で鉱物資源を採掘する巨大建設機械もコマツが手掛ける製品です。採掘現場は、直径1km。採掘に使われる直径4mもの巨大タイヤを装着したトラックは、一度に400トン近くもの土砂を運び、最大限の効率で24時間稼動し続ける特殊な建設機械。これは言わずもがな、人にとっても機械にとっても過酷な環境です。しかし、ここでも、データの活用によって事業を変革させる取り組みが行われているのです。
コマツの取り組みの最大の目標は顧客側にとってのTCO(Total Cost of Ownership)の削減でした。機械の運用データを収集する中で、ランニングコストが高い、という事実が明らかになりました。顧客にとっての最大のコストは機械の購入費用ではなく、実は、機械の故障に伴って必要となる修理費などのコスト、そして運転ミス等による事故によるコストだったのです。
稼動情報やメンテナンス情報を蓄積し、分析することで、高額な消耗品の最適なメンテナンスサイクル、機械トラブルによる稼動ロスをなくす方法などが提案できるようになりました。これらは苛酷な環境で過酷な使われ方をする機械を出来るだけコストをかけずに使い続けるためには必要なノウハウであり、コマツ側がこれらの情報を提供することで、顧客側のコスト削減に繋がっていったのです。
さらに顧客のデータ収集と解析を行うことで浮き彫りになってきたのは、人為的なミスによる事故やトラブルの数です。
鉱山採掘の現場は大抵の場合僻地にあるため、運行要員の確保が大きなコスト要因となっています。24時間稼動する現場では、宿舎や生活環境の整備が必須となるため、人員が増えるとそれに伴ってコストもアップします。
そこで、コマツは人員の削減を可能にしてくれる無人ダンプトラック運航システム(Autonomous Haulage System)を考案しました。熟練運転者の最適な技術を学習させたICT技術でトラックを無人走行させることで、人為的な事故をなくすことができました。同時に、運転要員を採掘現場に常駐させる必要がなくなり、安全面でもコスト面でも効率的な事業が可能になったのです。
コマツが、創り出したのは優れた建設・産業機械だけではありません。顧客ニーズを深く堀下げ、徹底的にデータを収集・分析することで、コマツは新たな事業領域と価値基準を創出し、顧客にとって必要不可欠な存在へとさらなる成長を遂げたのです。
しかし、コマツの挑戦はここでは終わらず、さらに進化を続けています。無人ダンプトラック運航システムの運用データをもとに、さらに進化した運転席の無い巨大車両の開発も進められています。そして新たなサービスから生まれるデータがまたさらに未来の事業領域を開拓していくのです。
データの持つ力は、製造業の持つ潜在的な能力と高い親和性を持っています。ICT技術を組み合わせることで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質である「ICTが世の中に浸透することで、人々の生活をより良い方向に変化させる」事業活動を実現することができるのではないでしょうか。
(大屋敏文)
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